インターネット・ショッピングモールでの商標権侵害は誰が責任を?
【賢者に学べ!】
インターネット・ショッピングモールでの商標権侵害は誰が責任を?
◆西郷国際特許事務所 所長/弁理士 西郷義美
こんな相談があった。
今、流行のインターネット・ショッピングモールを運営し、金儲をしたい。だが、出店者もいろいろな人がいるだろうから、怖い。特に知財関係のトラブルが怖い。
例えば、他人の商標に似ているものを使っての販売があった場合、どこまで責任が及ぶのか。つまり、モールの運営者である私にまで責任は及ぶのかどうか?…というものである。
そこで考えてみた。ふと、昔の事件を思い出した。
商標の侵害会社を発見したので、追求するも、ヌラクラと逃げ回り、まともな返答がない。そこでさらに調べてみると、某大手デパートで売り出している事を突き止めた。
そこでそのデパートに、侵害である、相応の対応をせよ云々、との警告書を出す。デパートは、即刻反応した。撤去したから、見に来て欲しいとの返答である。成功!
だが、インターネット・ショッピングモールの場合はどうか? 主従の関わり合いが薄いようにも感じる。
さらに調べてみると、あった。以下に紹介するものがそれである。判決は結論として、運営者も責任を負う場合がある、といっている。
判例がある。原告はイタリアの会社、被告は、楽天市場。
【事案の概要】
本件は「Chupa Chups」(チュッパチャップス、商標登録第4296505号等。以下、本件商標という)に関する事案である。
商標を管理するネットショッピングモール「楽天市場」に対し、同ショッピングモールにおいて、本件商標を付した商品が展示・販売されていることは、本件商標権などの侵害であるとして、差し止めと損害賠償を求めた事案である。
争いのポイントは、『自らは直接販売の主体とならない楽天が、商標権侵害等の主体といえるか』という点である。
第一審、原審(東京地判平成22年8月31日)は、商品の販売の主体は出店者である。
楽天は、本件商標権侵害等の主体ではないとして、原告の負けを宣告(請求の棄却)した。
第二審、条件付きで、楽天(被告)にも責任が生ずる、と判示した。その条件としては、3つがある。
第1。運営者が、出品者から利用料を受領し利益を得て、そして、運営システムの管理・支配を行っていること。
第2。運営者が出品者による商標権侵害を知っていたか知ることが出来たこと。
第3。侵害の事実を知ってから、合理的時間内に、侵害内容のウェブページを削除しなかったこと。
また、商標は私たちユーザーにも大きな影響がある。ことは、権利者と侵害者の問題では済まないのである。
つまり、商標を信頼しその品質を有する商品を選んだのである。
ところが、その製品自体が全く異なるものであれば、我々ユーザーは何を手がかりに選択して良いか分からなくなる。
ここが、知財の中でも、商標が特許などと大きく異なるところである。
選択の際ユーザーは、製品のトレードマークと共に、楽天の看板をも大きな判断材料にしている。
判示された結論は妥当である。
●筆者プロフィール/西郷義美
1969年 大同大学工学部機械工学科卒業
1969年-1975年 Omark Japan Inc.(米国日本支社)
1975年-1977年 祐川国際特許事務所
1976年10月 西郷国際特許事務所を創設、現在に至る。
《公 職》
2008年4月-2009年3月
弁理士会副会長(国際活動部門総監)
《資 格》
1975年 弁理士国家試験合格(登録第8005号)
2003年 特定侵害訴訟代理試験合格、訴訟代理資格登録。
《著 作》
『サービスマーク入門』(商標関連書籍/発明協会刊)
『「知財 IQ」をみがけ』(特許関連書籍/日刊工業新聞社刊)
●西郷国際特許事務所(創業1975年)
所長 弁理士/西郷義美 副所長 技術/西郷竹義
行政書士/西郷義光
弁護士・弁理士 西郷直子(顧問)
事務所員 他7名(全10名)
〈お茶の水事務所〉
東京都千代田区神田小川町2-8 西郷特許ビル
TEL 03-3292-4411 FAX 03-3292-4414
〈吉祥寺事務所〉
東京都武蔵野市吉祥寺東町3-23-3
TEL 0422-21-0426 FAX 0422-21-8735
Eメール:saipat@da2.so-net.ne.jp
saigohpat@saigoh.com
URL:http://www.saigoh.com/
◆2016年11-12月合併号の記事より◆
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