2021年のTOB(株式公開買い付け)件数は前年比10件増の70件と、3年連続で増加した。リーマン・ショック後では2009年の79件、2008年の78件に次いで3番目に多かった。新型コロナウイルス感染症の影響が長引き、先行き不透明な中でTOBによる経営規模の拡大や新規事業への進出を狙う企業が増加。日銀の金融緩和などを背景に企業がTOBの費用を調達しやすい環境が続き、件数増を後押しした。(ストライク調べ)

 

一方、取引金額は同73.3%減の1兆7100億円にとどまった。これは前年に3兆円を超えるNTTのNTTドコモに対する超大型TOBがあった反動減。前年は10件あった1000億円を超える大型TOBが3件と少なかったこともあり、金額は伸びなかった。敵対的TOBは過去最高だった前年と同じ5件となっている。

 

MBO(経営陣による企業買収)は前年比8件増の19件と、3年連続の増加となった。10件を超えたのは2年連続で、2008年以降では過去最高の2011年(21件)に次ぐ高水準。経営陣が株主の意向や短期的な株価の動向に左右されない成長戦略を採用したり、TOBによる敵対的買収を回避したりするため、MBOによる上場廃止を目指す動きが出ている。

 

TOBの総プレミアム平均は同3.46ポイント減の37.31%と、2年連続の減少に終わった。一方、ポジティブプレミアム平均は同3.39ポイント増の46.08%と4年連続で増加している。最もプレミアムが高かったのはTCSホールディングス(旧東京コンピュータサービス、東京都中央区)が11月15日に露出計の大手メーカーであるセコニックの非公開化を目的にTOBを実施すると発表した228.19%だった。

 

(金額は単位百万円)