少子・高齢化を背景とした国内の人手不足への懸念が続いている。総務省が発表した2021年10月1日時点の人口推計で、労働の中心的な担い手となる15~64歳の生産年齢人口は約58万人減った。総人口に占める割合は59.4%と統計を取り始めた1950年以来、最低だった。特にIT(情報通信)や介護などの分野では人手不足が深刻となり、外国人人材への注目が集まっている。

一方でデフレ経済が続いてきた日本では平均賃金も低迷しており、海外企業との人材獲得競争力が落ちているとの見方もある。日本企業は外国人人材に対してどのくらいの報酬を想定しているのか。海外人材の日本企業へのマッチング事業などを展開する全研本社が日本企業に対して海外人材についての意識調査を実施したところ、ITなどの技術者に対しては年500万円以上との回答が半分近くを占めた。

調査は全研本社が企業の人事・労務など採用担当者を対象に8月19~21日に実施し、200件の回答を得た。回答した企業の従業員数は500名以下が42.5%、500名超~1000名以下が15.5%、1000名超が42%。業種は製造業、サービス業、金融・保険、情報・通信、流通・小売業、教育・医療サービスなどだった。

 

外国人技術者への想定報酬「年400万以上500万円未満」が最多

 

全研本社の調査によると、「IT関連などの外国人技術者について、どのくらいの年収であれば外国人を雇用しますか」との質問に対して、「500万円以上」と答えた人は47%にのぼった。「500万円以上600万円未満」との回答が全体の13%を示した。「600万円以上700万円未満」「700万円以上800万円未満」との回答はそれぞれ約11%だった。「1000万円以上」との答えも4%あった。最も多かったのは「400万円以上500万円未満」で21.5%だった。

経済産業省が「2030年にIT(情報技術)人材が76万人不足する」と試算するなど、AI(人工知能)やDX(デジタルトランスフォーメーション)をはじめとした技術者の獲得は、日本にとって重要な課題となっている。国内の労働力人口が減少していることもあり、日本企業は一定の報酬を支払って外国人技術者の獲得を目指しているようだ。ただ、欧米諸国をはじめとした世界的な賃金インフレやこのところの円相場の下落が、外国人の採用にマイナスになることも考えられる。

 

技術者以外の外国人の想定報酬、技術者と格差も

 

一方、「技術者以外の外国人人材について、どのくらいの年収であれば外国人を雇用しますか」との質問について「500万円以上」と答えた人は36%にとどまった。最も回答が多かったのが「300万円以上400万円未満」で25.5%にのぼった。「400万円以上500万円未満」が次いで多く、22%に達した。「1000万円以上」との回答は2.5%にとどまり、外国人人材の雇用については、技術者と技術者以外で想定報酬に格差があることが浮き彫りになった。

日本企業が外国人人材に求める語学力については「一定以上の水準の日本語」が40.5%、「日常会話程度の日本語」が32%との回答が高い比率を占めた。「英語」と答えた人は4%と極めて低く、「英語ができても日本語ができなければ外国人人材を採用できない」と考えている日本企業の人事担当者が多いことを示した。ただ、技術力や能力が高ければ、日本で就職してから比較的早く日本語を話せるようになる外国人人材も多い。このためか、「優秀であれば語学は不問」と答えた人も6%を占めた。

(編集協力 P&Rコンサルティング)