次世代の産業を担う【中小企業】初めて明かされる秘話
日本再生の鍵を探せ 企業x学校物語

M&Aマッチングサイト『Tranbiトランビ』 長野県の町工場が運営という驚愕の事実!

 

オビ 企業物語1 (2)

M&Aマッチングサイト『Tranbiトランビ』 長野県の町工場が運営という驚愕の事実! 

◆取材:加藤俊 /文:菰田将司

オビ ヒューマンドキュメント

トランビサイトTranbiトランビのWebサイト

社長高橋聡氏に聞く「自由なM&A」とは?

『Tranbiトランビ』は匿名でM&Aの相手を探すことのできるオンラインサービス。日本のM&A市場に新風を吹き込もうとしている。その運営は長野県の町工場だという。

M&A仲介業者は信用できるのか?という心配している人は多い

通常M&Aは、M&Aアドバイスを専門に行う仲介業者を介して売り手と買い手が繋がるのが一般的だ。だが仲介業者の言いなりになってしまうことで、売却額・売却先や、仲介業者への支払手数料等、決して満足の行かない契約を取り結んでしまう事例が指摘されている。 このような状況にあるM&A市場に、新しい風を吹き込もうとしているサービスがでてきた。Tranbi トランビだ。

トランビとは?

トランビは仲介業者が介在しないで完全匿名でM&Aの相手を探すことのできるマッチングサイト。「M&Aの相手を自分で探せる」を謳い文句に2011年にサービスを開始し、マッチング(連絡先交換)件数は300件近くに登っている。 運営するのはアスク工業。長野県の町工場だ。創業40年を超える工業資材メーカーであり、スキー・スノーボードの材料として使われる『アスナーシート』では日本屈指のシェアをほこる。この正真正銘の町工場が、なぜM&Aのサイトを立ち上げることになったのだろうか。「自分自身が疑問を抱いていたから」と高橋聡社長は語る。

高橋聡氏 トランビ高橋聡氏

「私は親からこのアスク工業を継いだのですが、会社を大きくするにあたって、前職がアクセンチュア(ITコンサルファーム)だったこともあり、M&Aを利用することを考えていたのです。それで買いたい企業を自由に探せるサービスがあればと思ったのですが、無かったので、自分で作りました」(高橋氏、以下同)

 

事業承継はどこの経営者にも大きな悩みの種になっている。もし外部から有能な後継者を入れることができたら、経営者は安心できるだろうし、売却することで利益を得ることもできる。しかし、そのメガネに叶う企業を、一人で見つけ出すことは非常に困難だ。

そこで、M&Aを仲介してくれる業者に依頼するのが通例なのだが、信頼できる仲介業者を見つけるのはとても難しい。仲介業者の利益の源はM&Aが成立した際の成功報酬。となれば多少希望条件にズレのある企業同士でも強引に結びつけるようなこともあるだろうし、また、あまり成功報酬の期待できない小規模の契約には熱心になってくれない傾向がある。

意にそぐわないM&Aが行われたために、従業員の解雇・会社の縮小、売却条件の譲歩など、不本意な結果になってしまうことも少なくない。

 

M&A市場のこうした状況を憂えた高橋社長は、ネット上で登録それも匿名でできて、そこに売却希望条件を記載して、気軽に買い手を探せるトランビを作った。

 

「条件を示しておき、それに興味を持った企業が直接連絡を取り合うことができるようにしています。このサイトの目的は、売り手・買い手の両者が連絡先を交換できる『場』を提供すること。登録すると売込みの営業が来るんだよね、仲介がいるんだよね、というのをユーザーの方は気にする。だからそういうのを徹底的に排除できる仕組みにしたのです」

 

トランビ利用者は?

完全無料で自由にありとあらゆる分野から売買の希望を募れることにより、新しいコラボレーションの可能性も生まれてきている。

 

ネットカフェを30店舗ほど経営していたある企業が、新たな事業としてリラクゼーション・マッサージを開業したいと考え、既存のネットカフェを手放したいという希望を持っていた。そこでトランビに登録して探したのだが、登録後すぐにに10件ほど連絡があり、そこから絞り込みを行って成約に至ったそうだ。「トランビに登録しなければ、見つからないだろうところからの方でした」とは売却企業の弁。

 

ほかにも仲介業者が匙を投げた案件で成約が決まった事例がある。ある印刷会社の案件なのだが依頼を受けた仲介業者は、印刷会社からの売却希望ということで買ってくれそうな印刷会社を片っ端から営業をかけてみたが、どこもダメ。売却金額も5000万円程度と小規模だったので、ダメ元でトランビに登録してみると、すぐに数件の連絡が来た。

それも中身は社労士の人や、脱サラして印刷業したい人など、おおよそ印刷とは関係の無い人ばかりから。

 

「どうしても仲介業者は『こういう業種が必要としているだろう』と当て込んで営業や提案をします。しかし、トランビにおける今までのマッチング案件を見てみると、思いもよらぬ出会いということがほとんどなのです」

 

実際、トランビのサイトを見て感じるのは、売却希望金額が1000万円以下の案件は副業や脱サラなどの延長線上で語られるようなノリ。言い換えれば、そういう希望の人が集まれる『場』が今までなかったということだろう。高橋社長曰く、現在では1300人くらいの法人ユーザーが登録しているとのこと。事実、「売却希望案件を掲載すれば、たいてい買いたいという人から連絡は来る」とのこと。マッチング(連絡先交換)の依頼数は一件につき平均二件。二人は希望者が見つかる計算になる。

 

仲介業者との共存路線にした理由

完全無料で仲介業者が介在しないということは、当然トラブルも自己責任になる。2012年9月にリニューアルした後は、サイト上に仲介業者の紹介を挙げるようになっている。

 

「どうしても経験のない者同士だと、交渉の進め方が分からない、という問題がありました。そういう事務レベルの問題を放置していたので登録ユーザーが伸び悩んだ時期がありました。そこで仲介業者もオープンにして、仲介業者とも会えるようにしたんです。まだまだご紹介している仲介業者の数は多くないのですが、完全にオープンなプラットフォームとして業者と話ができるのは、このサイトしかしかないと自負しています」

 

しかし、こういう価格破壊みたいなことをして、仲介業者から横槍が入るようなことはないのだろうか?

 

「M&Aの仲介をしているわけではないので、敵とは見られていない。多くの仲介業者や士業の方々が積極的に活用できることを重視して設計していますので、むしろ手を繋ぎませんか?という話が多く来ます。」

 

トランビを効率的なM&Aの案件収集マシーンとして利用したいと考えているのだろう。確かに仲介業者の視点で考えてみれば、案件のクオリティや安全性、案件発掘にかかる営業人員コストや時間などの点を含め、闇雲にM&Aを希望する企業を探すことに比べ遥かに効率的だ。仲介業者はその点で競合関係にはならないのだろう。

 

町工場が運営するワケ・経営者のニーズを満足させる「場」として

仲介業者と競合しないことは、このビジネスモデルが有効であることの証だ。このモデルに高橋社長が気づいたのはなぜなのだろうか。

 

「元々自分のやっている工業資材の事業は、安定性があるが成長性の低い事業なので、新たな事業の掘り起こしを考えていたんです。その時、自分自身の経験から、M&Aの仲介業者が多額の手数料を貰っていること、経営者は自分ではM&Aの相手を探す手立てがないこと、買いたい・売りたいと思っても自発的に動き出すことができず仲介業者に委ねるしかできないことなどに違和感を覚えたのが元々の発端です。

そこで、自分たちで、自発的・自主的にM&Aの相手を見つけようと考えたのですが、既にアメリカには幾つか自分たちで相手を見つけるサイトがあったので、これと同じようなモデルを日本でも導入しようと考えました。ただ、アメリカの仕組みでは仲介業者がサイト内の案件全てを管理していて、一つの案件が30万円というサイトもあれば、サイト講読料だけ一ヶ月3000円くらいのサイトもありました。

アメリカでもまだ仕組みが定まっていない。そこで、自分が利用者だったらこういうのがいいな、と考えてサイトを作ったんです。ですのでユーザー目線で、金銭的な負担をなくし、さらに使い易いことを最優先に考えて運営しています」

 

特に見てもらいたいのは中小企業の経営者、と高橋社長は言う。

「特にユーザー層を絞るようなことはしていないが、中小企業の経営者には積極的に使ってもらいたいです。これからM&A全般や債務保証、資金調達などといった経営者のニーズを汲み上げる形を充実させていきたいと考えています。

売るためにはどうするのか、という経営相談でもいい。そういう悩みを解消する『場』として使って欲しい。

人によっては登録することで、経営情報が流出することに不安を感じることもあると思います。だが、登録は匿名でできるので問題はありません。また、サイトに登録してくれた人には、私が直に会うことにしています。ありもしない案件を載せられるリスクを軽減させるためだが、利用者の方の安心材料にもなってもらえれば。

また、買い手側では、退職した個人や個人事業主、事業の拡大を考えている企業等、会社や事業の買取りに興味のある方みんなに使ってもらいたいです。まだまだサービス内容や使い勝手は途上ですので、これからスピードをドンドン上げていきます。

とりあえず登録して、時々覗くだけでいい。大事なのは情報がオープンにたくさんの人に見てもらえること。気軽に使ってもらいたいです」

 

M&A仲介の人間が考えた仕組みであれば、トランビは今のように完全無料で自由な形にはならなかっただろう。町工場が考えた仕組みというところにトランビの面白さがあり、未来があるように思える。

オビ ヒューマンドキュメント

高橋聡…アスク工業株式会社代表取締役社長。

Tranbi トランビ

http://www.tranbi.com

アスク工業株式会社

http://www.ask.gr.jp/

〒381-0023 長野県長野市風間2034-25

TEL:026-221-2211

 

2015年12月号の記事より
WEBでは公開されていない記事や情報満載の雑誌版は毎号500円!

雑誌版の購入はこちらから

お問い合わせ

本記事に対する、ご意見ご感想をお待ちしております。
BigLife21に対するご感想などもお気軽にお問い合わせ下さいませ。
※メールアドレスが公開されることはありません。

最新号ご案内

詳細を見る »

こちらからご購入いただけます

 

アクセスランキング

立ち読み

「BigLife21」の記事の一部をPDFで立ち読みすることができます。

読者プレゼント

Top