人手不足が深刻さを増す日本企業の採用担当者にとって、離職率の高さは悩みの種だ。特に外国人材は「せっかく採用しても、すぐに辞めてしまう」というイメージを持つ企業も多い。しかし、海外人材の紹介などを手掛けるZenkenが実施した海外での就職を希望するインド・ベンガルールの工科系大学4年生へのアンケート調査によると、「日本で5年以上働きたい」との回答が53%と半数を超えた。企業の採用担当者の一部が抱くイメージとは違い、中長期で働く考えのインド人学生の方が多いようだ。

 

「3年以上働きたい」は7割超、日本で長く働きたい人多く

調査はZenkenがインド・ベンガルールなどの25の工科系大学で海外就職を希望する4年生を対象に1月2~9日に実施し、905件の回答を得た。ベンガルールはIT産業の集積地として知られ、インドの「シリコンバレー」とも言われる。

アンケートで「日本で何年働きたいか」と聞いたところ、「5~10年」との回答が27.5%で最も多かった。次に多かったのは「10年以上」で26%だった。5年以上働きたいと答えた人の比率を合わせると53.5%と過半数に達した。これは、長く働きたいと希望しているインド人学生が多いことを示している。

「1~3年」が23.6%、「3~5年」が21.7%で続いた。「3年以上働きたい」とした人は合計で75.2%に達し、日本で長期間働きたい人が大半を占めることが明らかになった。「1年未満」と答えた人はわずか1.2%にとどまり、短期間だけしか働くつもりのない人が少数派であることを示した。

 

他国に再転職は少数派、日本企業が寄り添えるかもカギ

アンケートで「日本で就職しても、他国にまた転職したいと思うか」と質問したところ、「いいえ」と答えた人が60.4%で過半数だった。日本企業の技術力の高さや日本文化、治安の良さなどを評価するインド人学生は多く、海外の中でも日本で長く働きたいという人は多い。

一方、「はい」との回答も39.4%あった。「他国に転職したい」という人を対象に「どこの国に転職したいか」と質問したところ、「米国」が79.9%を占め断トツのトップだった(複数回答)。「ドイツやその他EU(欧州連合)諸国」が58.4%でそれに続いた。将来のITエンジニアであるインド人学生たちの間では、日本や米欧諸国が最も人気があるといえる。これに続くのは「カナダ」の48.6%で半数近かった。「韓国」は12.8%、「中国」は7.3%にとどまった。このほか、インド、オーストラリア、シンガポールという答えもあった。

もちろん、インド人エンジニアが長く働くつもりでも、「企業文化が合わない」「日本の生活に馴染めない」といった理由で辞めてしまう人も少なくない。インド人エンジニアの離職率を下げるためには、企業文化や生活習慣の教育など採用側が歩み寄る姿勢を示せるかも重要になる。