事業承継をスムーズにする“ファミリーミーティング”とは
イマドキのビジネスはだいたいそんな感じだ! その30
事業承継をスムーズにする“ファミリーミーティング”とは
お家騒動があっちこっちで勃発している。
ちょっと話題になったところでも大塚家具にロッテ、大戸屋、出光興産、クックパッド、セブン&アイホールディングス、セコムなど一流と呼ばれる会社で、ボッコボッコと吹き出している。今年は21世紀に入って最大の収穫年と言えるだろう。
きっと後世の歴史家からは「お家騒動・戦国時代の幕開け」と記されるだろう。でもって個別のお家騒動には「大塚かぐや姫の乱」とか、「出光海賊の戦い」とか固有名称がつくと思うので、後世の受験生たちは、しっかり学んでおくように!
それにしても軌を一にするように、こうも騒動が続くのはなぜだろう。
推察するに、一つは、会社が何か夢を共有する人が集まって新しい価値を生み出す組織体ではなく、モノ化して単に金を生む手段となってしまったことだ。
昔からお家騒動はあった。ただかつてのお家騒動は、親子兄弟姉妹、親戚一同の間でゴタゴタしていた感がある。それが近年の場合、投資ファンドやコンサルファームなどが絡んで、より厄介なものになっている、気がする。
冒頭列挙したお家騒動企業群は、全部とは言わないけれども、多分にそういった創業家筋以外からの入れ知恵があったんじゃないかと、ワタシの灰色の脳が推察している。もちろんイマドキの企業は、外部の専門家の知恵を使わないと回っていかない。それは分かるが、だからこそそこに創業家が付け込まれたというと言い過ぎだろうか。
ではそういったお家騒動をどうしたら避けることができるか?
それは一にも二にも納得のいく話し合いをすることだ。でもそれができないんだなぁ〜にんげんだもの。
こういったお家騒動の多くが事業承継に始まることが多い。もとより大企業、有名企業でなくても事業承継は難しい。どんなに小さな零細企業でも事業を渡す側と受ける側では葛藤がある。溝がある。
原因の一つには渡す先代が後継者に対して「未熟感」を感じることにある。特に創業社長には強い。「本気で社長をやりたいなら、力ずくで取りに来い!」とか「まだまだ社長の器になっていない」とか言ってさ。
しかし、「こういう発言が出ること自体、後継者育成をしてこなかった証左」と語るのは、自ら後継社長として会社を経営したこともある事業承継コンサルタントの二条彪さん。
二条さんは「揉めるのは先代が準備をしていないから」という。事業承継は商品の売買とは違う。商品スペックが一致したから、商談成立、とはいかないのだ。
社長としての知識や意識、知恵、胆力、リーダーシップ、人間性などそれなりに備わるまでにはそれなりの時間がかかる。二条さんによれば10年は要るという。もちろん準備ができていればもっと早くなるが、先代もそのタイミングで譲るんだという意識をもっていないといけない。つまり先代も後継者もそういう意識を共有してこなかったから、揉めるのだ。
イタリアやスイスなどヨーロッパの伝統のある中小企業では、定期的に創業家の親族が集まって会社や事業について話し合う「ファミリーミーティング」を行っている。ファミリーミーティングで発言した内容は議事録として残されて、あとで「言った言わない」のトラブルを回避できるようになっている。
ファミリーミーティングには、経営に直接関わっていない兄弟やその配偶者など一族郎党が参加して、意見を述べていく。事業承継はいうまでもなくお家の一大事だ。どこでどんな人間が口を出すかもしれない。その時を想定して最大の“対話”を図っておくのだ。
で、すわ! 事業承継となった時に、関係者が得心して事業を渡すことができるのである。で問題はこのファミリーミーティングを誰が仕切るかということだ。先代社長や一族の長老が妥当だと思われるが、やはり身内以外の第三者がいい。
二条さんは「中小企業は地元金融機関などの支店長などがいい」という。事業の継続性を考慮し、より客観的に診ることができるからだ。準備をしていてもファミリーミーティングは結構揉める。そんな時「そんなに揉めるような会社なら融資を引き上げるぞ」と睨みを効かすこともできるからだ。
日本の事業承継にファミリーミーティングをもっと取り入れたい!
イマドキのビジネスはだいたいそんな感じだ。