華僑・ユダヤ商法に見る、経営者が学ぶべき視野とは?
華僑・ユダヤ商法に見る、経営者が学ぶべき視野とは?
◆文:萩部健次(株式会社アダチファクトリー)
成熟した国内マーケットでいかに販売するか?
これからの人口動態含めてマーケット獲得は年々難しくなっている。そこで、売上を上げていく企業がどんな取組みをしているのかを改めて考えてみたいと思う。
まず、世界市場を席巻しているビジネスモデルを分解してみよう。
例えば、世界各所にマーケットを形成している『華僑』。彼等のマーケット獲得の手法は、独特だ。国内市場にいるときから海外展開する将来を見据え、布石を敷いていく。その種まきが非常に計算的なのだ。
例えば、彼等は、ペットを飼うという行為自体にも意味をもたせる。なぜか。華僑の人達は、優劣のつく話は極力避けたがる。そういった話を避けるためにも、ペット等を飼うことで、話題を豊富にするのだ。それがひいては、事業にも繋がると見越して。つまり、ペットを買う目的で「可愛いから」というのは二義的な動機に過ぎなかったりする。
またビジネスの捉え方も実にシンプルだ。「ビジネスを考える人」「ビジネスを実行する人」「資金調達をする人」と役割分担を明確にする。例えば、新しい事業を起こす時、この役割分担に倣ってチームを組む。その考えの根底にあるのは、1人で10年かかる事業も、10人で取り組み、1年で成し遂げるほうが、成功するためのチャンスを掴み損なう危険は減るよね、という合理的な思考に基いている。
もう一つ世界的な商法として、『ユダヤ』商法がある。この人達は、知識という資産を、世代を超えて継承していく商習慣をもっている。例えば、こんな継承をしている。生まれたばかりの我が子が誕生した途端に生命保険をかけるのだ。その保険の受取人は次世代の家族。この資産運用は脈々と世代を超えて受け継がれていくから、生まれながらに資産を持つことになる。その資産で投資や事業に取り組むのだ。
また、彼らの考えに、「70%のスペシャリストになる」というものがある。端的に話すと、経営に専念すべき経営者は、技術革新のことは意識せず、あくまでマーケットインの視点に立って考えろというものだ。専門家の「こだわり」も、ビジネスを軌道に乗せるという視座から見ると、ときに邪魔になるという考えなのだ。
市場動向を把握せずに自社製品を改良する企業が日本には多いが、製品開発にかかる時間とコストは莫大なものだ。その間にマーケットは刻々と変化していく。改良品が市場に投入された際、時代にそぐわないという事例は掃いて捨てる程ある。
マーケットの変化をいち早く把握し、商品開発後もフレキシブルに対応することがどれだけ重要なことか。つまりサンクスコスト(埋没費用)を考えた経営に取り組む必要があるのだ。
近年、ビジネスモデルの寿命がますます短くなり、商品化した物が利益水準に達する前に競合や価格競争にさらされる機会が多くなっている。日本も産業構造自体が、大きく形を変える端境期に入っている。
こうした時代は、〝プロ〟の経営者が重用視される。プロとは、幅広い視野をもっていることでもある。外部の視点に立てる事がマーケットの把握には求められる。
私は、中小企業支援として1次産業(農業)をお手伝いすることが多い。そうすると気づくのだが、販売方法についてのノウハウは旧態依然として、何も考えられていないことに思い至る。農業の世界では、むしろ異業種から参入した企業や個人の方が実に上手く経営をしている事例がたくさん見受けられるのだ。それというのも、マーケットと商品を見据えた経営ができるからだろう。
これからの中小企業が事業を継続していくために、自社事業が現在どのようなポジションで展開しているか推し量る指標がある。
1、自社の既存事業は伸長しているか?
2、新規マーケットを既存製品で営業しているか?
3、既存マーケットに新規商品を営業しているか?
4、多角化経営を検討しているか?
自社事業の成長を考えるにあたり、どのポジションに大切な資産を投入していくか。これが、経営者の戦略である。経営者・従業員・取引先・お客様の境界がなくなりつつあり、いかにフレキシブルな関係で事業のシナジーを生み出していくのか。
まずは自社事業の立ち位置を棚卸することだ。プレイング・マネジャー的な会社も多数存在すると思うが、日々の業務に追われながらも、経営に対する優先順位を改めてつけることをお勧めする。
自社現状を把握した後に、戦略をしっかり立て、営業が得意な社長であれば従業員に権限譲渡し営業ノウハウを教えることも考えるべきだ。華僑がそうであるように、役割分担によって、激変するマーケットのニーズを逃さずに経営を加速していくことが求められるのだから。
その際、自社の弱みを補完してくれる企業パートナーと組むことも提携シナジーとして有効になる場合もあるだろう。
まとめると、企業内での役割分担を明確にすること、ビジネスモデルの見える化をすること。さらに、1本足経営から脱却することである。
萩部健次…東洋高等学校卒業後に株式会社ムトーに入社し、営業職に従事。2014年に前身の義父の会社を継承する。広告中心の事業形態から、中小企業経営者の悩みを解決し、企業の業績アップに特化したコンサルティング事業に切り替える。営業経験と経営者としての経験などを踏まえた企業業績支援に尽力中。 また、現在は2014年に取得した食プロ6次産業化プロデューサーとして地域創生の取り組みなどにも活動の分野を広げている。
・売上成績年次
■1983~1984年
後楽園スタジアム 売り子(コーラ)
販売数NO1(2年連続)
■1987~1995年
ムトー株式会社 服飾資材
営業成績 社内売上NO1(8年連続)
■2000年 株式会社コスモプリンツ
広告印刷事業 東京営業所 年間売上NO1
■株式会社アダチファクトリー
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