税理士法人フィールド名誉会長 平野嘉重|生かされて、生きる経営づくり
生かされて、生きる経営づくり
◆文:平野嘉重 (税理士法人フィールド名誉会長)
人は、誰しも一人で生きて、一人で成長することはできません。精神的にも、身体的にも、成長してきた道を振り返ると、必ずお世話になった人々が数多くおられるのです。とかく、経営が上手くいき、成功道へと進むにつれて、人は「大者」になった気がするのです。大者とは、字のごとく、「奢り」と書きます。「奢りが油断を生む」とよく言われています。そのような事にならないためにも、常に自分が築いてきた歴史の原点を決して忘れてはいけないのです。
現在の自分の原点は何かと考えたときに、誰しもが思い浮かべる事でしょう。自分の「両親」です。「両親」により、「生命」を与えられたからこそ、現在の自分が存在するのです。両親から生命を与えられ、現在の自分が存在する歴史の流れを見てみましょう。
人は、8種の利害関係集団(ネットワーク)の中で生かされ、生きている
両親から生命を与えられると、まず、両親(祖先)との間に自分にとって一番大切な関係が生まれ、同時に兄弟姉妹、親戚との関係が生まれ、地域社会との関係も発生します。自分が成長して学校に通うことになれば、恩師、友人との関係が新たに発生します。更に成長して社会人になれば、勤務先との関係で、職場仲間、上司との関係が発生し、婚姻により、配偶者、子との関係も新たに発生します。
これを一表にまとめたものが下記の「図表Ⅰ」です。
全ての人は、「図表Ⅰ」での人間関係(ネットワーク)のなかで、成長していくものです。自分一人だけの力で成長したのではなく、この利害関係集団との流れの中で、苦しみ、笑い、怒られ等を経験して現在の成長した自分が存在することを忘れてはならないのです。端的に言えば、「生かされ、生きてきた」ということを忘れてはならないのです。
「図表Ⅰ」で、最も重要な関係は、自分に生命を与えてくれた両親です。そして、その両親に生命を与えた祖父母、さらには、曽祖父母、高祖父母という生命の連続性(動態連続生命観)の重要性を真摯に受け止める事です。
この連続した生命(家系)を次の世代に継承させる事が自分に課せられた責務となります。近時に至っては、両親が残した財産の継承だけに傾注して、家系(家名)の継承が忘れられている現象が多く見られますが、経営の原点は、ここにあると言っても過言ではないのです。
人は、6種の利害関係集団(ネットワーク)の中で生かされ、生きている
学校を卒業した人は、社会人の仲間入りをします。会社等に入社することにより、新たな人間関係が生まれます。また、自分が成長して会社の経営者になりますと、更なる人間関係が発生します。
これを一表にまとめたものが下記の「図表Ⅱ」です。
企業は、「第Ⅱ図」における6種の利害関係集団(ネットワーク)の関係の中で、経営活動を行います。得意先、仕入先(外注先)、借入先、従業員、社会公共機関、株主等の関係のなかで、企業の社会的使命を果たすために利益追求をします。しかし、企業は各利害関係集団とは利害が反する関係になるので、ここに、企業が「共存共栄」・「利他の精神」・「三方善」の精神の必要性を求めることができます。
この利害関係集団との流れの中で、「生かされて、生きている」と言うことを忘れてはならないのです。経営の原点は、「家庭にあり」と言われておりますが、経営を成功の道へと歩むには、8種の利害関係集団・6種の利害関係集団の本質を理解して、経営を展開することが不可欠であると考えます。 (続く)
プロフィール/平野嘉重(ひらの・よししげ)…50年の税務経験と25年の経営コンサルティング業務のノウハウを活かし、中小、中堅企業の経営診断、企業再生、M&A、財務改善、資金調達等に取り組んでおります。
税理士法人フィールド 名誉会長・日本経営者クラブ 会長。
関東財務局・関東経済産業局認定 経営革新等支援機関
【所属団体】TKC東京中央会・東京税理士会日本橋支部/中央大学南甲倶楽部
【学歴・資格】
昭和37年3月 中央大学経済学部卒業
昭和41年12月 税理士試験合格
昭和42年4月 税理士開業
平成22年5月 税理士法人フィールド設立
〈税理士法人フィールド〉TEL.03-5695-7731
〈日本経営者クラブ〉TEL.03-5695-7737