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世界戦略レポート『中国人観光客1,000万人が迫る日本の改革』

 

オビ 世界戦略レポート

中国人観光客1,000万人が迫る日本の改革

◆文責:佐々木宏オビ コラム

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[サマリ]

  • 2014年は外国人観光客が1,200万人を超えたが、2015年は更に多くの外国人観光客が日本を訪れることになるだろう
  • 外国人観光客の中で最も多いのは中国人観光客(中国・台湾・香港)で、2015年は多くて1000万人を超える数の中国人が日本を訪問することになるだろう
  • これまでの外国人観光客の訪日とは異なり、その数のインパクトは大きく日本社会に変革を迫ることになる
  • 日本社会に与えるインパクトは、経済面だけでなく、文化・習慣・法律などの多岐の面に及ぶ
  • そのインパクトは、第三の開国といっても大袈裟ではない変化を日本社会全体に迫るだろう

 

日本を訪問する外国人観光客

日本政府は、日本への観光客を増加させる政策を推進しており、日本に訪日した外国人観光客は2013年で既に1000万人を突破。2014年6月に閣議決定した成長戦略の中にも観光業の拡大が盛り込まれている。具体的には、2030年までに外国人旅行者3000万人と10兆円規模の経済効果を目標としているようだ。

ちなみに、2014年に日本に来た外国人観光客の数は、1300万人を超えた。2014年11月時点での上位三カ国の国別の内訳は、中国人が303万人、韓国人が248万人、台湾人が261万人となっている。地域別では、アジア地域が783万人、北米が82万人、欧州が76万人、オセアニアが25万人である。外国人観光客の中では、アジアからの観光客が文字通り桁違いに多い。また、外国人観光客全体の中で中華人民共和国と中華民国からの中国人観光客の占める割合は43%で、半分近くを占めている。

2015年には、更にその数が増加し、全体で1700万人以上の外国人観光客が訪日すると予測される。その中で、最も多くの割合を占める中国人観光客の数はこれまでの伸び率等をベースに試算すると760万人程度、多ければ1000万人を超えることが予想される。

 

中国人観光客1000万人のインパクト

これまで以上に多くの外国人観光客、特に中国人観光客が1000万人訪日するということに関するインパクトを想像してみよう。ここで重要なのは、世界各国から多くの外国人観光客が訪日する、ということもさる事ながら、同一文化圏から大量の観光客が押し寄せてくる、という点である。

中華人民共和国と中華民国からの中国人観光客は現在でも年間564万人が訪れている。2014年の中華人民共和国からの観光客の伸び率が82%なので、それが2015年には伸び率自体が増加して最大で2倍程度になるとすると、1000万人以上の中国人観光客が日本にやってくることになる予測される。

これまで経験したことのない多くの中国人観光客を日本が迎えることによって与えられるインパクトは、経済面のみならず様々な面に及ぶものと考えられる。

 

(経済面でのインパクト)

  • 宿泊施設や国内長距離交通などの需要の爆発的な増大
  • 外国人観光客による消費の拡大による小売・流通などの売上構成の変化
  • 内需型でも外需型でもにない新しい日本経済構造への変革
  • 地域観光の活性化による地域経済の底上げの可能性

(経済面以外でのインパクト)

  • 日本人を中心とするインフラから、非日本人も視野に入れたインフラ整備の必要性の増大
  • 外国人観光客を前提にした公共サービス等の対応
  • 地域住民と外国人観光客のコンフリクトの増大と治安維持等の対応
  • 相互理解の進展や親近感などによる外交関係への影響

 

こうした影響の中で、特に中国人観光客とその他の国々から観光客の違いは、以下のような点がある。

  • 他国からの観光客よりも旺盛な消費意欲。特に高額品の消費が旺盛
  • 所謂、富裕層が多くを占める
  • 家族やグループなどでの大人数での行動
  • 1ヶ月以上の長期滞在よりも1週間程度の短期滞在
  • 文化的な興味よりも、高級品の購買やレジャー、リラクゼーション、飲食消費などが中心

 

上記の個別のインパクトに関しては、誌面の関係から各論として別途展開することとし、ここでは詳述を避けるが、何点か簡単に触れておくと、中国人を含む外国人観光客は東京や大阪だけに集まる訳ではなく、広く地方にも分散して訪れる事になる。

例えば、外国人観光客に人気のスポットとしては、東京・大阪は元より、食事と温泉を中心とした九州、雪と寒さがスタータスシンボルとなる南国地域からの観光客を多く呼び寄せる北海道、太平洋戦争の歴史を学ぶために特に若い観光客が訪れる広島、古くからの日本文化が凝縮された金沢、富士山観光を目的とした静岡なども外国人観光客には魅力的なスポットとなっている。これは、日本人による国内旅行の志向とは大きく異なっている。そこに地域活性化に繋げるチャンスがあると言える。

 

また、外国人観光客による消費活動の面では、既に2014年の銀座の百貨店に於ける日本人と外国人観光客の売上比率は60:40となっており、恐らく2015年にはこの比率が50:50、場合によっては外国人観光客による売上高の方が大きくなることも考えられる。そうなると、売り場構成や商品構成、店内サービスなどは、日本人消費者を意識したものから、外国人観光客を意識したものに変革させる必要がある。

例えば。百貨店で言えば、日本人消費者をターゲットとした日常使いを前提とした比較的値段の熟れた高級感のある商品から、消費意欲が旺盛な中国人観光客をターゲットとした分かり易いインパクトのある高額なラグジュアリー品へと品揃えをシフトしてゆくことが求められるだろう。中国人消費者は他人との差別化が分かり易い高額商品を好む傾向があるため、単なるブランド品ではなく希少性とメッセージ性の強い商品の品揃えを強化するなどの対応が求められるのだ。

また、日本に来た観光客が日本国内を移動する手段も必要だ。移動については、日本人の一般的な移動とは異なるルートや日程を取ることになるため、従来とは異なる外国人観光客の好むルートに適した交通手段を提供することが、ビジネスチャンスとなってくる。中国人観光客で言うと、ポピュラーなルートとして、まず日本に到着したら東京観光し、その後、大阪や富士山、温泉などに出向き、2~3日当地に滞在した後、東京に戻って買い物をする、というルートがあるが、そうした移動に適した交通手段の提供なども必要になるだろう。

 

宿泊施設なども、現状では例えば首都圏の宿泊施設は、ビジネスパーソンを前提とした多くて3人程度の宿泊設備が中心だが、中国人観光客の増加に対応するために家族や大人数での宿泊も可能とする設備やサービスも求められるようになるだろう。

さらに、食事なども、日本食はそのままでは外国人観光客にとっては、塩気が多いとか熱いなどの印象を与える食事もあるため、外国人観光客に適した味付けや提供方法が求められるようになる。

 

外国人観光客の増加が引き起こす課題

観光客の訪日は、新しいビジネスチャンスを国内の各産業にもたらし、企業業績とGDPを底上げし、引いては諸外国の日本に対する理解を深め、国際関係にまで良い影響を与えることが予想されるが、一方でそのインパクト故の問題も起こってくる。

例えば、宿泊施設の面では、東京だけ見ても、2012年時点で14万室あり、現状でも稼働率は85%を超えている。全宿泊数に於ける外国人観光客の占める割合は現在、約3割であるが、これが倍増すると遠からず5割程度を外国人観光客が占めることになる。一方で客室数の増加に関しては、少なくも宿泊事業者が今後数年間で客室数を増加させる大きな投資は計画されておらず、このままでは、とても増加する外国人観光客を吸収しきれない。

また、前述したように中国人観光客向けの大人数での宿泊用の設備やサービスとビジネスパーソンやシニア夫婦などの国内旅行者向けの少人数向けの設備やサービスのどちらを優先するか、という問題もある。こうした問題を整理しないまま外国人観光客向けのサービスの対応を進めると国内の既存需要とのコンフリクトが起こることが予想される。また、無料WiFiなどのインフラ整備などを放置したままでは、政府の政策による観光客の増加とそれを受け入れるサービスインフラにギャップが生まれ、大きな混乱を引き起こすリスクがあるとも言える。

需要と供給の差は、サービスの質と価格などに影響を与え、移動や宿泊に関わるコストが増大し、関連する物価全般にも影響を与えることになることが考えられる。また、そもそも移動や宿泊の予約が取れない、ということもあり得る。

 

言語の問題としては、中国人観光客は、一般に英語は話せないことが多い。日本社会では、簡単な対応であれば英語で応対できるだけの基盤が整いつつあるが、それに加え中国語(少なくとも北京語)でも対応できるような、トリリンガルのサービス要員やサービスインフラが必要にもなってくる。

更に、海外ビジネスパーソンの来日や滞在、或いは駐在なども、外国人観光客の増加に伴い増加することが予想されるが、長期滞在や駐在などの関する問題は、ビザなどの問題だけでなく、外国人ビジネスパーソンやその家族などに対する救急医療対応なども整える必要がでてくる。

また、犯罪防止・犯罪対応、外貨取引に関わる税制や外貨管理対応、来日している外国人ビジネスパーソンの子弟の教育機会の提供、地域社会との関わり、母国の宗教や習慣に対応する場や物品の提供なども必要で、日本社会全体で異文化に対する理解の促進と具体的な対応が求められる。

また、よく中国人観光客はマナーの悪さを指摘されるが、日本が求めるマナーなどを理解してもらうための啓発活動なども社会全体で取り組むべき課題と言える。

 

何をすることが必要か?

政府が外国人観光客の誘致を積極的に推進している以上、今後、嫌が応でも日本を訪問する外国人観光客は増大するし、またその効果は日本経済にとって間違いなくプラスに働く。しかし、現状、どの程度の数の外国人観光客をどう日本に呼び寄せたいのか、という社会的なコンセンサスが形成されているとは言い難い。今後、外国人観光客が増え、日本社会に対するインパクトが大きくなるにつれ、この問題に関する議論と社会的な合意形成プロセスは避けて通れない問題となるはずだ。

 

そして、さらに重要なこととして、日本が如何に外国人観光客に対して魅力的な場や資源を提供できるのか?という点を整理する必要もある。日本は、治安の良さや豊かな自然、高品位なサービスなど、確かに観光客を呼び寄せるのに十分は資源があると言えるが、一方では言葉の問題をはじめ、分かりにくい交通システムや、外国人の利用を前提としていない各種インフラ、社会基盤サービス、個別の小売店舗などの外国人対応のバラツキ、外国人慣れしていない日本人自身のメンタリティなど、外国人観光客にとって十分な魅力を提供できているとは言い難い領域が目立つ。

こうした課題を関連産業と社会が総合的に解決しないと、長い目で見て外国人観光客誘致の政策や議論自体が無駄なものになる危険性がある。問題意識として認識すべきだ。

 

最後に、昨年度の中華人民共和国の海外旅行者は1億2千万人で、その前の年は9800万人だから、本年度は仮に同率の同化を見込んだとしても、1億4400万人となる。日本ばかりでなくアジア各国がこうした中国人の受け入れのための規制を緩和しているとしても、日経新聞1月6日の記事によれば、米系大手旅行情報サイト「トラベルズー」が「2015年に訪れたい旅行先」を尋ねたところ、中国大陸の40%の人が日本をあげ、2年連続で首位だったことを考えれば、先ほどの1千万人の予想が2千万人になってもおかしくない

さらに中国人の買い物の特徴は日本人と異なっていて、例えば、便秘薬であれば、1箱を買うのではなく、100箱を買う場合が多い。日本の人口の1割相当の人たちがそうした消費行動をするということは冒頭に述べた第三の開国が迫られるということを意味する。こうしたことはただ今までのような観光ビジネスというだけでは済まされない大きな変化をもたらすことになり、日本経済に与える影響は計り知れない。

 

海野世界戦略研究所(Unno Institute for Global Strategic Studies)は日本企業のグローバル化と日本社会の国際関係構築を目指した戦略的なオピニオン・アクションリーダーとなることをミッションとして、経営&公共政策コンサルタントの筒井潔、元アクセンチュア代表の海野恵一、元アクセンチュア社員でTerry’s & Associates代表取締役社長でもある佐々木宏の3人を中心として2014年12月に設立されたコンサルティング会社である。筒井が代表取締役会長、海野が代表取締役社長、佐々木が代表取締役副社長を務めている。

具体的な事業として、(1)世界情勢の分析と予測、それら分析、予測に基づく戦略の提供、(2)ネゴシエータ、フィクサーとしての活動、を行っている。特に、海野が得意とする孫子的思想に基づく世界情勢の分析と予測の提供と、単なる助言をするだけではなく、実際にアクションを請け負うまたは仕掛けるコンサルティング会社を目指して設立された。今月より、ビジネスチャンスのヒントとなるような分析、予測の一部をお送りしたい。

オビ コラム

【文 責】佐々木宏

海野世界戦略研究所について

海野世界戦略研究所(Unno Institute for Global Strategic Studies)は独立系のシンクタンクで、日本企業のグローバル化と日本社会の国際関係構築を目指した戦略的なオピニオン・アクションリーダーとなることをミッションとしている。

主な業務は、

①情報提供事業:世界情勢に関するインテリジェンス、そのインテリジェンスに基づく戦略の国内外の個人または組織への提供

②組織間のコミュニケーション促進及び利害調整代行業

を展開する会社である。

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http://www.unnoinstitute.com
株式会社海野世界戦略研究所(Unno Institute for Global Strategic Studies)

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代表取締役会長 筒井潔(つつい・きよし)…慶應義塾大学理工学部電気工学科博士課程修了。合同会社創光技術事務所所長。

 

 

 

 

海野恵一氏

代表取締役社長 海野恵一(うんの・けいいち)…東京大学経済学部卒業。アクセンチュア株式会社元代表取締役。スウィングバイ株式会社、代表取締役社長。

 

 

 

佐々木宏氏

代表取締役副社長 佐々木 宏(ささき・ひろし) …早稲田大学大学院生産情報システム研究科博士課程後期中退。株式会社テリーズ代表取締役。

 

 

 

 

海野塾

グローバルな世界で真に活躍できる人材を育成するための教育プログラムで、講義は英語を中心に行われる。グローバル化する複雑な世界を理解するだけでなく、その中で主体的にリーダーシップを発揮できる人材の養成が、海野塾の主眼である。

海野塾は、毎週末に個人向けに開催されているものの他に、個別企業向けにアレンジした研修プログラムも提供されている。

問合せ先:event-s@swingby.jp 担当:劉(りゅう)

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