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『朝鮮半島有事はあるか? リーダーシップオプションから北朝鮮のリスクを読み解く』世界戦略レポート

 

オビ 世界戦略レポート

朝鮮半島有事はあるか? リーダーシップオプションから北朝鮮のリスクを読み解く

◆文責:海野世界戦略研究所オビ コラム

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pixabayより

 

[海野世界戦略研究所の視点]

 ・ 北朝鮮は崩壊する、と言われ続けている
 ・ 北朝鮮は、国としての機能を失いつつあるものの、自らの主体性を失う段階までは至ってない
 ・ 朝鮮半島の状況は、ベルリンの壁崩壊と比較されることもあるが、同じ展開にはならない
 ・ 金正恩の取り得るオプションと国家指導者としての判断プロセスを鑑みると、金正恩が朝鮮半島有事を自ら望んでいるとは考えられない
 ・ しかし、だからといって、朝鮮半島有事が今後勃発しない、ということにはならず、関連する他の要素にも影響を受けることになる

 

 

崩壊寸前の北朝鮮

北朝鮮は、国家としては破綻寸前の状態が継続している。

北朝鮮の経済規模は、1970年前後までは、少なくとも発表される統計上は韓国と同程度であったが、その後、韓国経済が成長を続けて行ったのに対し、北朝鮮は横ばい以下の状態が続き(1974年から1990年までは統計情報が不全のため正確な経済規模は不明)、現在では10倍以上の差が開いてしまっている。北朝鮮の経済は、今後も上向く見込みはなく、現在の262億ドルを維持できれば良い方だと考えられている。

経済状況とは反比例するように、北朝鮮の軍隊である朝鮮人民軍は拡大を続け、今日では120万人~190万人の人員を擁する規模になっている。この軍隊を維持するために、GDP比で実に11%~22%程度(統計により異なる)の予算が投入されている。ちなみに、世界最大の軍事国家であるアメリカで、GDP比の軍事予算規模は4.7%であり、近年、軍事費を毎年大幅に積み増している中国でも2010年で2.1%である。

そもそも、GDPが262億ドルしかない北朝鮮が、30億ドル~60億ドルの予算を、非生産部門である軍事分野に毎年注ぎ込んでいる事自体が経済面からみれば、全く合理性がない。

 

 

それでも崩壊しない北朝鮮

それでも、北朝鮮は崩壊せずに、一応、国としての纏りを維持し続けている。

東ドイツが崩壊しドイツが統一化された際、次は朝鮮半島が統一される、と盛んに論じられたが、いままでのところ、そうなっていないし、今後も当面は、そうなることもありそうにない。

東ドイツの場合、国家の経済が破綻状態であった点は、現在の北朝鮮と類似した状況であったと考えられるが、元々ソビエト連邦の衛星国であり政治的・経済的にソビエト連邦に依存していたが、当のロシア連邦が崩壊してしまい後ろ盾が無くなってしまったことが大きかった。

一方の北朝鮮は、自国経済が、海外からの援助などに事実上、依存している状態であるとはいえ、地下経済により収益も含め一応は独自の経済活動を維持している点が異なり、それが体制を維持できている理由の一つである。

また、過去においては共産圏と自由主義圏、現在に於いては中国とアメリカの緩衝材として、地理的な条件も含めて利用価値があるために、現体制が崩壊しないように各国の暗黙の合意形成ができている点も、北朝鮮にとっては有利に働いている。

 

 

金正恩の取り得るオプション

しかし、それで北朝鮮がこのままで良いか、と問われれば、良いわけではない。核のカードをチラつかせながらアメリカに譲歩をせまる北朝鮮の瀬戸際外交は、最大の支援国である中国も手を焼く状況にまでなっており、国際情勢に変化があれば、いまのままの瀬戸際外交を長く続けることが難しいことは、北朝鮮のリーダーである金正恩が最もよく理解していることであろう。

権力基盤がいまだ盤石とはいえない金正恩が取り得る今後の有効な戦略には、どのようなものがあるのか?

まず、考え得るオプションとしては、例えば以下のものがある。

  オプション1:できるだけ長く現状維持

  オプション2: 経済成長に向けて改革・開放を推進

  オプション3: 他国との合併 或いは、実質的な属国化 或いは 併合

  オプション4: 武力行使による現状打破

これら以外のオプションもあるかもしれないが、大きくは上記のカテゴリとなり、あとはオプションの枝分かれによるオプションのブレークダウンということになるであろう。

 

 

国家経営に於ける判断プロセス

ここで北朝鮮の指導者が取り得るオプションのうち、どの選択肢を選択することになるのか、を考察したい。国家のリーダーである金正恩は、どのオプションを選択することになるか?

オプション選択をする際に、どれが取り得るオプションなのか、ということが重要になる。

つまり、

  ・ 機会(Oppotunity)

  ・ 意思(Willingness)

  ・ 資源(Resouces)

の3つの要素から、選択可能なオプションが抽出されるのである。

これらの取り得るオプションから、それぞれを選択したことによる想定される結果のうち、最も望ましい結果が得られることが予測できるオプションを最終的には選択することになる。

ちなみに、最も望ましい結果が得られることの予測は当然一かゼロという訳ではなく、確率で評価される場合もある。また、オプション選択の時点では複数のオプションを保持しておき、然るべき時期に最終的なオプションの選択を行う、という時間によるコントロールも考慮される。特に、外部要因が流動的で不確定な場合に、そうした判断が行われることが多い。

取り得るオプションから得られる結果について、国家経営の観点から、以下の3つの結果が想定される。

つまり、

  ・ 成長(Growth)

  ・ 安定(Stability)

  ・ 安全保障(Security)

である。

これらの3つは国家経営にとって全て重要な項目である。よって、オプション選択による排他的な結果ということではなく、この3つの結果のうち、どれをより重視し、どの結果の優先度を下げるか、という程度選択の問題になる。

 

 

金正恩は、どのオプションを選択するか?

金正恩は、どのオプションを選択するのか?それを考える前に、選択するオプションから得られる3つの結果(成長・安定・安全保障)の中の優先順位を仮定してみたい。恐らく、権力基盤がいまだに盤石とはいえず、また常に権力闘争の渦中にある金正恩にとっては、国の安全保障が最も優先度の高い事項だと考えられる。その次が安定、最後が成長、という具合だろう。

また、それと同時に、取り得るオプションの可能性を決める3つの要素(機会・意思・資源)を勘案すると、オプション1~4のうち、金正恩が取り得るオプションは、オプション1(できるだけ長く現状維持)かオプション3( 他国との合併 或いは、実質的な属国化 或いは 併合)となる。オプション2(経済成長に向けて改革・開放を推進)は資源(必要なインフラ・ノウハウを持つ人的資源)がなく、意志があっても実施には相当の時間が掛るが、掛かる時間を支える経済的な基盤がないため実施ができない。また、オプション4(武力行使による現状打破)も、有効な資源(武器・資材)もなければ、当面の機会もない(周りの国が北朝鮮との武力行使をしたがらない)ので、これも、少なくとも当面、金正恩はオプション4を取り得ない。

となると、当論考でのテーマである「朝鮮半島有事はあるか?」という問いに対する答えは「ない」ということになるのか? 答えてとして、金正恩から仕掛ける有事は発生するリスクは低いと言うことはできるば、それが、つまり朝鮮半島有事が無い事になるかなるか、というと事はそう単純でもない。

 

 

情勢予測の難しさ

ここまでで論考した内容は現在の環境や条件をベースに検討した仮説であるが、情勢を左右する要素には、他に不測の事態の発生ということも考慮に入れる必要がある。

今後、北朝鮮情勢で起き得る不測の事態としては、金正恩の暗殺やクーデター、第三国による北朝鮮に対する武力行使、金正恩自身の判断ミスや権力基盤の急激な弱体化による軍部の暴走の結果による北朝鮮からの先制攻撃、などが可能性としては考えられる。

これらのうちのもので、実際に起こる可能性はいずれも低いものだとの見方もあるが、可能性が高くはないにしても、一度実際に起これば、情勢は一気に急転することになる。そこが、国際情勢判断を難しくする要素である。

 

 

安全保障をどう考えるか?

朝鮮半島有事の有無が予測できないのであれば予測しても意味合がない、ということにはならない。

現在の状況から予測されるシナリオと突発的な事項を予め予測し、それらが実際に起きる確率を想定する。その想定に対して、どの程度までの備えをするのかを合意し、実際に起きた際に対応できるように備えておくことが、安全保障である。

つまり、全ての起きうるリスクに備えておくことはできないし、仮にできたとしても膨大な社会的・金銭的なコストが掛かることになる。起きうる事態を想定した上で、安全保障にどこまでのコストを掛けて備えるのか?の合意が極めて重要である。

こうした点について、現在の日本は、極めて議論が脆弱で、感情的な内容や極端なケースの想定による議論ばかりがなされているような印象を受ける。

全国民がこうした議論を交わす必要なないであろうが、少なくとも社会に対して様々な面で責任のある立場の国民については、落ち着いて且つ現実的な視点で、今後の社会保障の議論を行い、社会的な合意形成を図ってゆくべきであろう。

 

 

オビ コラム

【文 責】佐々木宏

海野世界戦略研究所について

海野世界戦略研究所(Unno Institute for Global Strategic Studies)は独立系のシンクタンクで、日本企業のグローバル化と日本社会の国際関係構築を目指した戦略的なオピニオン・アクションリーダーとなることをミッションとしている。

主な業務は、

①情報提供事業:世界情勢に関するインテリジェンス、そのインテリジェンスに基づく戦略の国内外の個人または組織への提供

②組織間のコミュニケーション促進及び利害調整代行業

を展開する会社である。

http://www.unnoinstitute.com
株式会社海野世界戦略研究所(Unno Institute for Global Strategic Studies)

kiyoshi-tsutsui

代表取締役会長 筒井潔(つつい・きよし)…慶應義塾大学理工学部電気工学科博士課程修了。合同会社創光技術事務所所長。

 

 

 

 

海野恵一氏

代表取締役社長 海野恵一(うんの・けいいち)…東京大学経済学部卒業。アクセンチュア株式会社元代表取締役。スウィングバイ株式会社、代表取締役社長。

 

 

 

佐々木宏氏

代表取締役副社長 佐々木 宏(ささき・ひろし) …早稲田大学大学院生産情報システム研究科博士課程後期中退。株式会社テリーズ代表取締役。

 

 

 

 

海野塾

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