法的トラブルを無料で相談できる

日弁連のひまわりほっとダイヤルの上手な使い方

◆取材:加藤俊 /文:松平敬志郎

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Pixabayより

中小企業と弁護士をつなぐホットラインで弁護士はより身近な存在に。 

契約上のトラブルや債権債務処理など、企業経営には様々な法的トラブルがつきまとう。大企業には専門のリーガル部門が存在するが中小企業にそんな余裕はない。日本弁護士連合会(以下、日弁連)ではそうした企業の問題に対応するべく、2010年に初回30分まで無償の法律相談サービス ひまわりほっとダイヤル」を全国規模で展開している。

 

中小企業に初回無料でリーガル・アドバイスを提供

「ひまわりほっとダイヤル」は、日弁連および全国52の弁護士会が提供する、電話で弁護士と面談予約ができるサービスだ。

覚えやすく設定された全国共通電話番号0570-001-240(おーい、ちゅーしょー)から利用者が電話をかけると、該当地域を管轄する弁護士会の専用窓口につながる。

HPからのオンライン申込みも可能で、名前・連絡先などの基本情報を伝えることにより、折り返しての弁護士からの連絡で面談を予約し、後日法律相談を行うことができる。

 

利用の仕方は簡単で、初回面談相談30分は無料*となるところから、実際に活用した経営者の評判は高い。

愛知県で卸売市場運営する会社社長は、取引先との契約で悩んでいたがオンラインで「ひまわりほっとダイヤル」の申込みをしたところ、すぐに担当弁護士から連絡があり面談の予約が簡単にできたと言う。

 

「小さな案件でしたが丁寧に説明をしてくれました。法律の専門家である弁護士の意見を聞くことで不安が解消され、自信を持って問題に対処することができました。大変に満足しています」とのこと。

 

ところで、こうしたサービスがローンチした背景には何があるのか。

*以下の都道府県では、初回面談30分間の相談料が5,400円(消費税込)となります。旭川地区 宮城県 栃木県 福井県 長野県 三重県 奈良県 徳島県 香川県 愛媛県
*30分経過以降及び2回目以降の相談料は、相談担当弁護士にお問い合わせください。

 

 

予防法務的に機能する弁護士の役割を知ってもらうために

そこには「弁護士に対して抱かれる固定的なイメージを打破したい、という意図があった」と日弁連で事務次長を務める吉岡毅弁護士は語る。

 

日弁連事務次長 吉岡毅氏吉岡毅・日弁連事務次長

「弁護士は裁判の専門家と思われがちですが、実際には裁判の前提となるトラブル発生以前から社会生活に関与し、法的なアドバイスなどのリーガルサービスを提供するという役割も担っています。」

 

そこで、弁護士業務というものに、より幅広いイメージを持ってもらうことによりその活用を拡大することを目的に、日弁連ではまず2009年11月に中小企業法律支援センターを設置。

その活動の一環として2010年4月から「ひまわりほっとダイヤル」サービスを開始、ということらしい。

 

日弁連のオフィシャルサービスとして日本全国の弁護士会に所属する約3万5千名の弁護士との橋渡しを行うというインパクトは強い。地域の商工団体や他の士業団体との連携も図りながら着実に認知度を高めてきたことにより、今日では多くの経営者にサービス自体が認知されるようになった。

 

 

事業再生から契約まで2万6千件の多様な法律相談に対応

実際に2010年4月から2015年3月までの5年間で、約2万6千件の相談に対処してきた実績を誇る。どういった相談が寄せられどう対応したのか、具体例を何点か見てみよう。

 

・債権回収

製造業を営む企業が、取引先に対する合計1,400万円の売掛金及び貸付金の回収のため、面談した弁護士に訴訟を依頼。債権の仮差押えをしたうえで、本訴を提起した。

・クレーム対応

ウェブサイト制作業者が制作物について第三者から不当な要求を受けたため、担当弁護士にこれを拒絶する旨の代理人名の内容証明郵便を発送してもらったところ、不当な要求に応じることなく解決できた。

・労働問題

製造業を営む株式会社が従業員から労働審判を申し立てられ、担当弁護士に代理を依頼したところ、第3回期日に和解が成立し、紛争が終結した。

(「ひまわりほっとダイヤル」HPより抜粋)

 

景気の変動を受けやすい中小企業経営にとって、法的な相談のできる機会の提供は、時として経営のセーフティ・ネットとしての機能をも果たしていく。事実、寄せられる相談の傾向も変わってきているそうだ。

 

樽本樽本哲・日弁連中小企業法律支援センター事務局次長(広報担当)

「3年くらい前までは倒産や事業再生、債権の回収や債務の処理といった相談が多かったのですが、最近は契約や取引関係などの前向きな相談が増えてきました。

これは金融円滑化法終了後も各金融機関が債務のリスケに応じているためでもありますが、実際に景気が上向きつつあることも関係しています」とは樽本哲日弁連中小企業法律支援センター事務局次長(広報担当)の弁。

 

 

より身近な弁護士を目指し中小企業との接点を拡大

確かに「ひまわりほっとダイヤル」のサービスを開始した2010年からアベノミクスが進む2015年に向けて、景気は回復基調で進んできた。中小企業にとって少しは明るい経営環境が見えるようになってきていることは事実だ(中国の「バブル経済崩壊」がどう転ぶのか、彼岸の火事と気楽に眺めることはできないが)。

 

それでもグローバル化の加速による海外企業との契約上のトラブルや知的財産権を巡る争いなど、中小企業が抱える法的な課題はいたるところに存在している。経営者の労働基準法への理解不足やコンプライアンス意識の欠如が、深刻な経営リスクを招く事態も考えられる。法的なトラブルに“事前に”対処する弁護士ニーズは高まっている。

 

その窓口となる「ひまわりほっとダイヤル」サービスにかかる期待も大きい。こうした文脈上で「認知度をより高めていく必要性に迫られていることは確か」と中小企業法律支援センター事務局長の髙井章光氏は語る。

 

日弁連中小企業法律支援センター事務局長 髙井章光氏髙井章光・日弁連中小企業法律支援センター事務局長

「中小企業に予防法務に取り組んでもらうためにも、弁護士との接点を増やす活動をこれまで以上に展開していく必要があります」とのことだ。

 

同センターでは「ひまわりほっとダイヤル」サービスの改善に取り組むとともに、地域の商工団体や中小企業支援団体と各弁護士会とが意見を交換し、交流を図るためのキャラバンを全国で展開。

本年9月9日には「ひまわりほっと法律相談会」というタイトルで全国一斉に無料相談会を実施し、中小企業向けシンポジウムなども開催する一大イベントを計画している。

 

「9月9日の全国一斉無料相談のイベントは、日弁連としても力を入れて取り組んでいきたいと考えていますし、中小企業庁、各地の商工団体、公的金融機関である日本政策金融公庫などともタイアップします。相談は無料ですし、地域の弁護士との接点になると思いますので、興味のある中小企業の方は是非とも御参加ください」(髙井氏)

 

DSC02946(20140707岡山) (1)地域の商工団体や中小企業支援団体と各弁護士会の交流キャラバン。昨年7月に岡山で開催した時の様子

より身近な弁護士の実現を目指して広報活動を推進する日弁連中小企業法律支援センターのビジョンを、事務局メンバーである3氏に語ってもらった。

 

オビ インタビュー

「ひまわりほっとダイヤル」の活動を5年間続けてこられて、どのような感触や手応えが得られ、次の課題が見えてきたか、お聞かせください

 

吉岡 「ひまわりほっとダイヤル」は、弁護士に全くツテのない中小企業の経営者の方でも、電話をしたら比較的早期に弁護士と面談相談ができるというシステムになっています。また、料金の点で不安があるという場合も、一部の地域を除いて、初回30分間は無料ですので、取りあえず試しに弁護士に相談してみようか、という場合には有力なツールだと思います。何か不安なことや聞きたいことがある場合、まずは「ひまわりほっとダイヤル」を使って弁護士に相談してみて、その時点で役に立つかどうかを判断していただければ結構なので、まずは気軽にお電話いただければと考えています。

 

樽本 法的な不安を抱える経営者が、弁護士から正確な情報を教えてもらうことで納得のいく判断材料が得られるといった心理的な支えとなっている面が高く評価されているのではないかと考えます。5年の間に大きなトラブルや苦情はほとんどなく、日弁連や弁護士会が運営する公的なサービスとして安心してご利用いただけているものと考えます。

 

髙井 今後の課題については、サービス利用についてのアンケートから、弁護士の専門性がわからず、適切な弁護士が選べないという問題点が指摘されています。それに対しては、同センターの中でも専門性を出すことについて議論を続けていて、ある程度の専門性を持つ弁護士をリストアップして、優先的にご紹介するレベルまで改善してきていいる部分もあります。

 

―法的なトラブルを予防的に回避するために、中小企業経営者に求められる改善課題はありますか 

 

髙井 契約・取引関係の相談としては、契約書をよく読まずにサインしてしまい、後でトラブルになるケースが非常に多いです。そもそも契約書は商談の経緯と合意事項を公式に証明するためのものなので、予防法務的にも重要な手続きになるのだという認識を持っていただければと思います。

 

樽本 現在、60才以上の高齢経営者が増えてきた中で、今後は事業承継関連の相談も増えてくると思われます。たとえ事業を親族に譲るとしても、必ず株や財産譲与などの法律的な問題が絡みます。適正な事業承継を行うためには法律的な課題解決の専門家である弁護士の関与が必要となりますので、馴染みの税理士だけに任せず、当サービスをご利用いただければ幸いです。

 

― 弁護士をより身近な存在にするための課題についてお聞かせください

 

吉岡 弁護士業務には法定の報酬基準は存在していませんので、実際は、依頼者との相談により、リーズナブルな額に設定している弁護士がほとんどだと思います。それでも、弁護士報酬は高額だというイメージがつきまとうため、一般には、近寄り難い存在として敬遠されがちです。そうした垣根を取り除くために、同センターでは全国キャラバンを推進しているわけですが、やはり1人1人の弁護士が自発的に地域の人々との接触機会を増やすなどの努力を重ねていくべきですね。

 

樽本 中小企業が活用されている経営コンサルタントは、実際に弁護士報酬の何倍ものコンサルタント料を請求することもありますが、経営の改善や進捗が可視化されていますから、経営者の方は納得されているわけですね。一方、弁護士の業務には、法廷での決着まで時間を要し、途中の成果が見えにくいという側面がありますので、企業経営への貢献度をかたちとして示せるような仕組みづくりが今後の課題かなと考えます。

 

―中小企業経営者の方へ「ひまわりほっとダイヤル」からのメッセージをお願いします

 

吉岡 高額なコスト・イメージに悩まされる弁護士ですが、実は弁護士が関与するタイミングが早ければ早いほど、費用的にも時間的にも経営者の負担は低減されるのです。法の専門家である弁護士は事前にトラブルを予防するリスクヘッジとして機能しますので、法律的な問題かもしれない、と思ったときは、どうかお気軽にご相談いただければと思います。

 

髙井 弁護士は予防法務的な対処が非常に得意な存在です。中小企業経営者にとって身近な存在とは言い難いですが、「これはトラブルになりそうだな」と直感的に感じられた時には、「ひまわりほっとダイヤル」に電話する習慣を身につけていただければと思います。

 

樽本 中小企業は大企業と違ってリソースが限られていますから、本来のコア・ビジネスだけに集中して、不得意なところは外部のアウトソーシング・サービスを有効に活用していくのが、賢い経営判断です。その選択肢の1つとして、弁護士をもっと身近な存在としてご活用していただければ、幸いです。

 

オビ インタビュー

日本弁護士連合会(業務部業務第一課 日弁連中小企業法律支援センター担当)

HP: http://www.nichibenren.or.jp/ja/sme/index.html

〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3弁護士会館

TEL:03-3580-9841

E-Mail:himawari-hotdial@nichibenren.or.jp

「ひまわりほっとダイヤル」全国共通電話番号0570-001-240

吉岡毅(よしおか・たけし)…日本弁護士連合会事務次長・弁護士。中央大学法学部卒業後1992年弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。事業承継や債権回収等、中小企業関連全般に携わるほか、個人の遺言、相続、介護や成年後見等の高齢化社会に対応した業務も取り扱う。2014年4月から現職。

髙井章光(たかい・あきみつ)…日弁連中小企業法律支援センター事務局長・弁護士。東京大学法学部卒業後1995年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。企業法務、各種訴訟、企業再編・再生、中小企業問題を中心とするが、一般民事、家事事件など広範囲の案件を取り扱っている。

樽本哲(たるもと・さとし)…日弁連中小企業法律支援センター事務局次長(広報担当)・弁護士・認定経営革新等支援機関。早稲田大学法学部卒業後2003年に弁護士登録(第一東京弁護士会所属)。紛争対応、事業再生・創業支援を含む企業の法務全般のほか、一般民事、相続、成年後見等の案件に携わる。NPO、公益法人など非営利組織の支援活動にも従事している。