◆文:一村明博 (株式会社ZUU)

 

今回の社名を見て「フィンテック企業なのか?」と疑問に感じた方もいらっしゃるかもしれません。これまで取り上げた企業(ロボアドのウェルスフロント、アプリ証券のエイコーン、国際送金のトラスファーワイズ)と比べると、フィンテックのイメージはないかもしれません。

しかし、フィンテックが変革をもたらすのは金融業界だけではないことを指摘するべく、今回、初となる国内企業として、衣料品ネット通販「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイを紹介します。

 

スタートトゥデイは東証1部上場企業で、主な収益源はゾゾタウンの出店ブランドからの受託販売手数料です。1988年設立、資本金は13億5990万円。代表取締役社長の前澤友作氏はアートコレクターとしても名高い人物です。

ゾゾタウンはユーザー数700万人、平均年齢は32・7歳。比較的若い世代に支持されているといえます。年間の取扱高は2000億円に迫るほど。

 

そのゾゾタウンが2016年11月から「ツケ払い」というサービスを始めました。テレビCMには人気女優の吉岡里帆さんを起用。「好きだもん、好きなんだもん、2カ月待つなんてできないよ」と言わせて大々的に宣伝しました。

このサービスでは、まずユーザーがゾゾタウンで買い物をする際、「ツケ払い」を選びます。商品が届いた数日後に、請求書が到着します。これを持って近くのコンビニや銀行に行き、料金を支払うわけです。

 

「ツケ払い」という名前からお分かりのとおり、支払いまでの期間は注文から最大2カ月の猶予があります。限度額は5万4000円です(1回あたりの手数料が税込みで324円)。

スタートトゥデイは「クレジットカードの利用に抵抗があるお客様やクレジットカードを保有していない若年層のお客様」に喜ばれるサービスとしています。たしかに、このサービスは既存の金融機関には与信枠を与えられなかったユーザー、お金を貸すことができなかったユーザーに「限度額5万4000円のリボ払い専用クレジットカード」を提供することと同じと言えます。

 

決算資料によるとゾゾタウンの平均出荷単価は8530円です。ツケ払いによる買い物も同金額と仮定し、ツケ払い手数料を金利と見立てて計算すると「324円÷8530円=3.8%」となります。ツケ払いは2カ月後までの支払いですので、これを年換算すると(単利であっても)「3.8%☓6=22・8%」の高金利金融商品であることが分かります。

今年の8月には利用者が100万人を超えるほどの人気ぶりですが、クレジットカードが作れない、支払い能力もない若者が気軽に買い物して滞納してしまうという例も増えているようで、ネットで話題になりました。

 

業績にも大きな影響を与えています。商品取扱高を見ると、2016年7〜9月期までは前年同期比20%台の成長でしたが、ツケ払いの導入(16年11月)以降、2016年10〜12月は同30%後半の成長に拡大。17年4〜6月期に至っては同40%成長となっています。投資家も評価しており、同社の株価は8月1日に史上最高値を更新、時価総額も1兆円の大台を超えました。

「ZOZOUSED」による古着買取と関連させたり、ツケ払いの期間を短期化して実質金利を上げたりとフィンテック化の領域は残っています。今後の動向に注目しておきたいところです

 

zuu 一村氏

筆者プロフィール/一村 明博

東京都出身。成蹊大学法学部卒業。1993年、大和証券入社。富裕層や中小企業オーナーを主な顧客とする個人営業に従事し、常に全国トップクラスの営業成績を残す。入社3年目には全国NO.1を獲得。その後、2001年に松井証券入社。2004年、最年少(当時)で同社営業推進部長、そして2006年には同社取締役に就任。

高度かつ専門的な知識が必要とされる金融業界において20年以上にわたり500人以上の部下を育てた人材育成のプロフェッショナル。

 

〈お問い合わせ先〉 info@zuuonline.com

 

株式会社ZUU

http://zuu.co.jp/

東京都目黒区青葉台3-6-28 住友不動産青葉台タワー9F