リスティング広告を活用する際に知っておきたい「3つの要素」とは? – 冨田和成(株式会社ZUU)
◆文:冨田和成(株式会社ZUU 代表取締役社長兼CEO)
前回の連載では、WEBマーケティングをおこなう上では2つのROIに注目し、特徴に応じて使い分けることの重要性をお伝えしました。そして、短期的な効果を狙う際には「リスティング広告」、中・長期的な効果を狙う際には「コンテンツマーケティング」を具体的例としてあげました。
前編:WEBマーケティングは2つの「ROI」をみた使い分けを!
今回は、実際に「リスティング広告」をおこなう上で必要となる基礎的な要素をお伝えします。日本の広告費のうち、インターネット広告媒体費の半分近くを占めるリスティング広告。
これを効果的に活用するにはどうすればいいのでしょうか。まずはリスティング広告とは何か、というところから見ていきましょう。
■リスティング広告とはなにか?
リスティング広告は、検索結果のページに表示されるテキスト広告で、ユーザーのキーワード検索に応じて広告が表示されるシステムになっています。広告料はユーザーがその広告をクリックしたときにのみ発生するため、無駄な広告費を掛ける必要がありません。
リスティング広告のもう一つの強みは効果測定をおこないやすい点にあります。広告料=リスティング広告経由の訪問者数を示すため、それに対してコンバージョン率がいくらという計算がしやすいからです。この結果をもとにキーワードの改善や、クリック単価(1クリックあたりの料金)の見直しなど、PDCAサイクルに載せやすいのも大きなアドバンテージといえます。
では次に、このリスティング広告の効果的な活用方法について見ていきましょう。
■リスティング広告の目標設定の方法
リスティング広告を出稿する目的は、通販サイトであれば商品の購入、不動産サイトであれば資料請求といった「最終的な成果(コンバージョン)」の増加です。これは常に数値化できるものでなければなりません。
また、数値化できるからと言って、広告表示や訪問者数をコンバージョンに設定してしまうと、コンバージョンが向上しているが利益が上がらないという状況になり、正確な効果測定が不可能になるため、注意が必要です。
目標設定を行うと、PDCAサイクルが回しやすくなります。そのためにも「数値化」「利益直結のコンバージョン」の設定が大切なのです。
目標設定が終われば次は予算の決定です。この時用いる指標がCPA(Cost Per Acquisition及びCost Per Action)です。1件のコンバージョンあたりの費用です。【販売価格-コスト-利益目標値=CPA】で計算します。
仮に5000円の商品があったとして、原価が1500円、コストが1000円、利益目標値が1500円だった場合、上限となるCPAは1000円となります。これ以上を広告に使うとその分利益を削ってしまうことになる損益分岐点です。
このように予算を決定し、CPAを調整することで利益額とのバランスをとっていきます。
■リスティング広告はユーザーの思考を想像することからはじまる
リスティング広告に出稿する際、目標と予算決定の次に行うのは「広告グループの設定」です。
広告グループとは、「キーワード、広告、入札単価」のセットを指し、どのキーワードに対して、どの広告を表示するかを決めていきます。キーワードと広告文のグルーピングの最適化。これが広告グループを考えるうえでの目的です。
この広告グループの構成を工夫することで、その広告に興味を持ちそうなユーザーに広告を表示することができます。そのため、ユーザーがどのようなキーワードで検索し行動するのか、その思考を想像することが非常に重要です。
例えば「ファッション」という広告グループに、「メンズファッション」と「レディスファッション」という二つのキーワードを設定するとします。この場合ユーザーが「メンズファッション」と検索しても「レディスファッション」と「メンズファッション」の広告がローテーションで表示されるため、効果が薄れてしまいます。
これには1広告グループ1キーワードを設定するのが常套手段です。そうすればメンズファッションという検索に対して、メンズファッションの広告だけが表示されるからです。
しかしこの方法を選択すると、その分メンテナンスの手間がかかります。ユーザー視点で言えばこの方法が最善なのですが、それでは運用コストとの採算が立ちません。そのため効果とコストのバランスを考えた広告グループの設定が必要です。
■キーワード選びの大原則とは?
次にキーワードの設定をおこないます。サッカーというキーワードにバスケットボール用品の広告を出してもまず効果は見込めません。仮に「スポーツ」というビックワードを設定すると確かに表示回数は上がりますが、必ずしもそのユーザーがバスケットボール用品を求めているとは限らないため、CTR(クリック率)の低下やCPAの上昇を招きます。対して「バスケットボール シューズ 激安」などのスモールワードの場合、表示回数は低くなるものの、CTRやCVR(コンバージョン率)が高くなりCPAの抑制につながります。
このようなキーワードの特性を考えながら、CTRやCPA、表示回数などの効果のバランスを調整していくのがキーワード選びの大原則です。
■PDCAサイクルを通じて最適化を行う
こうして綿密なプランニングのもと(Plan)、リスティング広告に出稿したら(Do)、効果測定を行います(Check)。その結果をもとによりROI(費用対効果/投資対効果)を向上させるための施策を講じ(Action)、それをまたPDCAサイクルに載せていくのです。こうしてリスティング広告は最適化され、その効果を高めていきます。
ユーザー視点とコスト、そして効果、この3つの要素のバランスを適正化することがリスティング広告における至上目的です。最も重要なのはユーザー視点ですが、そのために運用コストが管理できないほど膨らんでしまっては結局ユーザー視点を貫けなくなります。自社のキャパシティとの兼ね合いを考えつつ、最も効果的な戦略を立てるよう心掛けていくことが必要です。
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筆者プロフィール/冨田和成(とみた・かずまさ)
神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。
【お問い合わせ先】 株式会社ZUU