海外視察の際の8つのチェックポイント – 冨田和成(株式会社ZUU)
◆文:冨田和成(株式会社ZUU代表取締役社長兼CEO)
今回は海外進出前に行う、海外視察の際の8つのチェックポイントご紹介致します。
海外進出を行う際は、念入りに進出先候補の確認を行いたいところですが、時間・コストは極力抑えたいものです。効率的に情報収集を行い、本稿で紹介するポイントは最低限抑えておくことで、視察スケジュールの最低限の情報収集を達成することはできるかと思います。
進出前の現地視察は必須です。情報化社会となった今日、書籍や情報誌、ITメディアを通じて情報収集は容易にできますが、必ず進出済みの企業や、バンカー、商社などを活用して現場の状況を確認することが大切です。特に、新興国の環境は日進月歩変化するため、現地の生の情報を肌で感じることの意義は深いです。
今回、現地視察時に抑えておくべきポイントを、経営資源を言及する際に一般的に述べられる、「人」「モノ」「カネ」のカテゴリーで、さらに、これらカテゴリーにかかる「制度」を加え、説明したいと考えます。各カテゴリーをさらに細分化しまして、合計8ポイントにまとめました。
「人」の確認ポイント
経営資源、「人」に関する確認ポイントは、①キャラクター ②コストの2点です。
①キャラクターについて、進出先の国柄、宗教、慣習、文化が挙げられます。現地の方々は親日的か、宗教的戒律、主食、食事の回数や制限、言語や経済水準については、現地視察前にはある程度把握を行うことで、現地視察のときに、特異な就業ルールや慣習に出くわしたときに理解しやすいです。例えば、フィリピンでは従業員に対して「米手当」というものがあり非課税扱いです。これはフィリピンの主食が米であり、一人当たり消費量も年間100kg以上という数字も背景にあります。
②コストについては、人件費となります。地域ごとの最低賃金、学歴をバックグラウンドとした賃金格差、祝日や深夜など時間外手当の割り増し分、社会保障や年金の会社負担分に加え、同業他社が会社内で実施している社員向けの貸付や財形などについても把握しておくことで、事業計画は策定しやすくなります。高度技術、熟練技術者が必要となる職種については、対象従業員を獲得するために発生する費用についても確認しておきたいところです。
「モノ」の確認ポイント
経営資源、「モノ」に対する確認ポイントは、③コスト ④品質、および⑤リードタイムです。製造業、サービス業問わず、日本国内と同様の購買発注計画は機能しないと考えておいたほうがよいでしょう。
③コストについて、現地調達ができるのであれば問題ないですが、現調不可の原材料や設備がある場合、日本や他国から取り寄せます。現地調達可能でも④品質を事前に確認しておき、使用可否を判断する必要があります。さらには、調達までの⑤リードタイムを明確にすることで、安定した事業活動が行えるか否かを明確にしなければなりません。機械設備を現地で調達する際は、スペアパーツやエンジニアリングサービス有無などを必ず確認し、故障対応などのアフターサービスについても把握しておきたいものです。
現状での③コスト、④品質、⑤リードタイムを把握しながら、かつ戦略的な考え方として、将来的に現地で調達可能になるものや、自社が必要としている「モノ」の品質基準をロースペックに対応できないかなどを同時に検討する余地を持つことも重要となります。
「カネ」の確認ポイント
経営資源、「カネ」に対する確認ポイントは、⑥資金調達方法 ⑦徴収(課税)です。
経営を考える上で⑥資金調達方法は常に頭痛の種です。海外進出時の現地銀行からの調達、法人銀行と提携している現地銀行の確認、親会社からの資本投入に関する規制は勿論ですが、リースサービス会社の確認や、支払サイトをマネージするために、進出商社有無など確認すると、具体的な経営計画を描くことができます。
⑦徴収(課税)は、会社形態によって異なるケースや、外資に対してインセンティブを与えるケースもあるので、予備知識を持った上で、現地での聞き取り調査を行うほうがベストです。
課税ルールが突然変わる場合や、判例を採用するケースが多々あるため、最新の事例を情報収集することで、進出後の監査対応も考慮することができるかと思います。とかく、新興国で頻繁におこる税金トラブル対策は、監査する側の性格を熟知することと、強い有識者をがっちり抑えることが重要です。
「人」「モノ」「カネ」に係る「制度」の確認ポイント
最後に、上述したカテゴリーにかかる⑧制度について抑えるべきでしょう。
「人」について言えば、健康・労災にかかることや年金、業務に対する年齢制限、国内業務に対するルールに加え、海外出張に対する制約も把握すると、新たなビジネスモデルを気づく機会になるかもしれません。
「モノ」について、輸出入規制や環境面の制約、保管・設置ルールやライセンスの必要有無、ライセンス発行担当局、準拠する法律を抑えるなど入念な調査が必要となりますが、例えば、保管・設置ルールについては建設業者、輸出入規制については物流業者や商社との情報交換のなかで概要を把握することができるかと思います。
「カネ」について、特に外資に対する規制やインセンティブを、進出斡旋業者や銀行、JETROの現地事務所に問い合わせすることで、概要を把握することができるかと思います。⑧制度に関しては、調査を開始するときりがないため、現地調査では、制度を熟知しているであろう、有識者に面談をして、効率的に整理していく必要があります。
以上のように、海外視察の際の8つのチェックポイントについて解説致しました。外国では、全く日本とは異なる法体系、社会・経済インフラのもと、人々が生活している世界です。重要なポイントは、常に好奇心をめぐらせ、偏見を持たずに考える姿勢ではないかと考えます。
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【プロフィール】
冨田和成(とみた・かずまさ)…神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。
◆2014年12月合併号の記事より◆