海外生活経験者というブランド人材活用のススメ ‐ 超訳『社会人基礎力』
超訳『社会人基礎力』Vol.01
海外生活経験者というブランド人材活用のススメ
◆文:鈴木信之(株式会社エストレリータ)
2005年経済産業省(以下、経産省)において、官僚・学者・企業人事の方々が議論し、定義されていった『社会人基礎力』(=組織や地域社会の中で多様な人々とともに仕事を行っていく上で必要な基礎的な能力)。
10年経った現在、「これからの日本にとって12の社会人基礎力はどんな意味をもつのか?」、そして「12の社会人基礎力を身に付けるためにはどうしたらいいのか?」について、海外生活に挑戦する日本の若者のキャリア支援を、起業以来8年間でのべ29,000人超に提供してきた株式会社エストレリータ代表の私、鈴木信之が、改めて、この『社会人基礎力』の超訳(再定義)に挑んでみたいと思います。
企業経営者の皆さまには人材育成や人材採用の観点から、そして、子を持つ1人の親としてはご自身のご子息・ご令嬢への教育の観点から、“これから”を考える1つの契機としていただければ幸いです。
~“超・採用難時代”を迎えるこれからの人材育成と人材採用を考える~
【第1回】主体性
今回は第1回目。『主体性』について考えていければと思います。
『主体性』:物事に進んで取り組む力(経産省の定義)
「指示を待つのではなく、自らやるべきことを見つけて積極的に取り組む」ということですが、このチカラは如何にして身に付くのでしょうか? むしろ、このチカラの獲得を妨げているものは何なのでしょうか?
私たちは子供の頃から学校で問題を出され、それに解答・回答していきます。すでに問題は相手側にあり、それを提示され、その後、それに対処(解答・回答)していく訳です。
以前、文部科学省の方が自分達の反省を込めて、「日本の教育は、〝最高級の指示待ち人間を創る〟教育だ」と言われていました。問題が出されれば解ける。方程式を覚え、漢字や英単語を覚え、解法を暗記し当てはめる。そのことには非常に長けた問題解決型の人材を育成する教育を受けてきたということです。
ある程度の方程式(勝ちパターン)通りに仕事を進めていけば、前年以上の成果を生み出すことができた高度成長期には不可欠の能力であり、教育だったと言えるのかもしれません。
しかし、低成長・無成長時代に突入している現在の日本で、常に〝イノベーション人材〟なる者の必要性が叫ばれるようになると、事態は一変します。そう、「何が問題なのか?」「そもそも取り組むべき問題は何なのか?」、それを自らが発見・設定しなければならない時代になったのです。この〝自ら〟見つけること、これが今回の『主体性』のキーになる部分です。
普段、私たちの時間は、悪意の無い他者(家族・友人・同僚など)に奪われていきます。あらゆる指示や依頼、お誘いの類が、私たちの〝時間割〟を埋め尽くす訳です。そのため、今いる場所(=日本)では、なかなか自分の目的のため、夢のための時間をキープし、自分を〝主体的に〟行動させることが難しいのが現実です。
今、抱えている課題・問題や仕事の内容や量、人間関係の多寡によって、どのくらいの時間を自分自身のために確保できるのかは、人それぞれ異なると思いますが、これまで沢山の学生や若手社会人の方々にセミナーを提供しながら尋ねてみると、ほとんどの方が1日2時間も『主体性』を発揮できてはいないと答えていました。
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私たちのほとんどは、他者との約束(アポイント)は守ります。そのため、その相手から「彼・彼女は人との約束を守る人だ」と信用・信頼されます。
ですが、同様に私たちのほとんどは、自分との約束(アポイント)を軽視しがちです。急なお誘いや依頼により、「自分のことはいつでもできるから」と思い、自分との約束を反故にしてしまいます。〝いつでもできる〟と思っていることは、〝いつまでも〟やりません。こうして私たちの中には「私は自分との約束を守らない人だ」という確信が蓄積され、自分の自分自身に対する信用・信頼が無くなっていきます。自分の自分自身に対する信用・信頼、これこそが『自信』というモノの正体なのです。
その結果として、私たちは総じて、『自信』が無いのです。『自信』を持たないまま採用面接に来ていただいても、企業人事は当然採る気にはなれません。彼ら・彼女たちはリクルートスーツを着ているのではなく、〝自信がないスーツ〟を身にまとい、「私じゃ駄目ですよね…」と音にならない声で伝えてきます。
だから、こちらも「うん、君じゃ駄目ですよ!」って気持ちよく不採用とする訳です。譬えて言えば、「君を幸せにする『自信』は全くない!」っていうプロポーズを受ける相手(パートナー)はいないですよね。
『自信』は、偉い人や凄い人に「君は凄いね!」と言われて貯まっていくものではありません。「誰かが見ていなくても朝6時からNHK英会話を聴く」とか「誰かが見ていなくても寝る前に腹筋を20回やる」とか、この〝誰かが見ていなくても〟を続けることでしか、『自信』貯金は貯まっていかないのです。そして、これを貯めていくために自らが自らのマネージャー(管理者)となることを『主体性』と呼ぶのです。とてもストイックなことですよね。
この『主体性』を身に付ける効果的な方法の1つが、まさに『海外』に飛び出すことなのです。そこでは、渡航日から帰国日まで、〝おはよう〟から〝おやすみ〟まで、『真っ白い時間割』が手渡されます。しかも、悪意無くこの『真っ白い時間割』を埋めていく家族・友人・同僚は、そこ(海外)にはいないはずです。自分の時間割を全て自分で区切って決めていく。ここでもし、『主体性』を発揮しなければ、〝寝ているだけ〟になってしまいます。
自分が『主体性』を使わなければならない『空白』に自分を置いてやること、それが海外生活の大きな意義の1つと見なすことができる訳です。
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企業人事としては、この『主体性』を充分に発揮してきた海外生活経験者を、これからの貴社の挑戦に不可欠な本物の〝イノベーション人材〟として再定義してみてはいかがでしょうか?
そして1人の親としては、お子様自身が選んだ本当に意味のあることに(他者の邪魔が入ることなく)力いっぱい挑戦できる時間を、大いに『主体性』を発揮できる機会をプレゼントしてあげられたら、最も相続させてあげたい『自信』という一生の財産(たからもの)を遺してあげることができるのではないでしょうか?
◉超訳『社会人基礎力』その1:主体性
自分自身とのアポイントを自らで手帳に書き込み、それをきちんと守る自分であり続けること
〈Information〉
株式会社エストレリータでは、海外生活経験者だけが登録できる【Est Navi】という採用サイトを運営しています。利用できるのは、“超・採用難時代”に大きな不利益を被りながらも果敢に挑み続ける中小ベンチャー企業のみ。ご興味のある方は ml@estrellita.co.jp または、☎03-5348-1720 までお問い合わせ下さい。
代表取締役社長 鈴木 信之(すずき・のぶゆき)
1972年9月6日生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。中学受験の老舗企業「四谷大塚」で講師人事・企画を担当。次に当時〝世界のBig5〟と言われたデロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)に入社。HRコンサルタントとして、吸収合併した会社の事業再生や子会社の人事部長として実績をあげる。その後、パソナグループの子会社パソナテックに入社。人事統括や企画責任者を歴任。大手企業の採用コンサルティングや大学でのキャリアセミナー講師を担当。2007年7月に人事コンサルティング企業エストレリータ設立。企業での研修・セミナーや大学などでの講演は年間200本超。日本に99名しかいない国家資格・一級キャリアコンサルティング技能士の1人(2015年5月現在)。
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