フィンテック・トップ企業「衆安保険」 上場も果たした保険×ITの代表格 ‐ 一村明博 株式会社ZUU
テクノロジーと保険を融合させた「InsurTech(インシュアテック)」が加速しています。その代表格が中国の衆安保険(Zhong An)です。
衆安保険は2013年、中国3大民間企業であるアリババ・グループ・ホールディング(阿里巴巴集団)、テンセント(騰訊控股)、中国平安保険が共同で上海に設立した中国初のオンライン保険企業です。
保険の申込みから審査、そして保険金の申請まですべてオンラインでできるだけでなく、ブロックチェーンやAI(人工知能)、ビッグデータなどの先端技術を積極的に取り入れ、「保険は複雑で手間がかかる」というイメージを一新。
手続きに必要なプロセスや運営コストを極力抑え簡潔化することで、「簡単・安い・便利」と3拍子そろった消費者に優しい保険を実現しています。
設立当初は集客を最優先する意図か、オンライン・ショッピング関連の保険商品に注力していました。
「オンライン・ショッピングを安全に楽しみたい」あるいは「オンライン・ショッピングで確実に利益をあげたい」という買い手、売り手、代理店、プラットフォームを対象に、アリババの子会社であるオンライン・ショッピングサイト「タオバオ(淘宝)」や「T―mall(天猫)」を通じて、返品送料を負担する返品保険、貨物保険、信用保証保険、銀行口座信用保険などを販売していました。
現在は補償範囲を広げ、医療保険や損害保険、自動車保険、旅行保険など、より幅広い顧客層の生活に密着した商品を提供しています。顧客一人ひとりの需要に合わせてカスタマイズできる点が魅力の一つで、最近話題のドローンによる事故の損害賠償など、市場のトレンドを先取りしたユニークな保険も取り扱っているのが特徴です。
同社のサイトによると、2017年は商品数が300種類を超え、顧客数は5億3500万人、販売数は75億6000万件を突破したそうです。
その実績は国外からも高い評価を受け、2015年にはモルガン・スタンレーなどから総額58億ドルを調達。2017年9月には香港証券取引所(HKEX)で上場を果たしました。調達額は15億ドルです。
日本の企業との提携も活発化しています。日本市場開拓を目指し、2018年は損害保険ジャパン日本興亜と提携関係を結んだほか、ソフトバンクグループの投資部門「ヴィジョン・ファンド」から1億ドルの出資を受け、国際部門の衆安インターナショナルと合併ベンチャー企業を設立しています。
両社間で国外のテクノロジー・ソリューション事業の強化を図り、海外市場を狙う意図です。
国際コンサルティング企業KPMGが、資本増加率や事業の多様化などに基づいて世界のフィンテック企業の革新力を評価する「フィンテック100」というランキングがあります。衆安保険は2015年のランキングで1位に選ばれ、その後も常にトップ40にランクインしています。
衆安保険が目指しているように、アジアから世界へと国際規模で事業を展開できる戦力を十分に備えていると期待できます。
筆者プロフィール/一村 明博
東京都出身。成蹊大学法学部卒業。1993年、大和証券入社。富裕層や中小企業オーナーを主な顧客とする個人営業に従事し、常に全国トップクラスの営業成績を残す。入社3年目には全国NO.1を獲得。
その後、2001年に松井証券入社。2004年、最年少(当時)で同社営業推進部長、そして2006年には同社取締役に就任。高度かつ専門的な知識が必要とされる金融業界において20年以上にわたり500人以上の部下を育てた人材育成のプロフェッショナル。
株式会社ZUU (英語名 ZUU Co.,Ltd.)
〒153-0042東京都目黒区青葉台3-6-28 住友不動産青葉台タワー9F
従業員数:66名 (パート・アルバイト・インターン・海外支社社員含む、2017年12月時点)