コラム – 日本版デュアルシステムの軌跡
日本版デュアルシステムの軌跡
デュアルシステムについて追い続けてきた本コーナーだが、そもそもデュアルシステムとはいつ登場したのか?
今日に至るまでの流れを追った。
日本版デュアルシステム史
1990年代後半以降~
・長引く不況による就職氷河期が続き、フリーター・ニートの増加が社会問題となる。
2002年
・15歳から24歳までの失業率が13.2%、フリーターの数も200万に達し過去最悪の数値に。
・フリーター・ニート対策の一環として、「東京版デュアルシステム」が、東京都産業教育審議会のなかで答申される。
2003年
6月…文部科学省 厚生労働省等第4省庁による「若者自立・挑戦プラン」策定。その一貫として、「日本版デュアルシステム」の導入が検討される。
12月…「日本版デュアルシステム協議会」組織。
2004年
2月…専門高校を中心に、学校での講義等による職業教育と、数週間あるいは数カ月の企業での就業を組み合わせるという、今日のデュアルシステムの原形となる方式が提案される。
・日本版デュアルシステムのモデル指定地域が選定。指定期間3年の「日本版デュアルシステム」が全国で試験導入される。
この後、順次専門高校等などで広がりを見せる。
バブル崩壊以降、過去最悪となっていた若者の失業対策として発案されたのがデュアルシステムの始まりである。
その参考とされたのは、ドイツを発祥とする10代~20代の若年層をターゲットとした同名の職業訓練システム。これを日本社会に馴染み深いようにと変えたのが「日本版デュアルシステム」だ。
現在は我々が特集している専門高校などで実施されている在校生向けのほか、求職者へ向けたコースなどがある。
●在専門高校等の生徒へ向けたコース→問合先:各学校、または教育委員会など。
※各実施高校のカリキュラムとして採用されている。実施高校ごとに内容は異なる
●求職者に向けたコース→問合先:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 ※受講対象者は再就職を希望する概ね40歳未満の求職者
・2年コース(専門課程活用型)…ポリテクカレッジで行う実技・学科と企業で行う実習を組み合わせたコース。基礎から高度な技能・技術までを体系的に習得できる。
・6カ月コース(短期課程活用型)…ポリテクセンターで実施する職業訓練と企業等に委託して実施する実習を組み合わせたコース。より短期間で専門的技能・技術を取得することができる。
デュアルシステムの4つのカリキュラム
今日、デュアルシステムは工業・商業学校を中心に全国で広く実施されているが、その具体的なカリキュラムは実施校により様々だ。
だがあえて大別するならば、デュアルシステム黎明期に登場した4タイプのいずれかに分類できよう。
①「六郷工科高校モデル」(東京都):デュアルシステム学科を新設。10日~2カ月の長期に渡る企業実習を3年間かけて行う。
②「桑名工業高校モデル」(三重県):地元商工会議所と連携を取り、週1度程度の短期間のインターンシップを2年次のみ行う。
③「半田商業高校モデル」(愛知県):1と2の中間とも言うべき内容。1カ月弱の就労訓練を、2年・3年次に行う。
④「職場体験学習モデル」:1、2カ所の企業にて、数日間の実習を実施。
【本稿執筆にあたっての参考資料】
・専門高校等における「日本版デュアルシステム」の推進に向けて ―実務と教育が連結した新しい人材育成システム推進のための政策提言― 平成16年2月20日 専門高校等における「日本版デュアルシステム」に関する調査研究協力者会議 報告書
・これからの職業教育の在り方について ―高校におけるデュアルシステムの実現に向けて― 答申 平成14年9月11日 第20期東京都産業教育審議会
◆2016年11-12月合併号の記事より◆
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