「ブラック企業は企業名を公表」の時代に会社の評判を守るには?
風評被害対策コラム
「ブラック企業は企業名を公表」の時代に会社の評判を守るには?
◆文:ソルナ株式会社
みんな友達?
「子連れ狼」の原作者で知られる小池一夫氏がツイッターでとても興味深いことを呟いていらっしゃいました。
小池一夫 @koikekazuo
【スタバにて、高校生カップルの会話。「ねぇ、その写真ツイッターにアップするのヤバくない?」「全然大丈夫、俺のフォロワーみンな友達だし。」なるほど、こうやって炎上するのか…。】
実際、ネットではこうした流れで無防備な情報が本人の知らない間に拡散する素地が普段からできあがっていることになります。もしあなたの組織に所属する社員にこんな無自覚な社員がいるとすれば、コワイですよね。お気をつけください。
ブラック企業名公表
さて、2015年5月、厚生労働省が労働環境が劣悪な「ブラック企業」のうち、違法残業が複数の事業所で行われている大企業については、書類送検される前でも企業名を公表すると発表しました。
「ブラック企業」名の公表は早期の是正を促すのが目的で、厚労省では「違法に月100時間を超える残業が行われるなどして複数の支店や営業所が是正勧告を受け、その回数が一定以上に達した大企業について企業名を公表する」方針で、「公表の対象となるのは、資本金や従業員の数が一定以上の大企業」として運用を始めるとしています。この厚労省の方針は国民に広く「ブラック企業問題」を告知する意味が含まれているのでしょう。
ブラック企業の定義
そもそも「ブラック企業」というのは定義が明確でなく、それぞれが思い思いの感覚で使っているのが現状です。
Wikipediaによる「ブラック企業」の項では「ブラック企業またはブラック会社とは、広義としては暴力団などの反社会的団体との繋がりを持つなど違法行為を常態化させた会社を指し、狭義には新興産業において若者を大量に採用し、過重労働・違法労働によって使いつぶし、次々と離職に追い込む成長大企業を指す」とあります。
「ブラック企業」という言葉には、ここにある広義の意味や狭義の意味もあるし、個別の案件や総合的な判断としての「ブラック企業」など、定義が定かでなく、うっかりすると主観的な判断や気分で名指しされる余地があります。
今回の厚労省によるブラック企業名の公表方針は、定かでない「ブラック企業」という言葉に一定の定義づけを行うものになると考えることもできます。
当然ながら役所や政府が根拠のない主観的な判断で「ブラック企業」だと認定するわけにはいきません。企業の生存にかかわるからです。そこで厚労省は「ブラック企業」と判定する定義を今回提示しました。
厚労省が定義した「ブラック企業」は、狭義の意味での「ブラック企業」となります。狭義の意味での「ブラック企業」とは、すなわち労働基準関係法令違反を常態化させた会社と言い切ってもいいでしょう。
使い捨てが疑われる企業
厚労省が2013年12月に公表した「若者の使い捨てが疑われる企業等への重点監督の実施状況」という報告があります。この報告によれば、重点監督を実施した事業場のうち全体の82%にあたる事業場で何らかの労働基準関係法令違反があったと報告されています。要は、あなたの属する企業で、実際に重点監督を行えば、何らかの労働基準関係法令違反が発見される可能性が高いということです。
そうならないことを祈りつつ、指摘されている労働基準関係法令違反の主なものでは、「違法な時間外労働」「賃金不払残業」「過重労働による健康障害防止措置が不十分」「労働時間の把握方法が不適正」が多いようです。
より具体的な事例でいえば「社員の7割に及ぶ係長職以上の者を管理監督者として取り扱い、割増賃金を支払っていなかった事例」「営業成績等により、基本給を減額していた事例」「始業・終業時刻を全く把握していなかった事例」「定額で時間外手当を支給している事業場について、その金額が実際の時間外労働時間数に応じた金額より低額であり、不足額を追加支給してない事例」などが挙げられています。
これらはいずれも数値でハッキリと把握できるもので、企業の従業員に対する取り組みとして一番わかりやすく、かつ取り組みやすいものです。これは監督する役所にとっても数値等で明確に指摘できるという点で問題点を明らかにしやすいメリットがあります。ゆえに何らかの労働基準関係法令違反は、まさに狭義の意味での「ブラック企業」認定ということができるでしょう。
会社の評判を守る
ご存じのように労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について、労働時間を適正に把握、労働時間を適切に管理する責務を企業は有しています。先に挙げた労働基準関係法令違反の事例は、ある意味で実に単純なわかりやすい違反ですが、残念ながらこれらは企業において常態化しているものです。
つまり、今回の厚労省の措置は最低限の法令遵守ができていない企業を「ブラック企業」として企業名を公表するということになります。
しかし、これらの何らかの労働基準関係法令違反は、狭義の意味においての「ブラック企業」認定であって、現在新聞紙面やテレビ等で喧伝されている「ブラック企業」は、もっと大きな広義な意味で使用されていることに注意が必要です。そういう意味で、労基法違反等は企業の評判を守る対策としては初歩的なもの。ただし、自社の評判が損なわれていくときはこの初歩的な部分「法令違反」から崩れていくという認識が必要でしょう。
コンプライアンスの先
定義が定かではない「ブラック企業」という言葉は、私たちの社会に根づき始めました。今後、「ブラック企業」の定義は、時代とともにより広くなって、企業を拘束することになるでしょう。最初は単純な法令違反から厳しく取り締まっていくことで始まります。
企業にとって、もはやコンプライアンスは当たり前、遵守して当たり前のことで、私たちはその上で、さらにどうやって楽しく発展成長していくかというテーマで話し合ったり、企業の将来を考えていかなくてはならないようです。
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それらを踏まえると、今回厚労省が発表した「ブラック企業」の企業名の公表という措置は「基本的なこと」ではあるけれど、会社の評判の獲得や維持に向けて頑張っている企業には、少しだけですが追い風になると言えるのではないでしょうか。
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