トランプ政権誕生で「日本の就職の魅力向上」8割~Zenkenがインド学生調査

Zenkenが2025年2月に実施したインド人学生のアンケート調査によると、1月にトランプ米政権が発足したことにより「海外(インド以外)での就職が難しくなった」と考える学生が7割近くを占めた。米国が新政権に移行したことで、魅力が高まった国・地域では「日本」との回答が8割を占め、最も高い比率を占めた。トランプ氏が米移民政策を厳格化する方針であることから、インド人学生には特に米国での就職の先行きに不安が募っている。
移民受け入れの厳格化が海外就職の障害に
調査はZenkenがインド・ベンガルールなどの15の工科系大学の学生を対象に2月4~10日に実施し、1671件の回答を得た。アンケートで「トランプ政権に代わることで、海外での就職が難しくなったと感じているか」と聞いたところ、「はい」が66.4%に達した。「いいえ」は33.6%にとどまった。就職が難しくなった理由は「移民受け入れの厳格化」との答えが66.8%に達した。米国はもちろん、極右政党の躍進が目立つ欧州でも移民への対応がさらに厳しくなる見通しであるためだ。

米新政権の誕生で就職への魅力が高まった国・地域を聞いたところ、最も多かったのが日本で80%だった(複数回答)。次に多かったのは英国とシンガポールで、それぞれ45.5%だった。日本は欧米諸国に比べて物価水準も低く、日本の文化を好むインド人学生も多いことから高評価となったようだ。

トランプ政権の誕生で就職への魅力が下がった国・地域は、米国が59.5%でトップ(複数回答)。中国(40.4%)、カナダ(29.7%)がそれに続いた。トランプ米大統領は3月4日に中国やカナダなどへの追加関税を発動した。貿易摩擦が激化するのは必至の情勢で、それを心配する向きが多いようだ。

「日本で働きたい」は9割超、ソフトウエアエンジニアが人気
アンケートで「日本で働きたいか」と聞いたところ、「はい」との回答が93.9%を占めた。「日本でどんな仕事をやりたいか」との質問への答えでは「ソフトウエアエンジニア」が73.1%で最も多かった。プログラムを書くことを専門とするプログラマーと違い、ソフトウエアエンジニアは設計、開発、プログラミング、保守・運用まで担当できるのが人気の背景のようだ。
次に多かったのは「データサイエンティスト(データを分析、活用)」で47.7%に達した。「AIエンジニア」も42.2%で続いた。ビッグデータの収集・解析を手掛けるデータサイエンティストなど、AI(人工知能)関連の職種に人気が集まっている。全般的なウェブサービスを提供できるフロンエンドエンジニア(40.9%)、フルスタックエンジニア(フロント・バック・サーバーなど複数の工程の作業ができる、40.4%)との回答も高い比率を占めた。
生産年齢人口は1700万人も減少へ
厚生労働省が2025年2月に発表した人口動態統計によると、24年の日本の出生数は過去最少を更新し、婚姻数も戦後2番目の少なさだった。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、生産年齢人口(15~64歳)は40年に約6200万人になり、20年の約7500万人から1700万人(約2割)も減る見通しだ。
今後は多くの日本企業が若年層の採用が難しくなることが考えられ、手をこまぬいていれば人手不足で事業が継続できないケースも出てくる可能性がある。多くの日本企業がITなどで有能な人材を輩出するインドに注目しつつあるが、採用力強化には、日本人だけでなく、海外人材がやりがいのある仕事を感じられる職場づくりも欠かせない。