ネット通販代行、違法の線引
ネット通販代行、違法の線引
◆文:伊藤信和(弁理士・諏訪坂特許商標事務所)
あたり前の話ですが、良い商品があっても、それが一つの店舗でしか売っていない場合は(ネット通販もしていなければ)、その店舗に行って購入する必要があります。商品を購入したいけれども、遠方に住んでいるために、購入できないということって、結構有りますよね。
さて、ニーズがあるならば、他社の商品であれ、それを大量に購入してネット通販をして儲けようと考える個人・会社がでてくるもの。実際に、他社の商品を通販する会社がネット上で散見されます。その中でも、比較的規模の大きな通販代行業者に、家具やインテリアを販売する「IKEA」の通販代行業者があります。
ところで、このようなネット通販代行は、適法なのでしょうか違法なのでしょうか。
「IKEA」の商標権を持つ「インター・イケア・システムズ・ビー・ヴィ」(本社・オランダ)が、イケアの通販代行業者を、2013年6月に訴えた裁判があります。この裁判は和解に至ったと思われ、判決はでていません。判決がないため詳細はわかりませんが、新聞記事などを参考にしますと、ネット通販代行業者は、商標権・著作権侵害で訴えられているようです。
まず、商標について調べてみますと、「インター・イケア・システムズ・ビー・ヴィ」は100以上の商標権を検討してみます。商標は、標準文字の「IKEA」から下記のようにロゴ、カタカナも登録しています。
指定商品・役務(サービス)も家具インテリアにとどまらず広く権利化しています。ちなみに通販代行の役務(サービス)は第35類に含まれますが、その区分でも「インター・イケア・システムズ・ビー・ヴィ」は商標権を有しています。
このため、通販代行業者が「IKEA通販」とか「イケアネット販売」など「IKEA」又は「イケア」を含む店舗舗名を使うと、商標権侵害になります。
通販サイトの店舗名が、例えば「ビッグライフ21ネット通販」であれば、IKEAの家具などの商品を通販代行しても商標権侵害しませんし、その通販サイトの商品説明で、例えば、『「IKEA」の正規品を通販します。』と書いてあれば、正規品、つまり真正な商品を扱っている事実を告知しているだけですから商標権侵害しません。
次に著作権侵害ですが、通販代行業者は、IKEA公式サイトの商品の写真を、自身の通販サイトに転載していたようです。油絵が、画家(著作者)とする“著作物”であるように、写真もまた、撮影者(著作者)とする“著作物”です。その写真をそのまま転載しているのであれば、著作権侵害が明らかです。
この著作権侵害を避けるためには、IKEAの商品の写真を自分で撮れば問題ありません。IKEAの商品を、IKEAの店舗内で撮影することはできません。IKEAでは店舗の入IKEAの入り口には「写真撮影禁止」という表示が見られます。このため、商品の写真を撮るとなると実際に商品を購入し、写真撮影する必要があります。これで著作権侵害がなくなります。
まとめますと、ネット通販代行は、商標権侵害しない自分の店舗名で小売りをし、購入した正規の商品の写真を自分で撮影しその写真をホームページに載せ、その商品をインターネット通販すれば、何ら違反な行為はありません。
「IKEA」の商品は、通販代行業者が日本の店舗で購入した商品を販売していましたが、外国で購入した商品をネット通販する場合はどうでしょうか。ネット検索しますと、多くは並行輸入代行サイトがヒットします。外国の商品の方が、その店舗に行って購入することがさらに困難になりまた為替の問題もありますから、より需要があるかもしれません。
外国で購入した商品の商標でも、その企業が日本商標権を有していることが多いです。また諸外国も日本も著作権保護に関するベルヌ条約に加盟しています。このため、先ほど「IKEA」の例で説明したように、商標権侵害しない自分の店舗名で小売りをし、購入した正規の商品の写真を自分で撮影しその写真をホームページに載せれば問題なく通販事業ができます。
商才のあるあなた!通販事業に飛び込んでみませんか。
●プロフィール
伊藤信和(いとう・のぶかず)…金沢大学工学部機械科卒業 平成6年 弁理士試験合格/ワシントン大学法学部CASRIP終了(2006年)/工作機械メーカー機械設計/国内・外資企業の知的財産部勤務(経験16年)/特許事務所を開設(2006年~)
●諏訪坂特許商標事務所
〒102-0083
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