経営者のお金の悩みを解決する「フィンテック」
経営者のお金の悩みを解決する「フィンテック」
◆文:一村明博 (株式会社ZUU)
「金融(Finance)」と「テクノロジー(Technology)」を組み合わせたFinTech(フィンテック)。前回は、その幅広い分野の中でも、企業・法人向けの財務管理、会計ソフト・サービスを紹介しました。
取り上げたfreee(フリー)の「クラウド会計ソフトfreee」、マネーフォワードの「MFクラウド会計」は既に国内でかなりのユーザーを獲得しており、読者の中にも利用していらっしゃる方がいることでしょう。
引き続きこれらについて採り上げますが、前回とは違った視点から考察したいと思います。実は、こうしたサービスが、中小企業経営者を最も悩ませている課題を解決するかもしれないという話です。
ビッグデータが解決する問題
事業歴が浅い、または規模が小さい中小企業の悩みで大きなものといえば、資金繰りでしょう。金融機関に融資を申請しても、金融機関側に情報が少ないため、与信の分析や判断が難しかったわけです。
ここで、財務・会計管理ソフトに入力されたデータがカギとなります。これは企業の過去の業績と今の経営状態を表すもので、金融機関が与信を判定するための材料になるのです。
たしかに、単独の企業データを見ただけでは分からないかもしれませんが、財務・会計管理ソフトを利用している企業は数多くあり、いわゆる「ビッグデータ」が蓄積されつつあります。
財務・会計管理ソフト・サービスはこれまで、過去の企業活動を記録、管理するツールとして、主にコスト削減目的で使われてきましたが、今後はこのビッグデータを活用しながら、企業が入力したデータをもとに経営状態を分析し、将来を予測することができれば、金融機関が融資できるかどうかの判断ができるようになるでしょう。
海外ではこうしたサービスが出てきています。米国のレンディングサービス「カバージ」は、中小EC事業者に対して、サイト内の売れ行きや集客力を自動的に審査する仕組みを提供しています。
日本でも、前回紹介したfreeeが昨年12月、三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行など11の銀行との協業を発表しています。企業が入力した会計データを銀行が閲覧できるようにする取り組みで、与信判断につながると期待されています(企業が許可しなければ、銀行はデータを見ることができません)。
同様にマネーフォワードも、ネット銀行や地方銀行などと提携し、MFクラウドを活用したファイナンスサービスの開発を進めています。
財務・会計管理ソフトを提供していた企業が、与信判定プラットフォーム、または保証会社、さらにいえばレンダーにもなれるかもしれないわけです。
これは財務・会計管理ソフトとは異なりますが、クラウドファンディングやP2Pレンディングといったフィンテックサービスにも、資金調達の問題を解決するという意味で期待が集まります。
こうしたサービスも、実はビッグデータを活用して借り手の信用力を判断しています。
今回まで2回にわたって「企業経営」に役立つフィンテックのサービスとして、財務・会計管理ソフト・サービスについて紹介してきました。
次回は、「企業経営」に限らず、しかし経営者である読者の皆さんの役に立つフィンテックのアプリやサービスを紹介したいと思います。
筆者プロフィール/一村 明博
東京都出身。成蹊大学法学部卒業。1993年、大和証券入社。富裕層や中小企業オーナーを主な顧客とする個人営業に従事し、常に全国トップクラスの営業成績を残す。入社3年目には全国NO.1を獲得。その後、2001年に松井証券入社。2004年、最年少(当時)で同社営業推進部長、そして2006年には同社取締役に就任。
高度かつ専門的な知識が必要とされる金融業界において20年以上にわたり500人以上の部下を育てた人材育成のプロフェッショナル。
〈お問い合わせ先〉 info@zuuonline.com
株式会社ZUU
東京都目黒区青葉台3-6-28 住友不動産青葉台タワー9F
◆2016年8月号の記事より◆
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