2021年下半期において上場企業が公表した合併・買収(M&A)の件数は431件となり、前年同期間とほぼ同程度で推移しました。

 

売り手となった企業の業種を調査すると、「IT・ソフトウェア」(86件)が最多となり、次に「建設・土木」(28件)、「専門商社」(22件)と続きました。最もM&A件数の多かったIT・ソフトウェア業界では、企業の多くが3次・4次請けで薄利構造に陥りやすいという課題が存在し、多重下請け構造から脱出するために、M&Aで会社の譲渡を決意する経営者が多いと考えられます。

 

 

売手となった企業で最多の「IT・ソフトウェア」業種を対象としたM&Aの中では、モバイルゲームをグローバル展開する米IT企業のScopelyが、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントの完全子会社であるGame Show Network, LLC(以下「GSN」)の一部門であるGSNGamesを約1,100億円で買収した事例が最も取引金額の高い案件となりました。

 

GSNは、マルチメディアを利用したゲームショーエンタテインメントを展開、オリジナルゲームやクラシックゲームなどを提供しています。今回のM&Aにより、Scopelyの事業を補完するゲームのポートフォリオが追加されるだけでなく、GSN Gamesが有するゲーム制作チームが、Scopelyのエコシステムに加わることが可能になりました。コロナ禍でも好調なゲーム業界では、今後同様に積極的な事業拡大を目的としたM&Aが増えていく可能性があります。

 

売り手企業の業種別件数の増加幅を見ると、「機械」が前年同期比2.8倍と顕著に増加したことがわかりました。「機械」関連企業の業績は国内外の政治や経済状況に影響を受けやすいという特徴があります。機械業界の業界規模が2018年をピークに2019年から縮小傾向にあり(※1)、新型コロナの影響でさらに機械需要が減少していることから、経営状態が悪化する企業が増え、譲渡の需要が高まっていることが考えられます。

 

2021年下半期では、M&A件数が前年と同程度で推移した一方で、景気の影響を受けやすい一部の業界では、譲渡需要が高まり、業界内でのM&Aが活発になりつつあります。新型コロナが再び猛威を奮うなか、このような業界では今後も積極的な再編が進むと考えられます。

 

※1 出展:業界動向サーチ「機械業界の2021年版(2020-21年)の業界レポート」

 

【株式会社M&A総合研究所について】

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