元アクセンチュア代表取締役 海野恵一氏コラム「大東亜戦争における日本軍が行なった問題に日本人は英語でどう答えるのか?~南京大虐殺編~」
◆文:海野恵一(元アクセンチュア 代表取締役)
(写真=PIXABAY)
大東亜戦争に関して、今まで欧米人、中国人をはじめとする外国人と上手くコミュニケーションを取れなかったのはなぜだろうか。要因は一つではないが、英語と日本語のニュアンスの違いによって生じた偏見と誤解が大きな要因となっていることは明らかである。
日本語の資料と日本人の思考をそのまま彼らにぶつけても、彼らは理解してくれないだろう。かといって、大東亜戦争に負けたからということで、単に謝罪だけすればいいものではない。私たちに必要なのは、彼らが日ごろ目にするメディアにも目を向けることで認識のずれをなくし、右でも左でもないニュートラルな立場で彼らと対等に議論できるようになることである。
本記事では、大東亜戦争に関するトピックの中で、欧米人と日本人の認識で特に大きくギャップがあるものを2編にわたって取り上げていく。本記事、前編では「南京大虐殺」について取り上げる。
このようなトピックについて、欧米人が普段目にする英語で書かれた記事や動画を交えながら、中立的な立場で解説を詳述していく。日本人としての矜持を海外の人々に示すためにも、是非こうしたテーマについて正しい認識を持ち、企業内、学校内といった信頼関係のある人たちとディベートを通じて、今以上の信頼関係を築いてほしい。
「事実はわからない」という事実
南京大虐殺はあったが30万人ではなく、定かではないが約4万人で、3万人の捕虜の虐殺と1万人の民間人の虐殺があったのかもしれない。強姦の事実もあったようだが、その数はわからない。
ただし、3千万人ないし9千万人の人数が西に逃げたのは事実のようだ。不思議なのは中国政府は南京大虐殺に関しては声高に言っているが、他の都市の事件のことは言わないことである。毛沢東の時代に日本政府と何か密約があるのだろうか。何故かはわからない。
再生回数200万回を超えるアメリカのプロパガンダビデオの信憑性
これは日中戦争のアメリカのフィルムである。よく構成されていて疎開の状況がよくわかり、また南京では4万人が殺されたと言っている。このビデオは200万回もみられているので、欧米人にとっては日中戦争の定番になっていることがわかる。
ただし、以下の英文記事の指摘のように、内容にごまかしがある。フィルムの偽造は中国だけでなく、アメリカも行っている。そのため何が正しいのか、本当のことはわからない。ただ、こうして刷り込まれた欧米人の日中戦争に対する認識を変えるのは簡単ではないということは事実だ。
America produced a wartime propaganda movie titled “the Battle of China”(directed by Frank Capra, 65 min) to foment(扇動する) American people’s hatred toward the Japanese people in 1944, when WWⅡ was near its end. In the Battle of China, there is the scene, where the mysterious soldiers who look like Japanese soldiers, shoot two people to death as if they were Japanese soldiers killing Nanking civilians.
Why do you think Frank Capra used the 1928 Shanghai’s footage as a 1937 Nanking’s footage in the Battle of China? Because there was actual proof or footage that could prove Japan really committed these war crimes.
https://tamagawaboat.wordpress.com/2010/08/26/nanking-massacre-and-katyn-massacre/
中国やアメリカの制作したプロパガンダビデオには、こうした虚偽情報が多い。しかしところどころに挿入された嘘の情報を見破ることは極めて難しく、影響力は恐ろしい。
論争を巻き起こした石原慎太郎氏の発言「南京虐殺はなかった」
一方、石原慎太郎氏のように南京虐殺を否定する発言をする人も数多くいる。しかしそれは言い過ぎである。南京虐殺は虚偽ではない。あったのだが、その規模がわからないということだ。
日本ではこういった意見が右寄りの意見として散見されるが、世間に流布している認識とのギャップが大きすぎて、世界では通用しない。彼らと議論するには、まずは海外の人達が認識している内容から始める必要があるのだ。以下の英文は、石原氏の意見に対する欧米人の反応である。石原氏の突っぱねるような言い方に憤りを示していることがわかる。
When Ishihara Shintaro, the current governor of Tokyo was still a Diet member in the mid-1990s, he commented in an interview with mass media, “I know it is said that the Japanese Army committed the Nanking Massacre. But the Nanking Massacre is not a historical fact. This is a hoax by China.
Japan’s image was badly tarnished by this hoax.” I watched the news on TV. I remember that I barked at TV in anger then, “What!? Ishihara Shintaro is also going to deny America’s atomic bombing? Denying Nanking is tantamount to denying Hiroshima and Nagasaki.
https://tamagawaboat.wordpress.com/?s=ishihara&searchbutton=go%21/
なくならない認識のずれ、その解決の糸口は。
以下の内容は英文のウィキペディアに書かれているものである。天皇が捕虜を殺害していいとされていた証拠はどこにもない。非があるのはこうした噂を信じていしまっている欧米人だけではない。こうした記述を許してきた日本人にも問題がある。
Killing of Prisoners of War
Starting in 1931, an international law called the Third Geneva Convention said it was illegal to treat prisoners of war in certain ways. It said these prisoners had rights – for example, the right to have a trial before being executed. However, in August 1937, Hirohito, the Emperor of Japan, had decided that he and the JIA would not follow any international laws about how Chinese prisoners of war had to be treated.
https://simple.wikipedia.org/wiki/Nanking_Massacre
実は、過去に日本政府をあげてこうした認識のずれをなくそうとした試みがなされたことがあった。2006年10月の安部総理大臣(当時)訪中の際に決まったことである。同年11月、APEC閣僚会議の際の日中外相会談において、歴史共同開発研究の実施枠組みについて合意した。
日中の有識者がそれぞれの見解をまとめたものが発表されたが、外務省は両国の意見のすり合わせはしなかったようである。そのため、日中それぞれの外務省のホームページには異なる内容の見解が掲載されたままになっている。
これまでの事例から、日本と中国や欧米との認識の差は、それぞれの意見が一方通行のまま、すり合わせが行われていないことが原因で生じていることがわかる。私たちは、もはや日本語でいくら議論しても、いくら記事を書いても、海外の人達には全く伝わらない。
今私たちにできることは、彼らの認識を理解したうえでニュートラルな見解を持ち、彼らと対等にコミュニケーションをとっていくことなのである。
(後編に続く)
※本コラムは『大東亜戦争における日本軍が行った問題に日本人は英語でどう答えるのか?』を基に構成しています。本書は下記より購入できます。
How to explain Nanking Massacre: 南京大虐殺について日本人は英語でどう答えるのか?
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海野恵一(うんの・けいいち)
1948年1月14日生まれ。東京大学経済学部卒業後、アーサー・アンダーセン(現・アクセンチュア)入社。
2001年 アクセンチュア 代表取締役
2004年 スウィングバイ株式会社 代表取締役社長
2004年 天津日中大学院 理事
2007年 大連市星海友誼賞
著書
『本社も経理も中国へ』ダイアモンド社
『これからの対中国ビジネス』 日中出版
『2020年、日本はアジアのリーダーになれるか』 ファーストプレス
『日本企業はアジアのリーダーになれるのか』 ファーストプレス
『日本企業は中国企業にアジアで勝てるのか?』日本ビジネスプラン
『男としての心の身だしなみはできているか?』スウィングバイ株式会社
『アクセンチュアでどのようにして代表取締役になれたのか?』同上
『Major Controversial Issues at WWll』 (英語) 同上 (5月出版) 他多数
◉海野塾
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