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 5S「整理」とは、〝散らかっているものを片付ける〟という意味ではない!

◆文:前田康秀( 株式会社ヒューマン・ナレッヂ 代表取締役)

 

5Sの言葉は知っていても、意味を理解していないと〝整理〟という言葉で「片付ければいいのだろう」と勘違いしている方も多いのではないでしょうか?

日本企業の生産現場では、必ずといっていいほど5Sに関するポスターなどが貼ってあります。皆さんの現場にも大体1つぐらいは5Sに関する掲示物があると思いますので、もう一度確認してみて下さい。何が書いてあるのかを……。

今回は、整理の取り組み方について説明したいと思います。

 

整理の意味とは?

5Sで云う整理とは、「要るモノと要らないモノをハッキリと分けて、要らないモノを捨てる」ことを示します。言葉では簡単に思えることかもしれませんが、これが中々難しい所なのです。何が難しいかというと、もったいない精神が邪魔をしてしまい、何でもしまいこんでしまう場合が意外に多いのです。これは、在庫にも影響が出てきます。

 

製品をつくるとき、商品を受注するときなど、「不良が出るとまずいから…」と10個で事足りるモノを予備も含めて数個多めに頼んでしまうことはありませんか? 余ってしまうとそれが何年も倉庫に眠ってしまいムダにスペースを占領し、「倉庫が狭くなった」と意味もない倉庫を新築・増築と更にムダな経費を使ってしまうことになります。

 

 

要るモノと要らないモノを分けるには?

整理で要るモノと要らないモノを分ける際に、「赤札作戦」(弊社ではレッドカード作戦と呼んでいます。以降レッドカードと称する)を実施します。レッドカード作戦とは、使用していない期間や対象物などを決めた上で赤色のカードを不要なモノに貼り、要る(必要な)モノだけを残していくプロジェクト作戦を言います。また、期間を徐々に短縮し、要るモノだけが残ったら次に数量規制などをしていき、最終的には要らないモノ(不要品)が出ない発注の仕組みを形成します。

 

 

レッドカード作戦の実施手順

①プロジェクト発足

②対象部署・対象物の決定

③基準の決定

④レッドカード作成

⑤実施日(貼付日の決定)

⑥実施

 

レッドカードも貼っただけでは意味がありません。貼り終えた後も重要になります。

カードを貼り終えたらまずは、

 

①対処と評価

②レッドカード一覧表作成

③レッドカード集計金額提示

④作戦結果のまとめ

⑤結果報告(全職員)

 

を行います。

 

対処・評価を行ってからは、貼ったものに対する一覧表を作成し、更に原価(金額)を集計します。

 

結果報告については、全従業員に「貼ったモノの名称」「金額」「処分方法」などを明確に知らせます。全員に知らせるのは、ムダに対する視点を広げ、今までの固定観念の払拭にも役立ちます。

 

 

レッドカード作戦のポイント

●レッドカード作戦で使用するカードは必ず目立つ赤色にすること。

●貼付カードは一人5枚以上(職場によって基準を決定)

●数時間~1日程度の短時間で貼り終えること(悩まず貼る)

●自分の部署より他部署の人が貼ると効果的。

●貼ったモノは、待機場所(別置き場)へまとめて処分。

●「人」は財産ですので、人には貼らないこと(要注意)

 

レッドカードは、字の通り目立つ赤色を使用し、貼付カードの最低枚数を決めましょう。一人の貼る量を決めないと、貼る人(参加者)・貼らない人(不参加者)と分かれる要因にもなってしまいます。必ず最低枚数は決めて下さい。

貼付時間は、なるべく短時間で行いましょう。時間が長いと迷いが生じてしまいます。迷ったら貼るのが基本ですが、短時間でパッパッと貼ることが重要です。

また、自分の部署より他人の部署の方が悩まず貼ることが可能です。貼るときはコンサルタントになった気持ちでどんどん貼っていきましょう。 計画設定時に待機場所も決めておくことが必要です。貼ったモノは不要品がほとんどですので職場から一刻も早く取り除きましょう。待機場所からも、対処・評価・一覧の作成が終わり次第、すぐに処置して下さい。待機場所は一時的なものですので、長期間の放置は厳禁です。

 

 

不要なモノの隠れ場所

不要なモノは仕事場の様々な所に隠れています。隠れているというよりは、日頃のマンネリ化や当たり前の固定観念が邪魔をして、見えていないと言った方が正解でしょう。

主な隠れ場所とは、

 

●在庫置き場や倉庫

●道具(治工具)置き場

●床・通路・作業区

●壁・掲示板・管理版

●建屋周り・ゴミ捨て場

●机・棚・キャビネット・ロッカー

●書類・書籍

 

……等に潜んでいます。情報の賞味期限も要注意です。

 

 

整理実践のまとめ

★整理=捨てること

★レッドカードは、単なる捨てるだけではなく必ず計画立てした上で実践して下さい。

★作戦リーダー、ルール、カード作成、実施日、対処日を計画に沿って実践しましょう。

★レッドカード作戦での削減率は、私の経験から最低でも30%以上削減が可能です。

★計画立てと集計金額の把握は必ず行って下さい。

社内で5S体制が整ったら、まずは整理から始めてみましょう。いざ実践!

 

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もの革前田02 プロフィール

前田康秀(まえだ・やすひで)…大学卒業後、東京建築資材メーカーを経て、ジット経営研究所㈱(経営コンサルティング会社)入社。全国企業の生産現場を中心に5S・ジャスト・イン・タイムIT生産を習得。その後、北海道に渡り会計事務所に入社。税務会計の顧問先等へ5S・JIT方式の経験を活かし製造業をはじめ異業種での経験と実績を積み独立。現在、㈱ヒューマン・ナレッヂ代表として製造業を中心に様々な業種において5S・JIT方式による経営(現場)指導およびセミナー(研修)を行っている。

【5Sの正しい理解から実践指導まで(講義+成果報告+現場指導の一体型研修)「5S改革養成講座」募集中】

 

●株式会社ヒューマン・ナレッヂ

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◆2014年2・3月合併号より◆