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最近、「ブロックチェーン」という言葉を聞く機会が増えたと思います。

ブロックチェーンとは管理者のいない、改ざんが不可能と考えられているデータベースで、「分散型台帳技術」とも呼ばれます。“台帳”なので資産や権利の移転などの取引が記録されますが、データのまとまりである「ブロック」が連なる形で保存されるため、「ブロックチェーン」と呼ばれます。

メリットとしては、特定の管理者がいないため権限が集中せず誰にも不正が働けないこと。台帳が分散されているためシステム障害にも強いことなどです。送金や決済にかかる時間とコストが大幅に削減できると期待されており、金融業界だけでなく、医療、製造などあらゆる業界、業種で活用に向けた実証実験が行われています。

 

ちなみにビットコインとセットで語られることが多い理由は、ビットコインを実現する技術として登場したのがブロックチェーンであることです。

ビットコインのブロックチェーンでは10分に1つブロックが生成されます。国際間の送金や決済では数日かかるのがこれまでの常識でしたが、10分などに大幅に時間短縮されるかもしれないわけです。コストが大幅に安くなるうえ、不正が働けないとなると注目されるのは当然です。

金融業界の既存の仕組みを壊しかねない新しい技術ですが、大手の取引所や銀行、証券会社なども熱心に取り組んでいます。

 

2015年、米国の証券取引所ナスダックが未公開株の取引に「ブロックチェーン技術を導入する」と発表し、話題を呼びました。目的は、未公開企業の有価証券の発行から取引、管理の簡易化・コスト削減を図ることです。

従来の証券取引では、資産登録や検証、転送作業の精緻度を高めるために、大量の人手とコスト、時間を要しました。ブロックチェーンを活かせば、取引を大幅にスピードアップさせ、結果的にコストや人手の削減につながります。

この大胆な試みの基盤となる技術を提供したのが米国サンフランシスコのスタートアップ、チェーン(Chain)です。

チェーンは2014年の設立以来、金融市場サービス向けの分散型システムを提供しています。ボストン・コンサルティング・グループでキャリアを積んだアダム・ルートヴィヒ氏が中心となって立ち上げました。

チェーンが提携している大手金融機関はナスダックだけではなく、VISA、シティー、三菱UFJフィナンシャル・グループ(МUFG)などにも広がっています。

チェーンの発表によると、MUFGとの提携では、約束手形をブロックチェーン上で流通させる実証実験を共同で行うそうです。企業が約束手形をブロックチェーン上で安全かつ簡単に発行、交換できるかを実験するのです。

ブロックチェーン企業はほかにも多数生まれていますが、チェーンが他と大きく異なるのは、独自のブロックチェーン・ネットワークを構築するのではなく、あくまで金融機関や企業への技術提供に徹している点です。

身近で信頼性の高い既存の金融機関が、消費者にとって、より利用しやすく安全性の高い、低コストの金融サービスを確立する上で、チェーンの技術は欠かせないものとなりそうです。

 

筆者プロフィール/一村 明博
東京都出身。成蹊大学法学部卒業。1993年、大和証券入社。富裕層や中小企業オーナーを主な顧客とする個人営業に従事し、常に全国トップクラスの営業成績を残す。入社3年目には全国NO.1を獲得。

その後、2001年に松井証券入社。2004年、最年少(当時)で同社営業推進部長、そして2006年には同社取締役に就任。高度かつ専門的な知識が必要とされる金融業界において20年以上にわたり500人以上の部下を育てた人材育成のプロフェッショナル。

 

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