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第一勧業信用組合 – 信用組合が未来を創り、日本を元気にする! シリーズ:地方創生プロジェクト

プリント

◎信用組合が未来を創り、日本を元気にする

参院選は、その真偽は別として、アベノミクスを争点に掲げた自公政権が勝利した。 だが、政府が目玉政策として進める「地方創生」は進捗していない、それが大方の国民の実感だろう。

開始から2年が経ち、これまで総額2700億円の自治体向け交付金が配られ、今後も毎年1000億円規模で続くという。

今年2月、東京に拠点を置く第一勧業信用組合は、地方と東京を結ぶ新しいビジネスモデルの構築を目指し、地方連携事業を開始。すでに地方の7つの信組と協定を締結させ、成果の見えない地方創生政策をよそに、地域経済を動かす取り組みをスタートさせている。

交付金にぶら下がるだけの地方創生事業とは一線を画す各地の信組の試みを、シリーズにてお伝えする。地方が抱える切実な思いと奮闘、その最新現場で、真の地方創生とは何かを考える。

 

オビ 特集

東京発、信組による「地方創生」プロジェクトを追う!

◎第一勧業信用組合/理事長 新田信行氏インタビュー

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今年に入り、日本各地の信用組合が連携協力の協定を結ぶ動きが目立っている。一見すると金融業界の小さなトピックスにも思えるが、しかし、仕掛け人である第一勧業信用組合理事長・新田信行氏(=写真)の頭の中には地方創生を成功へと導く確かな青写真が描かれている。メガバンクの要職を歴任した銀行マン・新田氏の新たな挑戦とはいかに。金融業界から見た地方創生のあり方を探った。

 

連携をはじめた全国の信用組合

東京23区に拠点を置く第一勧業信用組合が新潟県の塩沢信用組合および糸魚川信用組合と連携協力の協定を結んだのは今年2月のこと。

これを皮切りに北海道の北央信用組合、福島県のいわき信用組合など6月の時点ですでに7つの信用組合と同様の協定を締結させている。その後も同組には新たな連携を求めて日本各地の信用組合から問い合わせが来ているという。今、日本の信用組合業界では何が起きているのか。

この一連の呼びかけ人となっているのが同組の理事長・新田信行氏だ。

同氏は30年間、みずほ銀行で名だたるポストを歴任し、常務にまで上り詰めた男である。2013年に同組の理事長に就任して以来、さまざまな改革に取り組み、今年1月には「地方連携室」を新設させた。

 

「日本各地に足を運んで感じるのは地方経済の疲弊です。信用組合は全国で153組合あり、店舗数を合計すると1697店舗になります。各信用組合の営業エリアや業域はその成り立ちや根拠法などを背景にそれぞれが限定されているため、信用組合同士でぶつかり合うことはありません。

それならば、各地の地域経済を盛り上げるために協力し合い、協同組織金融機関として新しい価値を創造できないか、そうした考えのもと、信用組合同士の連携を推進する部署・地方連携室を新設しました」

 

 

繋がることで 広がるアイデア

地方連携室に課せられたミッションは地方と東京を結ぶことで人や物や金を循環させることだ。

具体的な取り組みとしては、東京23区内にある同組の26店舗で物産展を開催、地方の生産者と東京の消費者を直接結ぶ試みが行われている。また、同組の店舗の一部を提携する信用組合に開放し、取引先との交流、商談やビジネスマッチングの場としても活用。

さらには、Uターン・Iターンを希望する首都圏在住の学生を地元企業が採用するための活動拠点にもなっている。
cs_nitta02「皆さんには『東京支店だと思って使ってください』と伝えています。例えば、地方から東京への進出を検討している企業があれば、その打ち合わせの場として利用してもらい、ぼくらも東京に関するあらゆる情報を提供します。

信用組合はメガバンクや地方銀行に比べると一つ一つは小さな組織です。しかし、信用組合業界は預金総額が全体で20兆円にものぼり、皆、相互扶助という同じ精神的バックボーンに基づいて運営しています。

日本は人口や経済が東京に一極集中していて、そのことが地方経済の疲弊を招いているのは確かです。ならば、ぼくらが連携することで人や物やお金を動かし、それを地方の活性化へと繋げていければと思っています。

地方創生にとって大切なことは、こうした草の根的な活動ではないでしょうか」

 

同組では店舗を利用した物産展以外にも取引先の商店街での販売会や地方の特産品を商品にした懸賞付き定期預金サービスの提供など、さまざまな場面で提携する地方の産業振興を後押ししている。

 

「地方の生産者はもちろん、お米や野菜などの特産品を購入された東京のお客様も喜んでいます。また、東京でも地域によっては人影がまばらな商店街があり、そうした商店街に少しでも活気が戻れば、ぼくらとしても喜ばしいことです。

今後は地方の温泉旅館とのタイアップ、あるいは都内の名所巡りといった旅行パックの提案も考えています。さまざまな地域と繋がりを持つことでアイデアが広がっていくことに期待しています」

 

 

隅々にまで 血液を行き渡らせる信用組合の役割

同氏がこうした取り組みに心血を注ぐのは信用組合としての存在意義を強く意識しているからにほかならない。では、金融業界における信用組合とは、どんな存在なのであろうか。
「メガバンクや地方銀行は心臓や大動脈だと思っています。いっぽう、協同組織金融機関は毛細血管です。心臓や大動脈がなければ人間は生きられませんが、それだけが機能していても決して健康体とは言えません。手足の先にまで血液を巡らせ、本当の意味で日本を元気にすること、それがぼくらの仕事なんです」

 

cs_image02メガバンクや地方銀行は営利を目的とした株式会社だ。当然、優先されるのは株主であり、主な取引先は大企業や中堅企業となる。翻って、信用組合は非営利法人であり、同じ金融機関ではあるものの根拠法も異なるため、厳密に言えば銀行ではない。

利益第一主義ではなく、相互扶助の精神に基づき、組合員の経済的地位の向上を優先し、利益はその地域の企業や社会への発展へと注がれる。

 

「メガバンクや地方銀行は株式会社である以上、負うことのできる公共性や社会性に限度があります。逆にぼくらは非営利法人だからこそ、組合員が地域のためにいいと思うあらゆることをお手伝いできます。

また、メガバンクなどは組織が大きい分、それなりの規模のマーケットがなければ動くことはできませんが、我々は身軽なので小さなマーケットでもそちらへ舵を向けることができます。

誤解しないでいただきたいのは、これはメガバンク批判ではないということです。そもそも役割が違うんです。ぼくらは心臓にも大動脈にもなれません。その代わり、疲弊した地方の地域経済を支援できるのは、中小零細企業に細かな気配りができ、地域に密着したぼくらのような金融機関であり、それこそが毛細血管であるぼくらの役割だと思っています」

 

 

地方創生に 必要なものとは?

cs_image01シャッター通りと化した商店街や子どもたちの声が聞こえない町並み、日本のどこであろうと地方を歩けば、そんな光景を目にすることは容易い。地方に元気がなければ日本全体の活力を上げることはできない。

第2次安倍政権が掲げる地方創生は、まさに地方における人口流出や地方経済の衰退を是正すべく登場した政策だ。

しかし、地方創生に関連した事業の中には、看板を架け替えただけで実質的には既存事業を継続した事業が散見されるなど、そのあり方を疑問視する声は多い。また、一部に成功事例はあるものの、地方経済の活性化が全体的には遅々として進んでいない感も否めない。

だが、同氏は「政府の施策を正面から受け止めた結果が地方連携室の新設でした」と話す。

 

「政府が目標を掲げ、補助金を出すことに対して、民間がそれをしっかりと受け止めて実行に移す。そういう流れを作らなければ、地方経済を建て直すことは無理だろうと思います。

政府が作成した地方創生の基本目標の中には『時代に合った地域をつくり、地域と地域を連携する』という一文があります。地域連携はぼくらが言い出したことではなく、政府が提言していることなのです。ぼくらはあくまでそれを正面から受け止め、実行しているだけなんです」

 

同氏の言葉や行動には地方創生を成功へと導くヒントがある。それは同氏が主体性を持って地域活性化に繋がるための事業を支援している点だ。

2014年11月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の中には地方創生の基本目標のほかに政策5原則が掲げられている。そこには「地方が自主的かつ主体的に取り組むことを支援する」と明記されている。

しかしながら、現実には中央が主導権を握り、地方に対して補助金や指導助言を行うことで、従来からある地域活性化の政策が陥りがちな中央に対する地方のぶら下がりという構造を生み易くしている。それが地方創生が進まない一因でもあるだろう。

主体性のある地方創生事業を行うには、強い当事者意識を持った地元の事業者が必要不可欠だ。だからこそ、地域に根ざし、その地域のための社会貢献に重きを置く信用組合は金融機関として最良の存在と言える。

 

 

リンクする 地方創生と創業支援

同組では起業を目指す若者や女性、あるいはアーリーステージの事業者への支援にも注力している。

5月には株式会社ゼロワンブースターと共同で東京エリアの起業家や中小企業などをターゲットにした「東京アクセラレーター」の実施を発表した。アクセラレーターとはアクセル、つまり加速させることを指す。若い企業の革新的な事業に対し、各種の専門家がサポートを行い、企業価値の飛躍的な向上を目指すプログラムである。

 

「若者や女性の創業支援を行うことも毛細血管であるぼくらの仕事です。彼らは新しいアイデアがあるのにお金がない。そこにぼくらが金融仲介機能として入って支援をする。大企業から見たら微々たるお金で彼らは事業を起こすことができるのです。

名前に〝東京〟と付けたのは、〝札幌アクセラレーター〟〝福岡アクセラレーター〟のように、いずれは日本各地で同じような試みをやっていきたいと考えているからです。

地方創生と創業支援というのは必ずリンクしているもので、相乗効果のようにして双方ともに育っていくものだと思います。ですから、日本の経済を盛り上げる草の根的な動きの芽が、今後はさまざまな地方から出てきたらいいなと思っています」

 

 

成熟した社会を目指して

高度経済成長期、安定経済成長期、バブル期、そして平成不況。これらの過程を経た日本は現在、成熟期に差しかかっているとする見方がある。真の成熟した社会へと日本が脱皮するには、何が必要だろうか。

 

「アメリカの経済は強いと言われますが、それは多様性の文化が新しいものを生み出す力を後押ししているからです。

アメリカの銀行と言えば、シティグループなどが有名ですが、実はクレジットユニオンと呼ばれる信用組合が6500以上あり、全金融機関の半数を占め、人口の約3割が加盟者です。ヨーロッパにも同じような状況の国が多くあり、先進国ほど協同組織金融機関が発達しているものです。

cs_dks第一勧業信用組合(本店)外観

つまり、信用組合が地域経済の機動力となり、多様性の文化を後押しし、成熟した社会の実現の一端を担っているのです。

日本の信用組合の多くはこれまでメガバンクと同じような金融を行ってきました。それでは淘汰されて消滅するのも時間の問題で、衰退する地方経済を支援すべき毛細血管も消滅してしまいます。

成熟した多様性のある社会が実現するとき、金融機関にも多様性が求められるものです。だから、ぼくらはメガバンクにできないことをやらなくてはいけない。ぼくは成熟した社会とは点描画のようなものだと思っています。

一つ一つは小さくてもオンリーワンの色を持ち、それが集まると絵になるように、地方の小さな商店であってもしっかりと輝ける社会、その小さいけれど多様な点の輝きを守っていきたい、そんなふうに考えています」

 

 

今回の取材の中で同氏は「世のため人のために汗をかくのがぼくの仕事」と語っていた。事実、同氏は休みを返上し、日夜、町工場や地域の祭り、地方の商店街などに足を運ぶ。その姿は日本一、汗をかく金融マンと言っても過言ではない。

そんな同氏に呼応するように全国の信用組合が現在、同組との連携に名乗りを上げている。この機運が地方創生への、ひいては成熟した社会を実現する布石となることを願って止まない。

そして、地方経済が疲弊したこの時代に、同氏のような銀行マンがいることは日本にとっての救いであると強く感じるのである。

 

 

オビ 特集

●プロフィール

新田信行(にった・のぶゆき)氏…1956年千葉県生まれ。1981年一橋大学卒業。第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。2013年第一勧業信用組合理事長。

 

●第一勧業信用組合

〈本 店〉

〒160-0004 東京都新宿区四谷2-13

TEL 03-3358-0811

http://www.daiichikanshin.com/

 

 

 

◆2016年8月号の記事より◆

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