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台湾元駐日代表・羅福全閣下に聞く日台関係 「台湾の苦難、そして今」

 

オビ インタビュー

台湾元駐日代表・羅福全閣下に聞く日台関係

「台湾の苦難、そして今」

◆取材:加藤俊 /文:菰田将司

羅福全閣下2

羅福全閣下 台湾元駐日代表

 

「私がいつも日本の政治家にお願いしていることは、アメリカに、日本にとって台湾は重要なパートナーであることを伝えていただきたい、ということ」。羅福全閣下のこの言葉の裏側には、台湾が戦後、国際問題と国内の民主化問題で揺さぶられ続けてきた苦難の歴史がある。それを理解しない限り、現在、台湾と正式な国交がない日本が、台湾と真の友好関係を築いていくことは難しい。

今回は、前回に引き続き元台北駐日経済文化代表処代表(駐日代表、駐日大使に相当)羅福全閣下に、大きく揺れ動く世界情勢の中で、今、台湾がどこへ向かおうとしているのかを伺った。

前編・「東アジアは新時代を迎えている」

 

■世界の中の台湾と、アジアの安全保障問題 

―日本の政治家の中には、終戦時に真っ先に賠償金請求放棄・天皇制支持を提案してくれた蒋介石に対して非常に恩義を感じており、1972年の日中国交正常化・日台断交に反対した「親台湾」勢力がありますが、古くから交流のある日本以外の国々は台湾の立場に関してどの程度の理解をしているとお考えでしょうか?

 

羅福全閣下

「日本の政治家には民主党・自民党を問わず、数多くの親台湾派閥の人々がいる。また、文化人・論客も同様だ。私は現在、彼らと良好な関係を維持している。彼らは、大陸の中国共産党とは距離を置く、いわゆる保守勢力の人たちだ。彼らと交流を深め、台湾の立場・現状を深く、そして多くの人に理解してもらうことは重要だ。

2007年に国連事務総長ファン・ギブンが当時の台湾総統陳水扁による『台湾名での国連加盟』という提案に対して、『台湾(中華民国)は1972年に国連での議席を失っており、以後は中華人民共和国の一部でしかない』と発言をしたことがある。

この時、アメリカは『台湾は国家としての議席を有してはいないが、主権を持つ地域であることに変わりはない』と反発し、ファン・ギブンも後にこれを認めた、という出来事があった。

このように、アメリカや日本など、台湾との関係が深く、情勢に比較的詳しい国以外には、現状が解りにくいのではと考えている。台湾の現状をもっと各国に知ってもらわなければならない」

 

―戦後長らく、アメリカの考える防衛ラインは日本列島・沖縄・台湾と繋がるものでした。これはソ連と中国を仮想敵と看做す戦略に拠ります。故に台湾の存在は、東アジアの安全保障と密接に関係していました。しかし現在、ソ連は崩壊し、他方、中国は飛躍的な経済成長を遂げています。一例をあげるなら、中国の石油輸入額はこの十年で5倍以上に増加し、2014年には日本・アメリカを抜いて世界一になっています。

こういった事実が近年の米中関係に変化を与え、アメリカの戦略の大きな変革に繋がっていますが、台湾の存在意義は今後、どのように変化していくとお考えでしょうか?

 

「確かにアジア全体の安全保障を考える上で台湾の役割はとても重要だ。ソ連崩壊後も、近年まで日米は東シナ海の現状維持を戦略目標にしていた。だから現状を破壊する恐れのある要因を押さえ込んできた。長らく俎上にならなかった尖閣問題なども同様だ。

しかし現在、中国の経済成長とそれに伴う拡大政策により、このバランスは崩れてきている。アメリカは防衛ラインをグアムまで引き下げ、そして対中戦略の一環として、半世紀にわたって行われてきた、台湾へのアメリカ製戦闘機やイージス艦の売却を、現在凍結させている。この点では、台湾の戦略的意義は捉え直される時期に来ているといえる。

他方、南アジアに目を向ければ、中国はインド方面にも進出し、インド洋に中国海軍の基地を次々に建設している。これは、日本と同様に、石油を中東からの輸入に頼っている為だが、石油輸入量が年々増加している中国では、海路に加えてパキスタンを通る陸路も開拓しようとしている。中国の経済成長と拡大は東・南アジアの安全保障戦略に大きな影響を与えている。アメリカ・日本、そして台湾は密に交流しながら、アジア全体に広がる新たな安全保障戦略を構築していかねばならない」

 

■独立問題の今

―現在の国民党馬英九政権は、中国との長年の対立関係から一転、経済交流を深めて台湾の経済を好転させようと考え、様々な政策を打ち出しています。その一つとして昨年、中国との間に「海峡両岸サービス貿易協定」を締結しましたが、これに学生たちが反発、「ひまわり学生運動」と呼ばれた国会占拠事件が起こりました。

このような運動の高まりは今までにもあったのでしょうか?また今後どのような展開をするとお考えでしょうか?

 

「去年の国会占拠事件は非常に大きな運動だった。中国企業の進出によって、台湾の中小企業が大きなダメージを受けることを危惧した学生たちは、馬英九の決定に反発、立法院を一ヶ月近く占拠した。結果、国政は停滞し、馬英九総統の支持率は9%にまで低下、彼は責任をとって国民党主席を辞した。

こういった民主化運動としては古くは1979年の美麗島事件などがあったが、今回のひまわり学生運動もその延長線上にあるといえる。来年には総統選挙があるが、この事件の影響は大きいだろう。国民党の汚職問題も重なり、民進党の躍進が予想される。台湾の政界では、台北を中心とした北部で国民党支持が強く、台南や高雄など南部で民進党が強い。それは言い換えれば、北部では大陸への志向が強く、南部では独立への志向が強いということだ。

しかし、2008年の総統選挙では民進党は強い地盤であるはずの台南・高雄で国民党に敗北し、これが大きな打撃となった。その後、党内は分裂し、再起不能とまでいわれた民進党だったが、今は新たに党主席に就任した蔡英文女史によって再び勢いを取り戻している。彼女は、国家としての独立ではない「主権独立」を主張し、馬英九を上回る支持率を得ている。

来年の総統選挙では、おそらく彼女が当選するだろうと私は考えている。今、台湾は、大陸への依存でも、独立ではない、第三の道を歩み出そうとしているのだ」

 

◉羅福全閣下のお話を聞くにあたり、特定非営利活動法人 修学院に尽力頂いた。

 

オビ インタビュー

羅福全(ら・ふくぜん)

経済学者。元台北駐日経済文化代表処代表(駐日代表、駐日大使に相当)(2000年5月-2004年7月)。退任後、亜東関係協会会長。台湾独立運動の指導者の一人。その他の要職、元国際連合大学高等研究所(UNU-IAS)副所長。

 

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