中小企業経営に役立つフィンテック
中小企業経営に役立つフィンテック
◆文:一村明博 (株式会社ZUU)
「金融(Finance)」と「テクノロジー(Technology)」を組み合わせた造語、フィンテック(FinTech)。前回はビットコインやロボアドなど各分野を紹介し、銀行などがフィンテックに取り組む理由をご説明しました。
今回はフィンテックの中でも、企業経営に役立つ分野について見ていきたいと思います。
フィンテックの身近な分野としては「家計簿アプリ」を代表とする〝to C〟(個人向け)のサービスがよく取り上げられますが、最近では企業・法人向けの財務管理、会計サービスなど〝to B〟(企業向け)も充実しつつあります。
そもそもこうしたお金の管理は企業活動において必須です。これまで、税理士や会計士などの専門家にこの管理をお願いすることが一般的でしたが、起業したての経営者や個人事業主などにとってはこれらのコストは重くのしかかります。そこでこのコストを抑えるため、フィンテックを活用したサービスを利用する訳です。
では、フィンテックを活用した会計サービスでできることにはどんなものがあるでしょうか。まず、銀行口座やクレジットカード、ECサイトなどからの入出金情報を自動で取得することができ、さらに仕訳までしてくれます。
そのデータを元に見積書や請求書などの作成まで簡単にできてしまいます。取得したデータは手元にあるパソコンではなくインターネット上に保存されるため、パソコンが故障したり、買い換えたりしても困ることはありません。スマホやタブレットからもこのサービスを利用することができます。
代表的なものとしてはfreee(フリー)の「クラウド会計ソフトfreee」が挙げられます。シェアナンバーワンだけあって、分かりやすい画面設計と評価されているようです。レシートをスマホで撮影することで取引を入力してくれる機能もあります。企業向けだけでなく個人事業主向けプランもいち早く展開していました。
これに対抗するのはマネーフォワードの「MFクラウド会計」でしょうか。個人向けには「MFクラウド確定申告」というサービスも展開しています。クラウドソーシングなどさまざまなサービスとも連携し、複雑な取引のデータも自動で取得してくれます。利用料が比較的安めなことも支持されている要因の一つでしょう。
以前はソフトを手元のパソコンにインストールする必要のあった「弥生会計」も2015年7月から、「オンライン」シリーズの提供を始めています。ちなみに海外では米国のFRESHBOOKS(フレッシュブックス)、Intuite(イントゥイット)、ニュージーランドのXero(ゼロ)などが広く利用されているようです。
これらは導入コストが低く、簿記や会計の知識がなくても使える設計、UI(ユーザーインターフェース)になっていることが特徴ですが、従来の簿記・会計に慣れた人にとっては逆に、使いにくいといった弊害もあるようです。
今回挙げた以外にもたくさんのサービスがあります。使いやすいと感じる部分は人それぞれですから、無料期間などを上手に活用して様々なサービスを試してみるとよいでしょう。
これらのフィンテック企業は今後、税理士や会計士といった専門家との連携に力を入れると同時に、金融機関などとも連携しながらサービスの拡大を目指すはずです。なぜなら、これらのサービスは利用者が増えれば増えるほどたくさんのデータが集まり、集まったデータを利用してさらにサービスのレベルが向上する、という特徴を持っているからです。
筆者プロフィール/一村 明博
東京都出身。成蹊大学法学部卒業。1993年、大和証券入社。富裕層や中小企業オーナーを主な顧客とする個人営業に従事し、常に全国トップクラスの営業成績を残す。入社3年目には全国NO.1を獲得。その後、2001年に松井証券入社。2004年、最年少(当時)で同社営業推進部長、そして2006年には同社取締役に就任。
高度かつ専門的な知識が必要とされる金融業界において20年以上にわたり500人以上の部下を育てた人材育成のプロフェッショナル。
〈お問い合わせ先〉 info@zuuonline.com
株式会社ZUU
東京都目黒区青葉台3-6-28 住友不動産青葉台タワー9F
◆2016年7月号の記事より◆
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