WEBマーケティングは2つの「ROI」をみた使い分けを! – 冨田和成 株式会社ZUU
◆文:冨田和成(株式会社ZUU 代表取締役社長兼CEO)
前回までの連載では、WEBマーケティングを始める前段階の基礎的なことをご紹介してきました。
前編:はじめに知っておかなければならない ウェブマーケティングのいろは
さて、実際にWEBマーケティングを始めようと思った際に、もうひとつ頭に入れなければならないのが、いくらお金を使いいくら儲かったのかを表す「ROI」という指標です。このROIにはその効果を測定する期間によって2つのものが存在します。短期的効果を測定するのが「費用対効果」、長期的な効果を測定するのが「投資対効果」です。
これまで、WEBマーケティングの具体的な手法について触れてきましたが、それらはどのようにして使いわければよいのでしょうか。今回は、オフライン・オンライン広告の比較をする意味で「マス広告」のROIをみた上で、「リスティング広告」、「コンテンツマーケティング」のROIを見ていきたいと思います。
■従来型のマス広告(オフライン営業)のROI
まず、従来型のマス広告をみていきましょう。マス広告には、例えば新聞広告があります。新聞広告は新聞の文化が廃れつつある昨今においてはかなり高度な広告手法と言わねばなりません。
安易に全段ぶち抜きの広告を出しても、それに見合った効果は得られないのです。中小企業であればコストの面から考えて、3行広告などを出すのが妥当ですが、それでも思ったような効果は得られないのが普通です。新聞広告に限って言えば、費用対効果は低いと言わざるを得ず、ましてや一度掲載されると次の日には消えてしまうため、投資対効果は望むべくもありません。
他にもダイレクトマーケティングやチラシ、雑誌広告など様々な手法がありますが、一度発行されるとそのまま消えてしまう、短期的な効果を狙ったものがほとんどです。チラシの場合は1000枚配って1件の顧客誘導ができれば「チラシの達人」と呼ばれます。達人でなければこのレベルの集客もできないのですから、そのROIはオンラインと比べるべくもないでしょう。
また新聞の全段ぶち抜きや、お金のかかったテレビCM、見開き1ページの雑誌広告などを使えば確かに短期的な効果は見込めますが、コストがかかる上に投資対効果は測りにくいといえます。
新聞、TVなどのマス広告に関しては、広告を出したあとに付随するブランドイメージの長期的な向上などを加味することで投資対効果を測定しようという考えもありますが、オンライン広告と比べると効果測定が非常に難しく、より目に見える効果を求める企業には向いていてないと言えます。
■リスティング広告のROI
次に、リスティング広告を見ていきます。リスティング広告は、目的に応じたキーワードを設定し、そのキーワードが検索された際に広告がページに掲載されるというものです。料金はクリック課金システムによって決められ、1クリックあたりの単価をクリック単価(CPC=Cost Per Click)と呼びます。
このクリック単価を上げれば広告でも上位に並ぶことができるほか、クリック数が多い=クリック率が高い広告は、クリック単価が低くとも上位に表示されやすくなるという特徴があります。これは逆にいくらお金をつぎ込んでもクリック率が低ければ表示圏外に追いやられる可能性があることを示唆しています。
そのように考えると、オンライン広告と言えども、新聞や雑誌と同じ、残らず消えていく広告となってしまいます。よってリスティング広告もオフライン広告と同じで、費用対効果は見込めても投資対効果は低くならざるを得ないのです。
■コンテンツマーケティングのROI
最後にコンテンツマーケティングについて見ていきましょう。米国Eloqua社の調査「Content Marketing ROI」(http://marketeer.kapost.com/common/uploads/2012/06/Content-Marketing-Kapost-Eloqua-eBook.pdf)によると、コンテンツマーケティングによる問い合わせ及び資料請求を1件獲得するのに必要なコスト(人件費、システム管理費、コンテンツ制作費などを含む)は、大企業であれば1か月約33,000ドル(約396万円、1ドル=120円)中規模で約12,000ドル(約144万円、同)かかるといいます。
この試算によると、導入当初はかなりのコストがかかりますが、5か月もすると1件当たりのコストは80%減となり、時間が経つにつれて随時低下していくとされています。このことから、コンテンツマーケティングのROIのうち、短期で見る費用対効果は低いと言わざるを得ませんが、長期的で見る「投資対効果」で考えると、高いことが分かります。
■短期と中長期の施策を使いわけたWEBマーケティングを
このようにみると、短期的な目で見ればやはりオフライン広告の方がまだまだ効果は高いと言えます。しかし技術的な面から考えると、その効果を思うように得るのは難しいです。そうは言っても、すべてをコンテンツマーケティングに切り替えてしまうと効果が出るまでに一定の期間が必要というデメリットが生まれます。
だからこそ、WEBマーケティングを行う上では、短期的なROIはPPCで狙い、並行してコンテンツマーケティングを行うことで、長期的なROIも獲得するというハイブリッドモデルが最善だと言えるでしょう。
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筆者プロフィール/冨田和成(とみた・かずまさ)
神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。
【お問い合わせ先】 株式会社ZUU