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イマドキのビジネスはだいたいそんな感じだ! 

21世紀のビジネスは生物に学べ

◆文:佐藤 さとる(本誌 副編集長)

 

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ビジネスは戦争だ。何が何でも戦い抜くのだーっ!……そう思っている方は少なくないと思う。

実際、経営に使われる言葉も「経営戦略」や「営業戦術」など、とかく軍事用語が多い。

 

しかし軍事学的思考が、果たして21世紀の企業のあり方を考えた時適切かどうかは考えるべき余地はある。

というのも近年ビジネスにおいては、生物・生態学の法則を取り入れる例が増えているからだ。

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たとえば「ニッチ」という言葉。もはや事業戦略では当たり前のように使われているが、実は本家の生物学では「隙間」を意味するものではなく、「それぞれの生物が選んでいる固有の生活の場」を意味するらしい。

自然界では同じ種に属する生物は、空間的に同じ場所に集まっていく傾向がある。すると当然ながら、その場所の環境が与える資源に余裕がなくなり、やがて資源をめぐり競争が起きる。そして究極的にはどれか一方が残り、他は排除される。これを生物学では「ガウゼの排他原理」と言うらしい。

 

だが自然界はよくできている。例えば活動する時間帯を昼と夜に分ける、あるいは活動する時間帯は同じだけれど、食べる餌の種類を変えている者が出てきたりする。ニッチが重なっても、時間帯を変えたり、空間を変える、餌を変えるなど、そのニッチを構成する座標軸から最適なニッチを見出しているのだ。

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企業活動は市場獲得競争だとも言われる。だが仮に企業が環境から選ばれるとすれば、その固有の生活の場=ニッチ、を見出せば、市場は獲得できる。したがって他社を排除するよりは、自社のニッチを探すほうがより生き残っていく可能性は高まる。

 

企業の文化や体質、固有性などを表現する言葉としてDNA(遺伝子)もよく知られている。とりわけモノづくりメーカーなどではDNAこそが、企業の推進力のように発信し続ける例が多い。自動車メーカーとして知られるホンダなどはその代表だ。ご承知の通り、ホンダはオートバイから始まり、クルマに農業機械、さらにロボット、ジェット機、家庭用燃料電池装置など、一見、二輪や四輪とは関係のない領域にどんどん踏み込んでいく。

「なぜそんなことを?」と社員に問えば、返ってくるのは「それがホンダのDNAだから」という言葉のはずだ。きっと。そこにはDNAという言葉が持つ、特異性・存在理由の全てがあるように思う。

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実は「企業も生物と同じようにDNAを持っているのだよ」という話は20年以上も前から経済学・経営学のなかにあった。

ハーバード大学の経済学者、ネルソンさんとウィンターさんによれば、「企業は一定のルーチン(遺伝子)を持っていて、これを用いて自己の存続を図る」(『経済変化の進化理論』)ものだそうだ。生物学から転身した経済学者、西山賢一さんによれば、「これこそ現代の企業のイメージ」なのだという。

「(企業の)組織形態は常にゆらいでいる。時にこのゆらぎが成長して、たとえば新しい組織づくりが実を結び、ルーチンが大きく変異することで、変化できる。環境に適応できるようになる」(『企業の適応戦略』)。

そもそも「企業を取り巻く環境は不確定要素が大きいので、予め利益を最大化するようなプランを企業が立てることは困難」だそう。よって「仮に利益を最大にしている企業があったとしても、それは企業の行動が正しかったのではなく、むしろ環境側から選ばれた結果」なのである。

 

ビジネス界ではよく「強いもの、優れたものが必ず生き残るとは限らない。変化するものが生き残る」という適者生存原理が語られるが、ルーチンの話はまさにその核心を突いている。

我々はもしかしたら大きな勘違いをしているのかもしれない。いち早く生物・生態的経営に変えていかないと、会社という“種”が滅んでしまう─かもしれない。

イマドキのビジネスはだいたいそんな感じだ。

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