obi2_column
【特別コラム】

ふるさと創生について考える〈後編〉

 
・文/池田文夫(福島県伊達市出身)
 
現在の日本は少子高齢化や東京一極集中化、地方の過疎化など諸問題を抱える中、地方創生に取り組んでいる地方自治体、企業、大学、金融が一体となり、官民連携で成長戦略を推進しております。
前回の「現状認識と今後の具体策」に引き続き、今回も詳しく見ていきましょう。
 

●連携(産学官の密なる連携戦略)

1:金融

東邦銀行は「地方サポートチーム」を創設し約100名のサポート担当を配置し、自治体の「地方版総合戦略」の策定および円滑な施策実施について、積極的に参画することで地域活性化に貢献することになりました。重要なのはまず「動く」ことだと思います。
 
2:大学

福島大学の「ふくしまの未来を担う地域循環型人材育成の展開」事業が文科省の「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」に選定されました。
また「うつくしまふくしま未来支援センター」を立ち上げ、原発被災地の大学として福島の復興と創生に取り組んでおります。是非地元のリーダーとなる学生が数多く育つことを期待しております。
 
3:空港

福島空港は海外からのインバウンド拠点と思われがちですが、2014年度国際線乗降客数は何と6098人のみ。何と悲惨な現況でしょう。国内線と合わせても25万4199人です。これでは赤字の垂れ流し。県民の税金還元がありません。経営改善、事業再生支援は東邦銀行の使命ともいえます。県は「ウルトラマン空港」に変えて利用客増強を狙っているようでありますが、国際的に見れば「ウルトラマン・ゴジラ空港」に愛称変更、さらにキャラクターをロボット化した「ウルトラマン・ゴジラロボット空港」にし、世界初のロボット空港にしましょう。近くには原子力発電所があり、復旧作業にはロボットが活躍するハズです。
 
しかし、開発・設備投資資金の捻出が問題となります。PFI(民間資金を活用した社会資本整備)が考えられます。関空はオリックスバンシ連合が44年契約2.2兆円、設備投資6割増です。仙台空港の運営権者は東急と前田建設工事に決定しております。企画・立案・提案・実践し、福島空港を「稼ぐ空港」にしましょう。
 
4:IT

農水省IT関連情報(農山漁村におけるIT活用事例等)を見ますと、福島県は1件もありません。大変残念なことです。伊達市はIT農業モデル都市宣言し、まず耕作放棄地を集約して大規模化。栽培では人工衛星やドローン(小型無人機)に加え、農場に設置したセンターで集めた気象情報や土壌データなどを分析。最適栽培を目指します。農業は農家の経験や技術に収穫量が左右されやすいので高齢者のナレッジが必要なのは言うまでもありません。福島大学の学生、教授は是非積極的に参画し、未来に繋がる技術を先進的に体験して頂きたいと思います。経済経営学類(旧経済学部)には地域経済政策コースがありますし、地域ブランド戦略研究所、災害復興研究所もあります。OBとして応援しますので一歩踏み出しましょう。IT企業の中ではAI(人工知能)も含めNECが一番先を行っております。
 
5:交通

福島─伊達─槻木を走る阿武隈急行(通称:阿武急)は売上約8億円、営業利益約1億円の赤字路線です。保原・梁川の人々は通勤通学に利用しておりますが、インバウンド客や歴女が乗っているのは見たことがありません。乗降客を増やす方法を考えなくてはいけません。
 
もう1つの集客拠点として「道の駅」が考えられます。4つの機能があり「休憩機能」「情報発信機能」「地域の連携機能」「防災拠点機能」です。2015年4月15日付で全国に1059カ所登録されており、福島県の道の駅は28カ所ですが伊達市は残念ながらゼロです。現在は規制緩和により、一般道でも地域振興施設の整備振興施設と休憩施設がより充実しており、間隔が10㎞以下でも特徴の違いがあれば承認されております。
 
千葉県南房総市、岐阜県高山市は8カ所ですし、岐阜県郡上市、和歌山県田辺市、山口県萩市は7カ所です。伊達市も5町合併しておりますのでそれぞれの旧町が特徴を出した道の駅を作ったらどうでしょうか。私は梁川町の生まれですので「伊達五十沢あんぽ柿」「伊達鶏」「阿武隈紅葉漬」を売りにした「道の駅 梁川」を作り毎月イベントを開催するのです。皆で考え「道の駅 梁川プロジェクト」を立ち上げましょう。
 
6:温泉

高湯温泉高湯温泉

福島県、実は「温泉王国」。2014年3月時点で全国の市町村別宿泊施設を持つ温泉地数調査の結果いわき市が断トツの42カ所でトップ、郡山市が24カ所で3位、福島市も7位に入る健闘です(新潟大学法学部長 田村秀教授/市町村別に数をまとめたものはこれまでなかった)。
温泉が復興からの後押しをする資源になりますが、残念ながら伊達市にはありません。隣の市との連携が重要になります。
 
「道の駅・つちゆ」は「土湯温泉郷」湯めぐりのターミナルです。土湯温泉は安達太良連峰を源泉とし、1400年以上の歴史を持つ温泉で、炭酸水素塩泉、単純泉、硫黄泉等、10種類以上の泉質があります。これほどの泉質を持つ源泉を持った湯泉は全国的にも珍しいそうです。さらに「土ゆっこ」「かじかの湯」「月の湯ぶじぇ」「下の湯」の足湯が楽しめます。
特筆すべきは福島市を代表する郷土玩具・土湯こけし発祥の地でもあります。日本三大こけしとは土湯系の他、遠刈田系、鳴子系があります。土湯はこけしの温泉街です。
 
土湯を北上しますと吾妻山連峰を源泉とする「高湯温泉」です。白布温泉、蔵王温泉と並んで奥州三大高湯と称されております。1933年全国の硫黄泉を調査した海軍病院の神林博士は「高湯の湯は全国一の有効温泉」と評価されました。2010年、東北初の「源泉かけ流し宣言」を発表しました。乳白色のお湯は肌がすべすべになり、女性に大人気です。
 

21_Furusato_column02_02

「寄らんしょ、来らんしょ、廻らんしょ、廻って酒など飲んでがんしょない〜♪」の飯坂温泉です。売りは共同浴場で9つ存在します。その中でも鯖湖湯は飯坂温泉発祥の湯とされ松尾芭蕉も浸かったとされております。鳴子温泉、秋保温泉と共に奥州三大名湯に数えられております。
 
飯坂温泉から摺上川を遡ること2㎞には共同浴場中、最も高温(46℃)の天王寺穴原湯があります。9カ所の共同浴場は全て源泉かけ流しであります。しかし飯坂温泉、1973年は約177万人で2009年は約81万人と半分以下に減少。旅館も150軒から47軒と7割弱減少しております。土湯温泉も東日本大震災以降16軒が11軒と3割強減少しております。どんな対策が考えられるのか抜本策が必要であります。

 

【最後に】

高度成長時代、地方から大都市へ、農業人口から都市人口へ民族移動が行われた結果、国民所得は上昇し、個人金融資本は1800兆を超え、社会保障は充実し、物質的には豊かになり世界でも類をみない成長国家になりました。一方、中央集権国家のもと、地方は画一的・没個性的・金太郎飴街づくりを行い、今はシャッター商店街になり、児童減少は学校統廃合を引き起こし、後継者・跡継ぎ不足で空き家は増え、整備されたカントリーロードでは一家に一台のマイカーが走っているのが現実です。ふるさと創生、地方活性化、地域振興は前々からの課題で、バブル期の、地方活性化のための「ふるさと創生1億円事業」は今はどうなっているのでしょうか。寄せては返す波の音、安倍内閣の「新3本の矢」でGDP600兆目標達成のための目玉として新観光戦略を打ち出します。地方創生担当大臣は次期首相候補の石破茂氏で、農林部会長には若手有望株の小泉進次郎氏が就任しております。外部環境は整っております。後は福島県福島市の自治体、東邦銀行、福島大学、商工会議所等の地元経済会、JTB等の旅行会社、JR東日本、阿武隈急行の交通会社、福島テレビ、福島民放等の通信マスコミ会社、JA伊達みらい等の潜在パワーをもつJA等と連携し、元気で明るい伊達市づくりに、若者のアイデアと老人のナレッジに期待するところであります。(了)

obi2_column

 

◆2016年4月号の記事より◆

WEBでは公開されていない記事や情報満載の雑誌版は毎号500円!

雑誌版の購入はこちらから