釧路公立大学 経済学部 下山 朗准教授|〝釧路〟ではない〝北海道〟ブランドの活用 「疲弊した地域経済を活性化する一手!」

 

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釧路公立大学 下山 朗准教授〝釧路〟ではない〝北海道〟ブランドの活用

疲弊した地域経済を活性化する一手

◆取材・文:加藤 俊

釧路公立大学 下山朗 准教授
釧路公立大学 経済学部/准教授 下山 朗氏

地域経済の疲弊した北海道の中でも、道東のそれはことに著しい。その道東最大の都市である釧路にいたっては、人口の減少や増え続ける地方債の残高など、好転の気配が一向に見えない。それを裏付けるかのように、今回、現地の様々な企業の声を拾う過程で、ここで取り上げた〝元気な中小企業〟も含め、全員が同じように口にした言葉がある。

「(道東は)苦しい。本当に苦しい──」

この〝苦しい〟地域経済を立て直す手立てなどあるのだろうか?
釧路公立大学下山 朗准教授にそこのところを伺った。

風景 (3)

──疲弊した北海道の地域経済の中でも、道東の現状は、相当厳しいものがあると思います。釧路に限って言えば、人口18万人の同規模の地方都市と比べると、その地域経済の衰退の度合いは顕著です。現地の中小企業の置かれている状況は、相当逼迫したものがありますね。

 

釧路 写真 (2)

下山 朗准教授(以下、下山) 仰る通り、道東の地域経済は非常に悪いです。釧路でいえば、地価がここ20年間、ずっと下落しています。市町村の財政の根本である地方税、地域の活性化を表す固定資産税が毎年減っているのです。地域経済の落ち込みが、そのまま自治体の財政悪化に表れた格好です。

釧路はもともと、道東地域の中心都市であることから、北海道内の企業を中心とした支社が多い、支店経済都市です。ですので、こう地域経済が落ち込むと、各企業の撤退に歯止めがかからない状況になってしまいます。

近年だけで見ても、大手銀行や地方銀行などの金融機関やデパートなどが相次いで撤退しました。そうなると、当然のこと駅前や市街地の活気はなくなり、さらに地価が下がるという悪循環に陥ります。今がまさにその状況です。加えて生活保護の受給率の高さ(※)や、人口減少は深刻な問題ですから、街を覆う閉塞感たるや、それはもう……。

下山 図
※生活保護費が急増し、2012年度は総額150億円に迫っている。市の大きな財政圧迫要因になっている。

 

──そうすると、北海道とりわけ道東は、農林漁業などの一次産業が盛んな地域です。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加が、逼迫した地域経済に、さらに追い打ちをかける形になりますね?

 

下山 ええ。北海道の産業構造を鑑みると、これはかなり大きなマイナス材料です。かといってTPPに参加しなかったら、地域経済の衰退が止まるかというと、そんなことはありません。TPP参加云々の次元の前に、喫緊の課題、地域経済の衰退を止める方策や手立てを講じなければ、近いうちに、立ち行かなくなるところまで来てしまっているのです。

 

──釧路の地域経済を活性化するためには、具体的にはどういった地域振興策が考えられますか?

 

下山 即効性という意味でも、まずは既にある〝北海道〟というブランドを活用することでしょう。

 

──どの地域も、地域の特産品を売るため、地域自体のブランディングを考えています。同じことでしょうか?

 

釧路公立大学 下山朗准教授

下山 この場合、考えるべきは〝道東〟や〝釧路〟という一地域ではなくて、〝北海道〟というブランドなのです。それに、北海道の場合、他の地域とは大きく異なる点があります。既に高いブランド価値を確立していることです。デパートの催事場での〝北海道〟物産展の集客力を見てください。その力を、もっと有効活用していこうという意味で捉えてください。

というのも、釧路は、札幌のようには、北海道ブランドをうまく活用できていません。釧路だ、釧路だ、というのも大事なのですが、釧路ブランドを育て上げるなんて悠長なことはもう言っていられないほど、残された時間は少ないのです。釧路という名前をいったん置くことは、地域にとっては勇気がいることですが、ポテンシャルは非常に高い地域なのだから、北海道ブランドを活用すれば、地域が活性化するだけの力は絶対にあるんですよ。

釧路 写真 (1)

何故なら、釧路の方が、札幌よりも、一般の人が考えている海の幸が豊富な〝北海道〟のイメージを体現している場所なのです。札幌の人が、釧路に海の幸を求めに来るぐらい、ここの魚介類は美味いんですから。アクセスの悪さをはじめ、諸々の要因が重なって、これまではそれがうまく発信できていなかったんです。

 

──確かに、本来は『釧路にはコレがあって、特産品はコレで、根室にはコレがあって、帯広には……』といった地方独自のカラーがある筈なのですが、それらは東京に住んでいると、いまいち見えてこないですね。

 

下山 他地域の人が北海道を語るとき、それはすべて〝北海道〟という大きなワードに集約されてしまい、そこが終点になります。北海道というワードの先に何があるかを想うことはありません。残念ながら、〝海の幸が美味しい〟に続くのは釧路、函館、稚内といった地域名ではなく、大概北海道ではないでしょうか。

 

──なるほど。しかしこういったブランディングというものは、地域全体のコンセンサスが得られなければ難しいですし、そのためには、一つの成功事例がでるか、あるいはリーダーシップを持った旗振り役が必要になってくるものではないでしょうか?

 

釧路公立大学 下山朗准教授2

下山 こればかりは、自治体が一企業を指名して、即日作れるものではありません。旗振り役という点では、釧路は北海道の他地域に比べて、そういった担い手に成りうる規模の企業が、少ないという問題も抱えています。そこで、資本金3千万規模の会社が幾つかあるよりは1億円規模の会社が一つある方が、地域を代表しやすい観点から、既存の会社を統合、あるいは協業会社を作ることを模索すべきです。

そのために、今こそ産官学に金融機関を巻き込んだ有力な組織を作り、〝釧路地域を代表する企業作り〟という統合目標をしっかりと掲げて、地域活性化のための一つの方向性を打ち出していくことが求められていると思います。

 

──行政が担うべき役割は?

 

下山 実際に動き出せば、流通や距離、立地の悪さなどのボトルネックが顕在化する筈です。そうした問題を解消するような手立てを行政は講じるべきです。アクセスをよくしないことには、活性化するための環境は整いませんから。

例えば、TPP参加のタイミングがそこに重なるかもしれません。その時、纏まった補助金が下りてくる可能性があります。その補助金を、地域経済が持続的に成長していくために必要なアクセスの整備に活用しなければなりませんね。それをまた今まで通り、無思慮に無駄な道路を作るとかしていては、ダメです。

 

──地域経済や自治体の財政状況を見ても、もう残された時間はないですよね。

 

下山 そうです。これはもう半年以内に組織して、一年以内に報告書をだして、といったスピード感が必要です。

 

──ここは道東にとっての正念場になりそうですね。ご活躍を祈っております。ありがとうございました。

 

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釧路公立大学 下山朗 准教授●プロフィール
下山 朗氏(しもやま・あきら)…1978年、兵庫県出身。関西学院大学経済学部卒業。釧路公立大学経済学部 准教授として現在に至る。財政学、地方財政論が専門。
釧路公立大学
〒085-8585 北海道釧路市芦野4-1-1
TEL 0154-37-3221

http://www.kushiro-pu.ac.jp/index.html

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2013年6月号の記事より

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