次世代の産業を担う【中小企業】初めて明かされる秘話
日本再生の鍵を探せ 企業x学校物語

土森俊秀弁護士 ‐ ブラック企業と言われないためには……

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土森俊秀弁護士 ‐ ブラック企業と言われないためには……

◆取材・文:加藤俊

 

土森俊秀弁護士 (2)

中小企業がブラック企業とラベリングされるのを防ぐためには、まず経営者が労働基準法を知ること。雇用に関してどのようなルールがあるのかは把握しておく必要がある。

ブラック企業という言葉が流行りだしたのは、ここ数年。それゆえブラック企業という言葉の定義は人によって曖昧で、未だ定まっていない。何ら悪びれることなくあからさまに労基法違反を行う企業は言語道断だが、ブラック企業という言葉も、セクハラやパワハラ、いじめといった言葉と同様、その定義の曖昧さ故に、被雇用者側あるいは話を聞いた受け手がどう感じるかという主観的な要素が大きく影響する部分がある。

そのため、経営者としては、むやみにブラック企業との風評を立てられないようにする、立てられても納得いく説明によりその風評を否定できるようにすることが重要であり、そのためにもまず労基法を理解し、遵守に努める必要がある。

また、経営者が意識しなくても、何の気なしにやっていることが受け手にはブラックと捉えられかねない可能性を理解することだ。一昔前までは、企業固有の文化として許容された社風や愛社精神、精神論が、「今」もそう見做されるものであるかは、きちんと見直す機会を設け、従業員と意識を擦り合わせるほうが良い。

 

ただ、ブラック企業問題の難しさというのは、日本の産業構造の在り方が、法整備が追い付かない速度で変化していることにも一因がありそうだ。日本企業の高い付加価値の源泉となっていた技術の多くの領域が、近年他国にキャッチアップされてしまった。コモディティ化したスキルは、日本の賃金レベルでは競争力を発揮しにくく、実際に多くの仕事が海外に流出している。そして、景気が上向いたとされるアベノミクスの恩恵をもってしても、一度外に出た仕事は殆ど戻ってきていない。

 

中小企業は依然として厳しい環境下に置かれている。それでも企業は立ち止まることが許されない。結果的に、多くの企業がその維持に必要な収益を出すために、無理をするようになった。その皺寄せがどこに向かったか、だ。

従業員の働き方に向かったところもあるのではないだろうか。特に、中小企業の場合は、競合企業との差別化や自社の強みを打ち出せていないと、発注先の都合をそのまま押しつけられてしまい、それをそのまま従業員にサービス残業等の形で無理強いさせてしまう可能性があることは容易に想像できる。会社がつぶれてしまって従業員の雇用を失わせてしまうよりはましであろう、という気持ちも働いているのではないか。

こうした理由で、現在、ブラック企業と指摘されて「違う」とはっきり否定できない企業は一定数有るのだと思う。

 

さらには、経営サイドの意識として、人材を使い倒す設定でビジネスモデルが組み立てられている企業も存在している。もしくは、働く人のステップアップに繋がるような技能を習得させにくい仕事も存在している。職人やモノづくりの世界であれば、一昔前まで、やはり被雇用者の賃金体系や労働環境は厳しいものだったろう。それでも多くの企業で技能習得が見込めた。それゆえ厳しい労働環境であっても被雇用者や社会に理解されていた。

こうした点を鑑みるに、ブラック企業の本質の一側面には、従業員には何も残らない、人材をただ使い倒す企業か否かという点が位置づけられるだろう。

 

ただ、こうした従業員を使い倒そうとする企業は論外として、多くの経営者の中で、労基法を遵守するということに対して、ある意識が蔓延しているように思う。これは危険だ。

例えるならば、法定速度100キロ制限の高速道路で、少なくない人が120キロ出して走っている。そのなかで、摘発される者がでた場合、それを周囲は、しょうがないよね、ついていなかったね、と許容しあうような空気だ。産業構造自体が、120キロで走らないとしっかりとしたパフォーマンスを発揮できない構造に変化してしまっていると指摘できなくはないが、経営者がこうした意識を持っている限り、ブラック企業と糾弾されるリスクは排除できない。

同時に、働き方が急速に変わり、多くの企業において付加価値を生み出す仕組みが変わったのに、労基法は旧態依然のままということがもたらす歪みも否定しきれない。少なくとも現代社会の多様な働き方に対応できる制度設計とは言いにくくなった。無視すべき問題では無いだろう。

 

究極を言えば経営者は、従業員にサービス残業等の無理強いをさせなくても利益を上げる仕組みを作るしかない。そして、いかに従業員に能動的に積極的に動いてもらうか、そこは経営者としての資質が問われる領域だ。

変な風評を立てられないためには、正義を貫くためには、経営者が会社の稼ぐ力を生み出す強さを持たなければならない。

【取材のセッティングにあたり、創光技術事務所・筒井潔氏に尽力頂いた】

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土森俊秀弁護士 (1)

土森俊秀(つちもり・としひで)…1972年福井県生まれ。東京大学卒業後、電機メーカー勤務(原価担当)を経て、2001年に弁護士登録。東京都内の法律事務所に勤務弁護士として勤務した後、2010年に栗林総合法律事務所にパートナーとして参画し現在に至る。弁護士会活動等で中小企業支援に力を入れている。

 

栗林総合法律事務所

〒100-0011 東京都千代田区内幸町1-1-7 NBF日比谷ビル502

℡ 03-3539-2555

http://www.kslaw.jp/

 

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