次世代の産業を担う【中小企業】初めて明かされる秘話
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投資先からは一切の報酬を取らない CLSAキャピタルパートナーズ・ジャパン清塚徳氏に聞く投資新時代とは?

 

オビ インタビュー

投資先からは一切の報酬を取らない CLSAキャピタルパートナーズ・ジャパン清塚徳氏に聞く投資新時代とは?

◆取材:加藤俊 /文:菰田将司

清塚徳氏 CLSAキャピタルパートナーズジャパン (2)

 

「ファンドのイメージを変えていきたい」

 

「中小企業が、事業拡大に加速度をつけるために利用してもらいたい」と語るのは、CLSAキャピタルパートナーズ・ジャパン日本総責任者の清塚徳氏。

同社は日本におけるプライベートエクイティ・ファンドの有力プレイヤーの一社として活動してきた。ファンドによる企業買収にいいイメージを持つ人は多くないのではないだろうか?

しかし、清塚氏は「そのイメージを変えたい」と何度も口にし、実際に同社は日本で確実に実績を積み上げている。なぜ好評を得られているのか?その秘密を清塚氏に尋ねた。

 

■コストカットせずに利益を出す

―そもそもプライベートエクイティというのは具体的にどういうことを指すのでしょうか?

清塚徳氏 CLSAキャピタルパートナーズジャパン (1)

企業に中・長期に資金を供給してその成長を支援し、企業価値を高めた後に株式を売却して利益を得るのがプライベートエクイティ・ファンドです。

米国・欧州で30年ほど前に誕生し、現在では銀行に次ぐ新たな資金供給の担い手として、認識されています。とはいえ、まだ日本でプライベートエクイティが利用される例は稀です。年間60件程でしょうか。これはアメリカやイギリスと比べると経済規模の違いを勘案すると20分の1、30分の1というところです。

やはり日本では「会社を売る」ことへのアレルギーがあり、どうしても案件として表に出てきにくいところがあります。

あるいは不良債権の買取りファンドとか、乗っ取りといったネガティブなイメージもあるでしょう。NHKのドラマ『ハゲタカ』のイメージそのままです。それでも、ここ数年で大分改善してきたと思いますが。

 

―CLSAキャピタルパートナーズ・ジャパンはどういった金融グループなのでしょうか?

CLSAは世界15ヶ国で展開する証券・投資グループです。香港に本社を構えており、元々は企業リサーチと証券仲介業務を扱っていましたが、その後アジア一と評価されるリサーチ力を利用して投資活動を始めました。

現在、特にアジア諸国で、医薬品、日用品などの企業に投資して高いリターンを上げています。アジアではハイテク製品よりこういった基礎的な商材が安定的に売れる傾向があります。

日本に進出したのは10年前。以後、中堅規模の企業をメインに投資を行っています。

 

―清塚代表はどういったご経歴なのでしょうか?

私は大学卒業後に、当時の三菱銀行に就職しました。最初の配属は下町の日暮里支店。それからMBA取得のための留学を挟んだ16年間、主に中小企業とやり取りする仕事をしてきました。

その後、2001年にファンド業界大手カーライル・グループからヘッドハンティングを受け、日本法人の創立に携わりました。そこで中堅企業向け投資活動を通じてプライベートエクイティを学んだ後、CLSAに移り日本総責任者として現在に至ります。ですから、新卒で銀行に入って以来、ずっと中小企業を見続けてきています。

 

―日本総責任者として、日本ではどういう会社を対象に投資を行ってきたのでしょうか?

日本では今までに700億円ほどの資金をファンド「サンライズ・キャピタル」として運用受託し、投資手法としては中堅規模の企業投資に焦点を当てています。安定的な業種が多いですね。特に注目しているのは、同族系の企業。創業者から株を譲り受けて経営に参画するケースが多いです。

多くの場合で、社長にはそのまま続投してもらいます。創業社長とのジョイントベンチャー、と考えてもらえればと思います。

我々は赤字の会社を助けるのではありません。我々の持っている力を掛け合わせることによって大きく成長していくと見込んだ企業の方と事業を展開していくのです。ですから経営面では皆様、非常に優秀な方ばかりです。

しかし、更に海外展開などをしていきたい、あるいはより成長を加速化させたい、そういう企業の方には、我々をご利用頂く価値があると言えます。

 

 

■ 出資先を選ぶ目

―御社の事例を見ていると、特にアジアに展開出来ることが強みとなっているように見えますが。

はい、CLSAグループにはアジア各国に詳しいスタッフがおります。例えば、「moussy」などのブランドで若者に有名なアパレル事業を展開しているバロック・ジャパンも海外展開するために当社と手を携えました。提携スタート時に売上約300億円だったものが、5年で2倍以上になり、店舗数100店を、海外29店含め360店舗まで拡大できました。コストをカットして利益を出すのではなく、共に成長する、一緒に経営を考えさせてもらう、ということです。

 

―中国などアジアへの進出に躊躇する企業も多いと思いますが、御社が海外進出に自信を持っている、その要因はなんですか?

勿論、色々な専門家がいることもあるのですが、根底にあるのは、リサーチ力でしょうか。

訪日外国人が日本で何を買っているのか、どんなものに人気があるのか、ということです。例えば中国人も渋谷109等で買い物をします。人気のファッションの傾向は日本と同じなのです。日本企業が中国で失敗する傾向として多いのは、セカンドライン、つまり安い商品を出していく場合や、一店・二店と少しずつ出店していく方法です。これでは現地で認知されないし利益は上がらない。

勿論一概にはいえませんが、例えば、我々なら100店一気に出すことも考えます。そして価格は日本より高くてもいい、と。また、スタッフも現地で採用します。勿論、初期的な教育は日本人がします。中国語を話せる日本人を一年間駐在させてスタッフを教育させたりします。こうやって、アジア展開のノウハウを、今までの経験から得ていることは当社の強みです。

 

―海外進出のノウハウを提供することで、御社はどのような対価を得るのでしょうか?

皆さんビックリされるのですが、当社は投資先から一切の報酬をいただきません。当社から派遣する人間の給与・経費なども全てこちらで持ちます。我々はキャピタルゲインだけ。三年後・五年後に投資先の株価の上昇によって得られる利益だけです。

だから何よりも会社選びが大切になってきます。そもそも、我々がなぜ中小企業をターゲットにしているのか。

我々は規模によって投資先企業をスモール・ミッド・ラージと分けているのですが、ラージ企業の案件は年間で5件程度です。ミッド企業が20件、スモール企業で35件ほど。年に何件もない大きな会社の案件を追いかけ続けるのだったら小さな会社を丁寧に選定していきたい。それによってこそ我々の本当の価値をわかってもらえると思います。

 

 

■エクイティファンドが投資したい企業とは?

―中小企業が対象となると、どのようにリストアップしているのでしょうか?

重視するのは事業の質です。まず、社会性や公共性があるものか、希少性があり誰も真似できないものかどうか。そしてもう一つが安定性。景気の上下に左右されないか。この三つがあればある程度、業績を伸ばせます。

例えば、我々はミライブという中古車オークション運営会社に出資し、北関東でNo1企業に成長させましたが、中古車業は地方ではなくてはならないし、海外からも需要がある。こういう業種がいいですね。

 

また、経営者の高齢化によって、会社を畳むか別の人に委ねるか、どちらか迫られているという所も多いです。

経営を委ねるとなると日本の場合は、事業会社に買ってもらうか、ファンドと組むかという選択になることが多いのですが、そこはファンドのイメージが悪いので。ならば、と事業会社と組むと、社長は変えられ、従業員は削減、重複している事業は止めさせられと、思いもよらぬ厳しい状況に陥ることもよくあります。

 

ファンドには事業性の色がないので人材は財産と捉えて大事にします。創業社長が我が子のように思っている会社を、安心して預けられるのはどちらか、を見極めてもらいたい。

我々は原則従業員の給料を下げないし、寧ろ上げています。ファンドを毛嫌いせずに、判断の材料に入れてもらいたいのです。この雑誌によって誤解が解ければいいと思っています(笑い)。

 

―最後に、今後の日本におけるプライベートエクイティの展望についてお聞かせください。

先年、消費税率と合わせて相続税率も引き上げられました。未上場株では納税できませんので上場かM&Aによって株式を現金化しないといけません。ですから高齢になった経営者が保有株式を売却することは、今後も増えていくでしょう。

他にも最近増えているのが、50代の創業社長が、まだ現役でやれるのだけど、今のままだと成長を思ったほど加速できないので、敢えて過半数の株式をファンドに移してジョイントベンチャー化するものです。

私はこれが、最も日本的な投資形態だと思っています。これが増えていくと、日本らしいプライベートエクイティが増え、企業とファンドが、より良い関係を築けるでしょう。

ファンドが協力することによって、それまでできなかった新商品・海外展開・IPO準備などに着手することができます。我々もIPOしないとリターンがでませんので全力でバックアップします。また、事業が拡大することで、そこで一旗揚げたい、経営に参加したいと考えて入社してくる人材も増えます。

こういう効果があることを、身近な人や銀行のファンド専門家からでも聞いてもらいたい。そしてできたらファンドの人間にも会ってもらいたい。自ら選択肢を狭めることなく、どこが自分の会社の将来に良いのかを考えてもらいたい。

日本のプライベートエクイティ業界には積み上げてきた600件もの実績があります。是非それらの成功事例を有効活用していただきたいと願っています。

 

―ありがとうございました。

 

オビ インタビュー

清塚 徳(きよづか・めぐみ)氏…1961年9月群馬県生まれ。滋賀大学経済学部卒業後、カリフォルニア大学バークレー校 ハース・スクール・オブ・ビジネス修了(MBA 経営学修士号取得)。

大学卒業後、1985年より三菱銀行(現 三菱東京UFJ銀行)に入行。16年間の在籍期間の内約10年間に渡って、日本や東南アジア諸国でのM&Aアドバイザリー業務や、シンジケートローンアレンジ業務を担ってきた。2001年、カーライル・グループへ転じ、ディレクターとして主に消費財、ヘルスケア、化学、製造業等を中心とした企業のバイアウト投資に従事。そして2006年4月、CLSAキャピタルパートナーズジャパンに入社。中堅企業向けバイアウトファンド「サンライズ・キャピタル」の立ち上げに参画し、そのまま日本総責任者として投資活動全般の統括・指揮にあたっている。

 

・CLSAキャピタルパートナーズジャパン株式会社

〒105-0021 東京都港区東新橋1-9-2 汐留住友ビル16F

電話03-4578-6300

http://www.clsacapital.com/fund-sunrise-people-japanese.html

 

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