〝商〟だけではない台東区 希少なモノづくりの街としてもPR

 

話は変わりますが、この夏、葉山(神奈川県)で石原慎太郎東京都知事とご一緒する機会がありました。

知事とはヨットを通じた古くからの知り合いで、同い年ということもあり、お会いしたときは忌憚のない話をし、また聴いていただいている関係です。

 

そんな中で最近、よく話題に上るのが東京マラソンとオリンピック招致に関する熱い思いです。とりわけ東京マラソンの話題になりますと、台東区はもとより、私ども東京商工会議所台東支部も総力を挙げて協力し、取り組んでいることから大いに弾むのが常です。キーワードはもちろん、

 

東京から日本を元気に─。

これです。

 

ということでここからは、東京、というより東京の下町から日本を元気に、という立場を以って一筆、認めたいと思います。

 

まずは来年の5月に予定されている、東京スカイツリーの開業です。千載一遇といえば大袈裟かも知れませんが、久しくなかったたいへんなチャンスだと捉えております。お膝元の墨田区、台東区はもちろんですが、近隣一体、東京の下町全体にとって、これは世界から人を呼べるこれまでにない大きな観光資源になります。

 

とりわけ年間5000万人の誘致を目標としている私ども東商台東支部にとっては、浅草寺、雷門、上野の森、三社祭など歴史的文化的観光資源にくわえ、浅草サンバカーニバル、東京マラソン、パンダに続く新しい目玉として、大いに活用すべきランドマークであり、同じ認識の墨田支部とも密接に連携し、これを機に更なる活性化を果たしたいと考えているところです。

 

今ひとつは地場産業の振興です。台東区は〝商〟〝工〟のどちらかというと〝商〟の街と見られがちですが、実は世界のどこに出しても恥ずかしくない、優れた技術を持った希少なモノづくりの街でもあります。

 

その双璧とも呼べるのが、ジュエリー産業と皮革産業です。

 

ジュエリー産業は多様化するニーズを先取りし、更に市場規模を拡大すべく分科会でも鋭意検討されているところですし、皮革産業はその伝統芸をもっと形にして世に出せるよう、私どもとしてもよりバックアップする態勢を整えつつあります。いずれも東京スカイツリーに肖って、しっかりとしたブランドに育てたいと考えております。

 

間違った過剰な人権主義を正せ

最後にひとつだけ、この機会に苦言を呈させていただきます。中国や韓国、アジアの新興勢力によって日本のモノづくりが危機に瀕しています。

 

これは日本の文化の衰退にもつながる話です。この超円高や産業構造の変化など様々な要因はありますが、とどの詰まりは〝日本人の心意気の問題〟だと私は考えています。

 

手前味噌になりますが、私の父はあの東京大空襲で会社(旧浅草区栄久町)が全焼したときも、わずか4カ月後には築地に仮事務所を出し、1年足らずで会社の再興を果たしています。

おそらくあの時代には、そういう心意気、逞しさを持った日本人がいっぱいいた筈です。

 

いちいち細かいことはいいませんが、それが今はどうでしょう。これは偏に教育の問題です。教育といっても学校だけではありません。いや、学校というよりむしろ地域社会、そして何より家庭の問題です。

 

ご記憶の方も多いでしょう。かつて親が子供を学校に預けるときは、その子の人権まですべて預けたものです。それがいつの間にか、すべて学校任せにした挙句、いじめられた、叩かれた、ケガをしたなどと学校に文句を言う親まで出る始末です。

 

この過保護と、権利ばかり主張して義務を果たさない間違った人権主義が日本人の心意気を奪い、日本という国を脆弱にしていることに、我々は留意すべきではないでしょうか。
私ども東京商工会議所台東支部でも、この教育問題は、未来の日本を、商工界の未来を決する重要なテーマとしてより真剣に取り上げ、より積極的に関わっていこうと決意しているところです。【寄稿】

 

小田切満寿雄(おだぎり ますお)氏…東京商工会議所台東支部会長、日本セーリング連盟顧問、浅草ロータリークラブ会長、株式会社オダギリ取締役会長。1932年旧東京市浅草区生まれ。慶応義塾大学卒。特技ヨット。趣味ゴルフ 俳句。

 

 

※本記事は2011年158号掲載記事をもとに構成しています。