オビ コラム

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「デジタルデータの保存について」

◆ものづくり.com 坂東大輔(坂東技術士事務所)

 

 

Q.熊本県の装置設計受託会社で、社員30名のうち20名が設計者で一部シミュレーション業務も受けています。

今回の震災で事務所やCAD端末には相当の被害がありましたが、外付けHDDに保管していたバックアップデータが無事だったのは不幸中の幸いで、これで過去の仕事を活かして業務が続けられます。しかしながら、一つ間違うとデータ保管庫もろとも破壊されてしまうところでした。

バックアップ方法には多くの種類があり、2年前に検討した時に現在の方法に落ち着いているのですが、環境も日々進歩しているため、クラウドサーバーを含めてこれを機会に再検討したいと思います。

主なバックアップ方法と長所短所、そして現時点で一番のおススメがありましたらご教授ください。

 

 

A.情報工学部門(IT)の技術士です。データベースやストレージ装置(HDD、NAS、SANなど)に関する業務経験があります。まずは主なバックアップ方法と長所短所について。

バックアップにも色々と運用形態があるのですが、ここでは便宜的に以下のように分類します(以下はあくまでも一例です。全てを網羅している訳ではありません)。

 

①企業内にバックアップ データを保管する。

バックアップしたデータを企業の内部(自社の社員)で保管します。保管先として、主に以下の媒体が考えられます。

 

①─1.共有ファイルサーバ (LAN上で共用しているコンピューター内のディスク領域):共用のコンピューターに共有フォルダなどを設けて、そこにバックアップデータを保管していく。

【長所】導入が比較的容易である(共有フォルダを設けるだけ)。

【短所】天変地異などで故障したらデータ消失の可能性がある。

 

①─2.NAS(LAN接続のハードディスク):LAN接続できるハードディスクに、バックアップデータを保管していく。

【長所】一部ディスクの故障ならばデータ復旧できる可能性がある(RAIDによる冗長構成の場合)。

【短所】天変地異などで故障したらデータ消失の可能性がある。

 

①─3.リムーバブルメディア(USBメモリ、SDカード、光ディスク等といった小型の記憶媒体):抜き差しが容易な小型の記憶媒体に、バックアップデータを保管していく。

【長所】導入が比較的容易である(メディアをPCに抜き差しするだけ)。

【短所】小型で持ち運び可能である故に、媒体を紛失しやすい。データ保存可能サイズが小さい。どのデータがどの媒体に保管されているか調べ難い。 ②企業外にバックアップ データを保管する。

 

 

②バックアップしたデータを企業の外部(委託先の事業者)で保管します。

保管先として、主に以下の媒体が考えられます。

 

②─1.オンラインストレージ(DropBoxを代表とするクラウドサービス):インターネット上のサーバーにバックアップデータをアップロードし、保管していく。

【長所】場所や媒体などの物理的な制約を受けず、インターネットさえあれば運用可能である。バックアップのみならず、ファイル共有などの用途でも使える。

【短所】クラウド事業者がサービス停止や変更をする可能性がある。クラウド事業者の過失でデータ消失のリスクも0ではない。現状では、データ保存可能サイズに比してサービス代金が割高である。

 

②─2.ディザスタリカバリサービス(法人向けの商用サービス):IT企業が提供しているディザスタリカバリサービスを導入する。

【長所】IT企業による専門サービスであることから、災害対策(BCP)としては一番行き届いている。

【短所】IT企業がサービス停止や変更をする可能性がある。IT企業の過失でデータ消失のリスクも0ではない。大企業向けのサービスが多く、導入や運用維持のコストは高めである。

 

 

次に、現時点で一番のおススメについてご紹介します。

バックアップの運用も「ピンからキリまで」の世界です。制約条件(前提条件)となってくるのは、以下のように数多くの項目があります。

費用、導入のハードル、バックアップ運用の容易さ、障害発生時の堅牢性、対象とするデータの重要性や機密性やアクセス頻度…等。よって、ベストな解決手段は上記の要因に依存するため、紋切り型に「これが常に一番」とは言いづらいです。

強いて言うならば、御社の規模くらいの企業様でしたら、まずは、「②─1.オンラインストレージ(DropBoxを代表とするクラウドサービス)」を試しに導入してみて、本格的な災害対策(BCP)システムを導入したくなった(当然、それに見合った予算が準備できた)時点で、「②─2.ディザスタリカバリサービス(法人向けの商用サービス)」の検討を行うというのも一案かと存じます。

 

以上、ご参考になれば幸いです。

 

 

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mono_com_bandou●筆者プロフィール

坂東大輔(ばんどう・だいすけ)…1978年生まれ。神戸大学経営学部卒業で、信州大学大学院工学系研究科修士課程情報工学専攻修了という、異色の「文系出身の工学修士」。2002年4月に、株式会社日立ソリューションズに入社。プログラム開発(C,Java,PL/SQLなど)、情報セキュリティ対策、ローカライズ、オフショア開発、UX向上、テクニカルライティング(英文マニュアル執筆)などを含む、12年間のSE経験(米国での海外勤務を含む)。2014年3月に、ITベンチャーの取締役CTO(Chief Technology Officer;最高技術責任者)に就任。2015年2月「坂東技術士事務所」を開設。

 

【問い合わせ先】

daisuke@bando-ipeo.com

 

 

 

2016年7月号の記事より
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