次世代の産業を担う【中小企業】初めて明かされる秘話
日本再生の鍵を探せ 企業x学校物語

西武信用金庫 落合寛司理事長 ‐ 同じ金融機関でも〝小〟にできて〝大〟にできないコトがある

 

 

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西武信用金庫 落合寛司理事長 同じ金融機関でもにできてにできないコトがある

◆取材・文:綿抜幹夫 /撮影:周鉄鷹

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総合コンサルバンキングを大看板に驚異の成長を続ける西武信用金庫 第9代理事長 落合寛司氏

「知恵も人もお金もドンドン貸します」

前期比で預金残高が48億円増、貸出金残高が376億円増。更に言うと純利益の額が57億円超。いずれも信金としては国内トップクラスである。西武信用金庫(本店・東京中野区)が叩き出した2012年度の業績だ。ちなみに前期も前々期比でそれぞれ約300億円増、約400億円増を果たしている。ここ十数年間の経済状況を鑑みるに、ほとんど奇跡に近い成長率と言っていいだろう。

とまれこの信金のどこにどんな秘密があって、これほどの業績を上げることができたか。そこで理事長の落合寛司氏(63歳)に詳しく話を聞いた。その結果、見えてきたのは〝変革期こそ原点に立ち返る〟──、これだ。

 

世界的変革から目を背けない

『西武信金は〝地域と住民、事業主〟を育てる協同組織です。併せて金融事業もやっています─』

落合氏とやり取りをしているうちに、筆者の頭にふと浮かんだフレーズである。言うまでもないが、あの経営の神さま・松下幸之助翁の名言、「松下は人をつくる会社です。併せて電気製品もつくっています」をもじったものだ。

といってもいきなりこれでは、筆者が何を言わんとしているか、読者には皆目見当もつくまい。ということで本稿は、氏が現下のマクロ情勢(世界経済の潮流)を、この国の金融界の一端を担う経営者のひとりとして、どう捉えているかという大きな視点からまずは話を始め、順々に的を絞る形で、核心に迫っていくこととしたい。

 

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「日本は今、世界的な変革にさらされている事実を直視しなければいけないと思いますよ。もはや世界経済の行方は、日・米・欧の先進国ではなく、中・印・アジアといった新興国が鍵を握っていますし、やがてこれに、アフリカ諸国が加わってくるのは間違いのないところです。我々がそのことから目を背け、旧態依然の職人然とした商売を続けていたら、日本の経済界、産業界はやがて、二進も三進もいかなくなると思いますね」(落合氏、以下同)

 

と聞くと、何を言ってやがんだい!と言う人がいるかも知れない。何だかんだ言ったって日本の技術力はヤツらよりずっと上だい!と反論する向きもあろう。しかし氏は、これに対してズバリこう切り込んだ。

 

「皆さんが言うように、日本はたいへん高度な技術力を持っています。ノウハウも豊富です。でもその技術力やノウハウを駆使して、良いモノさえ作っていれば売れるという時代では、もうすでにないということですよ。だって今や、世界の工場としてだけではなく、市場としても、新興国の人たちが明らかにマジョリティ(多数派)を占めようとしているじゃないですか。

将来はともかく、彼らが今求めているのは、高価で高品質のモノではなく、安くてしかも、それなりに品質をキープした良いモノでしょう。これが世界市場の大勢であることに、もはや疑いの余地はありません」

 

なるほど確かにその通りだ。かつてのウォルマートや、昨今のユニクロの大躍進などは、まさにその大勢を掴んだことによる成果と言っていい。

 

「とはいえですね、どんなに高くてもいいからもっと良いモノが欲しいという富裕層も、少ないながら現に存在します。その意味では、優れた技術力を持ち、良いモノさえつくっていれば何とかなる、と楽観視する気持ちも分からないではありません。

しかしそれならそれで、自分のところのどういった技術がどう優れており、他とどう違うのかを、誰にも分かるようにきちんと〝見える化〟してやる必要があります。更にはどう市場戦略を立てて、どうPRするかなど、経営という視点から考えると、課題は山積と言っていいのに、悲しいかなほとんどのケースで、それがまったくできていないのが実情ですよ」

 

ここまで読んで、耳の痛い思いをしている諸氏、とりわけモノづくりを生業としている中小零細企業の経営者は、おそらく少なくあるまい。

 

 

地銀やメガバンクとはそもそも目の向け先が違う

ではその耳の痛い人たちは今、何を考え、どう行動すべきか。

「あまり口幅ったいことを言うつもりはありませんが、変革期には必ず、2種類の人たちが現れるんですね。変革をチャンスにする人たちと、ピンチにする人たちです。チャンスにした人たちには共通点が一つありましてね、みんな原点に立ち返っているという事実です。

例えば織田信長ですが、彼はそれまでの槍や刀に代えて、鉄砲を大量に装備するなどし、武人の原点であり、本分でもある戦の仕方を飛躍的に発展させたばかりか、兵士たちの論功行賞も徹底しています。今で言うところの成果主義ですね。一方では楽市楽座を推進するなど、政治家としても優れた政策を数多く打ち出し、経済の活性化に努めています。

結果として天下布武はなりませんでしたが、あの群雄割拠の時代を見事チャンスに変えた、代表格のひとりだと思いますよ。要するに、経営者は変革期こそあれこれ迷わず経営の原点に立ち返ること。これが肝要だと私は思っています。少々手前味噌になりますが、現に私どもも、そうすることでこれまで成功してきましたしね」

 

金融機関における経営の原点とは何か。

「言うまでもありませんが、使う予定のないお金を持っている人たちからそのお金を預かり、事業や教育など、何らかの資金を必要としている人たちにお金を貸し出すことです。この貸出残高というのが一般の企業でいう売上高で、昨年は376億円増えて、総額としては現在のところ1兆円近くに上っています。ちなみに不良債権比率はというと、そのうち約2.8%。この比率は、全国の信金はもちろん、メガバンクも含めた金融機関全体を見渡しても、トップクラスの低さですよ」

 

ついでながら預金残高も昨年は前年比548億円増となっており、総額が約1兆4,000億円。これはP/H残高(パーヘッド=常勤役職員1人あたりの残高。経営効率を示す指標)でいうと13億円弱となり、こちらもトップクラスの数値と言っていい。早い話が、昨今世間を騒がせている某メガバンクや、来春にもどこそこと経営統合すると発表した某地銀とは、比較にならないほど健全経営に徹した金融機関というわけだ。

 

その秘訣は一体どこにあるか。今少し掘り下げてみよう。

「大は小を兼ねると言いますが、私どもの世界は必ずしもそうではありません。むしろ小にできて大にはできないということの方が多いんですよ。というのも、私どもは地域や住民、中小の事業主らの相互扶助を目的に設立された協同組織ですが、地銀やメガバンクは、投資家の利益のためにつくられた株式会社だからです。分かり易く言えば、一方は地域や住民、事業主を守り育てる金融機関であり、一方は、株主に利益をもたらすことを命題としている金融機関だということです。つまり目を向けている先が、そもそも違うんですよ」

 

 

経営のプロとしてお客さまの本部スタッフに成りきる

目の向け先が違えば、当然のことながら職員の仕事ぶりも違ってくる。

「例えば、ある企業から融資の申し込みがあって、このままでは貸し出しは無理だと判断したときですよ。地銀やメガバンクがどういう措置をとるかはご推察いただくとして、私どもはその企業の経営の効率化や、営業戦略の策定に至るまで、どうすれば融資が可能になるかを考え、研究し、場合によっては人を送り込むなど、徹底的にお手伝いをします。というのも、中堅大手と違って、彼らにはそれをやってくれる本部スタッフがいないんですよ。

ちなみに私どもの大看板が総合コンサルバンキングでしてね、キャッチフレーズは〝お客さま支援センター〟。分かり易く言うと、街づくり支援、事業者支援、個人資産管理支援を柱に、お客さまの本部スタッフに成りきって仕事をしようということです」

 

つまりは知恵も人も金も、必要に応じてドンドン貸し出すということだ。とまあそういう訳で、松下幸之助の名言をもじった冒頭のフレーズの意味も、これでお分かりいただけたのではあるまいか。

 

最後になったが、ある意味でこれまでの話の原点ともいえる、興味深いエピソードをひとつ紹介しておきたい。氏は大学卒業から西武信用金庫一筋できた、生え抜きの理事長であると同時に、経産省登録の歴とした中小企業診断士でもある。まだ新人に毛が生えた程度の頃に、せっせと勉強して資格を取得したそうだが、これはそのきっかけとなったある出来事である。
「三鷹支店に勤務していた頃です。私が決済しなかった融資案件が元で、ある会社が潰れてしまったんですよ。もちろんきちんとルールに照らし、諸事情を鑑みてジャッジしたことですが、いざ潰れてみると、元経営者や失業したであろう元従業員たちの顔が頭に浮かびましてね。果たしてあのジャッジは正しかったのかどうか、実は凄く悩まされたんですよ。もしあのジャッジが間違っていたら、私は何の資格もない、しかもまだ小僧っ子のくせして、一生懸命頑張ってきた人たちを路頭に迷わせたことになるんですから。そこで思ったんです。私はそれだけ重い判断を下す立場なんだ。だったら少なくとも、会社経営についてはプロでなければいけないじゃないかってね」

 

終始、屈託のない笑顔で話していた氏だが、苦い思い出が甦ったのだろう、このときばかりは目線が心なしか下がって見えた。

でもまあ、遠い昔の話ですし、あの〝半澤クン〟も感服して土下座するんじゃないでしょうか。落合氏以下、西武信金の果たしてきた地域その他への貢献度を考えると、すでに倍返しどころか、100倍も200倍も返していますよって。ねえ、読者の皆さん。

 

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プロフィール
落合寛司(おちあい・かんじ)氏…西武信用金庫理事長。中小企業診断士。1950年、神奈川県生まれ。亜細亜大学卒。

西武信用金庫
〒164-8688 東京都中野区中野2-29-10
TEL03-3384-6111

http://www.seibushinkin.jp


町工場・中小企業を応援する雑誌BigLife21 2013年11月号の記事より

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