【探訪】house on the hill – 入間を見守るゲストハウス
PILOT社(現:株式会社パイロットコーポレーション)の発展に大きく貢献した「伝説の営業マン」、守屋勇治会長。転居以来、スクスクと生長してきた「白樺」を手に。
埼玉県南西部に位置する入間市。狭山丘陵が育む豊かな自然に囲まれ、狭山茶の産地としても知られている。都心の池袋駅から西武池袋線に揺られること45分、同市東部に位置する武蔵藤沢駅を下車すると、今回の舞台である株式会社協同のゲストハウスはすぐそこだ。
海抜99.9メートル、なだらかな丘陵から入間市内を一望のもとに見渡せる。
反対に、市内からゲストハウスを見上げてみると、壁面に同社商号の英語表記『MORIANKIODO』の文字が目に飛び込む。柔らかな緑色の壁面を通じて優しく見つめ合うゲストハウスと入間市との関係性は、以前紹介した同社と入間との幸福な関係そのままだ。
以前の紹介記事
株式会社協同 ‐ 非常時の備蓄にアウトドア…火を使わずにあたたかい食事が食べられる 世界特許の発熱剤
ゲストハウスの建つ場所は、狭山丘陵を下った西武球場(現:西武ドーム)の初代球場長の邸宅跡地だという。
来訪者を迎える玄関には、階段に沿って紅白の南天の鉢が並んでいる。南天は「ナンテン」から「難転」に通じることから、日本では縁起木として親しまれている。短くない階段に沿って紅白の南天が並ぶ様は圧巻だ。
秋から冬へと変わろうとする11月初旬、すすきの穂が天を突く快晴の下、敷地内にはキウイや柿の木が実をつけ、温室内には草花の鉢植えが並ぶ。
ゲストハウスの隣接地は、同社の守屋勇治会長、守屋京子社長の自宅になっている。今年、卒寿を迎えた勇治氏の趣味は「発明」で、このことが、同社の主力商品『モーリアンヒートパック』開発の背景になったというエピソードがある。
また一方で、勇治氏には、万年筆で知られるPILOT社(現:株式会社パイロットコーポレーション)の発展に大きく貢献した「伝説の営業マン」という一面もある。
同本社事務所の応接室では、昭和26年の平和条約締結後、巨大工場建設の命を受け赴任したブラジルで、ポルトガル語を習得するために通った夜学の学生証や、初航海時のパスポート、赤道通過許可証などを見ることができる。
ゲストハウス内にも、万年筆などPILOT時代の記念品の数々がショーケースに入れられ飾られており、ふと、それぞれに十二支の動物のアートが施された12本セットの万年筆が目に留まる。これも何かの記念品かと思いきや、勇治氏の自慢のコレクションだという。
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今から16年前の平成10年、勇治氏の生命に係る重度の喘息による転地療法とモーリアンヒートパック工場立ち上げのために入間に転居してきた同社。
このとき勇治・京子両氏を含め、総勢3名であった。その後、火も電気も使わず水だけで食事を温める発熱剤『モーリアンヒートパック』により再びの繁栄を築いた同社は、地元の支えを得て、今、入間から世界へとあたたかい食事を届けようとしている。
【プロフィール】
守屋京子(もりや・きょうこ)氏
昭和25年、鹿児島県種子島出身。
明治大学法学部卒業後、関連会社への就職を経て、株式会社協同入社。
平成6年、代表取締役。現在に至る。
株式会社 協同 (MORIANKIODO)
〒358-0011埼玉県入間市下藤沢1,097-1
TEL:042-965-4221