◆文:冨田和成(株式会社ZUU 代表取締役社長)

 

毎年延期されてきた証券税制優遇制度ですが、※遂に2013年で終了します。その税制変更に伴い、最近増えている投資信託の乗り換えの勧誘の有効性についてお伝えできればと思います。投資信託の乗換勧誘を勧められている企業経営者の皆様のご参考になれば幸いに存じます。

2014年1月から税金が高くなる

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まず、投資信託に関する税率について簡単にまとめたいと思います。

※2013年11月現在では、投資信託から生じる普通分配金や売却(解約)差益に約10%の税金がかかります。内訳は所得税・住民税・震災特別復興税となっています。これが、2014年1月1日からは、2倍の約20%になることが決まっています。この税率は2037年まで維持される予定ですので、投資信託から生じる利益には、むこう20年は20%の税金がかかるということになります。

このような文脈において、「税金が上がってしまう前に、一度投資信託を解約して利益を確定させた上で、同じ投資信託商品や別の投資信託商品を買い直してはどうか?」という勧誘が増えています。

 

 

投資信託は年内売却が良いのか?

現時点であれば、10%の税金で済みますので、例えば1000万円で投資信託を購入して現在1300万円の場合、300万円の含み益があります。この場合、現時点では300万円に対して10%の30万円の徴税となります。これに対して2014年以降では60万円の徴税をされることとなります。このように、投資信託に大きな含み益がある場合には買換をすることにメリットがあるというように見えます。

 

ただし、ご注意頂きたいのは、乗換に関して、税金以外にどのような手数料がかかるかという点です。つまり、乗換手数料や取得手数料など(税金ではなく、証券会社などに支払う手数料)です。これらの手数料は、無料のものから3%程度までであるのが一般的です。

 

先に述べさせていただいたような大きな含み益がある場合には、手数料を考えても、利益は生じるでしょう。しかし、例えば前述の例で投資信託の価値が1100万円であり、含み益が100万円程度である場合、乗換手数料が、(真ん中をとって)2%であったとすれば、22万円の乗り換え手数料がかかってしまいます。3%であれば、33万円です。仮に1%であっても11万円です。このように税金+手数料込みで考えると、現在、投資信託の売却で利益を確定させることがお勧めできるかどうかは、含み益の額・10%の税率・証券会社等への手数料を総合勘案して決める必要があるといえます。

 

そのため、「税金10%→20%。現在売ったほうが良い」というご判断の間に「税金10%→乗り換え手数料△%だから××円。含み益は○○円だから→売ったほうが利益が出る・出ない」という判断過程を挿入されることで本当に乗換が得かどうかが判断できます。

 

まとめますと、2013年中に投資信託を一度売却したほうが良いかどうかは、①含み益の程度、②乗換手数料(証券会社への手数料)、③10%の税率という3点から考えることがポイントということができます。

乗換勧誘が多い年末にかけて、企業経営者の皆様の資産形成にお役に立てれば幸いに存じます。

ZUU

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【プロフィール】

冨田和成(とみた・かずまさ)…神奈川県出身。一橋大学在学中にIT分野で起業。2006年大学卒業後、野村證券株式会社に入社。本社の富裕層向けプライベートバンキング業務、ASEAN地域の経営戦略担当等に従事。2013年3月に野村證券を退職。同年4月に株式会社ZUUを設立し代表取締役に就任。

 

【お問い合わせ先】 株式会社ZUU

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