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コンシェルジュも無料、保険の概念を変える

決済や送金、資産管理などの分野に比べて、「保険」はフィンテックの進展、言い換えればテクノロジーの活用があまり進まなかった分野でした。しかし最近ではこの分野でも、技術を生かして顧客の需要に合わせた商品やサービスが増え始めています。

保険分野のフィンテックのことをInsurTech(インシュアテック)と呼びます。最近のトレンドとしては、スマホやウェアラブル端末で集めたビッグデータを人工知能(AI)などを活用することで、加入者の健康を支える「デジタルヘルス」への取り組みが活発になっています。

インシュアテックの代表的な企業といえば、2013年に米国ニューヨークで設立された医療保険のスタートアップ、オスカー Oscarです。従来の医療保険と大きく異なる点は、契約者とその家族の健康維持に重点を置いて総合的な医療ケアを提供しているところでしょう。病気の予防、早期発見によって、医療費や保険料の節減を目指しているのです。

オスカーは契約者に対して、様々な無料サービスを提供しています。専属のコンシェルジュ医療チームが往診の手配から慢性疾患へのアドバイス、保険プランの相談まで幅広く対応してくれるほか、365日24時間対応OKの医師による無料電話相談も提供しています。

コンシェルジュは顧客の様々な要望にこたえてくれる「よろず承り係」。同様のサービスを提供している保険会社はほかにもありますが、たいていは有料です。すべての顧客がコンシェルジュサービスを無料で利用できる点がオスカーの魅力の一つでしょう。有料のサービスもありますが、料金が利用前に分かりやすく提示される点も利用者に支持されている理由です。

過去の往診・処方箋の履歴が管理されているので、自己健康管理にも役立ちそうです。こうした至れり尽くせりのサービスにアプリから気軽にアクセスできます。

オスカーを設立したジョシュア・クシュナー氏はブラジル最大のソーシャルゲームサイト「Vоstu」の設立者。共同創業者には、世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエイツでトレーディングモデルを開発した人物や、マイクロソフトでグローバル・ビジネス・マネージャーを務めた人物もいます。

米国の高額な医療費による負担を少しでも軽くする野望のもと立ち上げたオスカーは、ニューヨーク、ニュージャージー、カリフォルニア、テキサスの4州で、医療保険を全額負担している消費者にサービスを提供しています。2017年12月の時点で会員数9万人、時価総額は28億ドルといいます。

オスカー急成長の背景には、オバマケアの導入があります。オバマケアで医療保険加入が義務化される以前の2013年には、全米の保険未加入者は4400万人いるといわれていました。

日本では想像がつかないかもしれませんが、米国は国民皆保険ではないので、個人で保険に加入する必要があります。「医療保険=複雑で高い」と躊躇していた人々にとって、「便利・簡潔・安価」と三拍子そろったオスカーのような新しいサービスは救世主といっても過言ではないのです。

加入している保険の問い合わせだけではなく、「最近何だか体調がすぐれない」「子どもが夜中に高熱を出した」といった、日常的な健康・医療上の不安にも24時間対応してくれます。オスカーは保険の概念まったく新しいものに変えつつあります。

 

筆者プロフィール/一村 明博
東京都出身。成蹊大学法学部卒業。1993年、大和証券入社。富裕層や中小企業オーナーを主な顧客とする個人営業に従事し、常に全国トップクラスの営業成績を残す。入社3年目には全国NO.1を獲得。

その後、2001年に松井証券入社。2004年、最年少(当時)で同社営業推進部長、そして2006年には同社取締役に就任。高度かつ専門的な知識が必要とされる金融業界において20年以上にわたり500人以上の部下を育てた人材育成のプロフェッショナル。

 

株式会社ZUU (英語名 ZUU Co.,Ltd.)
〒153-0042東京都目黒区青葉台3-6-28 住友不動産青葉台タワー9F
従業員数:66名 (パート・アルバイト・インターン・海外支社社員含む、2017年12月時点)

https://zuu.co.jp/