obi2_column

〈シリーズ〉風評被害対策 第11回

社長が必ず知っておくべきネットの風評対策「近大マグロの誤報から学ぶ拡散のメカニズム」

 

カイシャの病院・ソルナ株式会社

 

ネットの監視サービスや風評対策総合コンサルティングを行う『カイシャの病院』として、中小企業から上場企業まで多くのクライアントのネットトラブルに対応。書かれたものへの対処法だけでなく、「今後いかに書かれにくい企業」としていくか、そのための様々なサービスにも力を入れており、さながら「根治治療」を掲げる専門医のようだと好評を得ている。六本木ヒルズにて開業中。

 

太陽と月をモチーフにしたソルナ㈱のロゴ

太陽と月をモチーフにしたソルナ㈱のロゴ

 

「近大マグロ」が絶滅した?

世界初の完全人工養殖を実現させた近畿大学水産研究所のクロマグロ、通称「近大マグロ」は、実際に食べることのできる飲食店が連日賑わうなど、もはやブランドの1つといえるほどの知名度となっています。

ところが、2016年2月、インターネットで「近大マグロが絶滅した」というニュースがSNSを中心に駆け巡りました。このニュースを受け、多くの人が研究の失敗を、また近大マグロが食べられなくなることを嘆いたのですが……。

 

マグロが絶滅は誤報だった

実はこの情報は真実が正しく伝わっていない誤報だということが後に分かりました。正しくは、近大マグロが絶滅した訳ではなく、国内にいくつかある研究施設の1つである富山実験場で、充分な研究データが得られたことと、施設の維持に莫大なコストがかかるため、この富山実験場での研究はいったん打ち切りとなり、それに伴い残っていたマグロもすべて死んだという内容のニュースでした。

しかしこれを最初に報道した北日本放送のニュースサイトが、見出しとして「近大マグロが全滅」と書いたことにより、これを見た多くの人が「近大が研究しているマグロが全て死んでしまった」のだと勘違いしてしまいました。後日、他のニュースサイトで近大マグロ全滅報道は一部誤りといった記事が出たり、近畿大学が公式フェイスブックでコメントをアップするなどしたにもかかわらず、混乱は広がりました。

この誤報の発信源となった北日本放送のニュースサイトは、指摘を受けて見出しを訂正しています。しかし、誤報が広まった勢いと同じ勢いで訂正内容が拡散されることはありませんでした。おそらく今現在も、近大マグロは絶滅してしまったと思っている人は大勢いるのではないかと思われます。

さらにこの誤報に触れて、「絶滅するなんてなにか悪い病気に感染したのではないか、そうであれば近大マグロは食べても大丈夫なのか?」と投稿する人まで出てきました。こうなってしまうと研究している近畿大学水産研究所はもちろんのこと、近大マグロを提供している全国の飲食店、そして近大マグロに関わっている多くの人たちに風評被害が生じてしまいます。

 

ソルナ11

 

なぜ誤報は驚異的なスピードで拡散してしまうのか

誤報が驚異的なスピードで拡散してしまう理由としては、現代のネット事情が深く関わっているといえます。今回、近大マグロ絶滅の誤報を拡散させた2つの主役は「まとめサイト」と「SNS」です。

情報の海であるインターネット上の膨大な量の情報を適切に集め、精査し、取捨選択することは大変なことです。スキルもさることながら、多くの時間が必要になり、大多数の人にとって日常的な情報の精査は難しい現実があります。

そこでNAVERをはじめとした「まとめサイト」の出番となります。インターネット上の情報を集め、取捨選択することに特化した「まとめサイト」はキュレーションサイトとも呼ばれ、今話題のニュースや事柄を分かりやすく並べてくれていて、手軽に現在のトレンドを知ることができるのです。サイトの運営は広告収入などの実益につながることもあり、まとめサイトが隆盛を極めています。

もう1つの主役は、ツイッターやフェイスブックなどのSNSです。特に「情報を共有」する機能は拡散を加速させています。SNSが浸透する以前でもブログや個人サイトや掲示板への書き込みなどによって「情報の発信」は行われていましたが、情報が間違っていた場合は匿名であっても自分がその発信源としての認識が比較的有り、発信することにそれなりに慎重でした。

しかしツイッターのリツイート機能などは他の者の発言を自分とつながりのある人(フォロワー)たちに対してそのまま紹介するため、自分自身が発信源という認識は低くなります。また、スマホなどのモバイル端末から片手で数十秒で投稿できる手軽さもSNSの特徴であり、拡散の加速を助けています。

こうして、手軽に見たまとめサイトで近大マグロが全滅というセンセーショナルな記事を目にした人たちが、手軽にSNSで友達らと共有し、さらにそれを見た多くの人が手軽にSNSで共有することにより、誤報は爆発的な勢いで広まったことになります。

 

拡散スピードが飛躍的に速くなっている

今回の近大マグロの誤報でも、ニュースの内容をよく読んだ結果、元のニュースの見出しがおかしいことに気付き、その旨を投稿している人たちも一部いました。それでも爆発的な誤報の拡散の前には焼け石に水状態でした。

1つの小さなニュースが、じわじわと学校や会社や地域などのコミュニティーの中で口コミで広がるというのは昔からありましたが、インターネットが登場し、個人サイトやブログ、掲示版などにより広がるスピードは飛躍的に速くなりました。

そして現在では、あるニュースをまずまとめサイトが取り上げ、それを見た人たちがSNSで共有し合います。結果、そのニュースはネズミ算式に拡散し、わずか1日から1日半で全国規模に広まってしまうというところまでになりました。

ニュースをまとめサイトでチェックする場合は、見出しやさわりの部分だけを流し読みして、情報のソースを精査することなく安易にSNSで拡散させてしまう、ということになりがちなのではないでしょうか。また、まとめサイトは個人がまとめたものが多く、情報の信ぴょう性や、情報に対する責任感が希薄であることも否めません。

 

まとめサイト×SNSの危険性

この「まとめサイト」×「SNS」という組み合わせによる爆発的な拡散は、情報に対する信頼性を保証する意識が低いまとめサイトと、情報を発信しているという意識が低いSNSという側面を考えると、情報拡散のメカニズムとしては非常に危ういものであると考えられます。

災害やテロなどの重大な出来事が起こった際には、デマなどの誤報が広まることは歴史的にみて防ぎようのないことであるのは否めません。しかし、そういったデマや誤報が「まとめサイト」×「SNS」により爆発的に拡散される現実をどう受け止めるべきでしょうか。

一個人や一企業であっても、その個人や企業が受ける精神的・社会的ダメージは計り知れないのです。その度ごとに風評被害が簡単に起きてしまうことは許されることではないのです。

 

被害を最小限にするために

拡散を拡大させるまとめサイトやSNSはいたるところに「気軽さ」が潜んでいるため衰退どころか、さらに「気軽に」できる新しいサービスが次々と出てくるでしょう。

風評被害を最小限に抑えるためのポイントは2つあります。1つは早期発見です。自社に関する誤報が流れたらすぐに把握できる監視サービスを利用することをおすすめします。ニュースサイトだけであればGoogleアラートという無料サービスを利用する方法もあります。

もう1つは情報発信です。間違いであれば正しい情報を発信することです。マスコミへの情報提供といったパブリシティ活動が効果的です。ネットのことをネットで完結しようとせず、リアルな広報活動で対応することも有効な対策といえます。

 

□「社名+評判」と検索すると悪評が書かれたサイトが現れる

□転職口コミサイトへ悪評が書かれている

□サービスや商品に関して2chなどへの書き込みが増えている

 

相談・調査は無料で実施します。

初期症状であれば自社で解決が可能です。

 

obi2_column

 

カイシャの病院・ソルナ株式会社

フリーダイヤル0120-934-515

http://www.soluna.co.jp/

東京都港区六本木 6-2-31 六本木ヒルズノースタワー6F

本社エントランス

本社エントランス

 

◆2016年6月号の記事より◆

WEBでは公開されていない記事や情報満載の雑誌版は毎号500円!

雑誌版の購入はこちらから