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大学生の疑問に経営者が本音で応える

玉川大学コスモス祭 経営学部内の講演会

◆取材:加藤俊 /文:橘夢人

オビ インタビュー玉川大学経営学部講演 (1)

経営のおもしろさとは? 国際時代の企業に必要なものとは?

第一線で活躍する経営者にとって、現役の大学生と直接向き合う機会はそう多くはない。そんな中、その貴重な機会となる講演会が、玉川大学の学園祭「コスモス祭」で経営学部国際経営学科の1年生向けに行われた。

「経営のおもしろさを語る」をテーマに、経営者ならではの困難とやりがいをストレートに伝えた密度の濃い講演に続き、パネルディスカッションも開催。企業の海外進出をキーワードに、国際化を見越した中小企業のこれからにまで話が及んだ。その内容を紹介する。

登壇者

株式会社スモールビジネス研究会 代表取締役 齋藤真織
・株式会社グローブリンク 代表取締役社長 近藤恵理子
株式会社アイテクノコーポレーション 代表取締役 小玉智仁

ビジネス支援のエキスパート2人が語る、経営者業の魅力と責任

6つの困難を乗り越える、経営者にしか持てない“特権”

玉川大学経営学部講演 (8)

最初に登壇した齋藤社長は、1966年生まれ。国内・外資系証券会社を経て、2000年にITベンチャー(株)テレウェイヴ(現(株)アイフラッグ)の取締役に就任。9年間で8業界40以上の新規事業を立ち上げ、2009年に代表取締役として退任後は、中小企業や企業を考えている個人へのアドバイスや実践を目的とした(株)スモールビジネス研究会を設立した。2013年にはビジネスやアイデアをやりとりできる会員制コミュニティサイト「スモールビジネスデパート」をオープン。あらゆる人がビジネスオーナーになれる社会を目標に、ベンチャー企業や上場企業の経営者をはじめ、企業の社員や起業を目指す主婦や学生たちの起業のサポートや販路の拡大、海外進出支援などを行っている企業家だ。

 

そんな齋藤社長から、これから社会人になる学生に贈られたのは、「どんな仕事にせよ、自分が入った会社がずっと同じまま10年、20年続くことはありえないことを忘れてはいけない」という、大学1年生に対してはきつい一言。ネガティブにも取れる言葉だが、ぜひポジティブに捉え、自分のやりたいことは何かをよく考えてほしいという。

その理由は「自分のやりたいことを軸にした方が、人生はきっと楽しいから」だ。「経営者は、経験したことが無いことばかりが起きるが、言い訳もできず、全責任を負う立場。絶えず自分の足りない所を補う必要もあるし、すべて不確実な中で決断し、みんなの期待に応えて結果を出さなくてはならない。

追い込まれて逆境になった時に、絶対にできるという確信がある人以外お勧めはできない」としながらも、「経営者の特権は、自分が考えたことが実現できること。僕が経営者の道を選んだベースもここにある。きれいごとに聞えるかも知れないけれど、先に挙げた6つの困難を越えるやりがいを200%感じています」と経営者の魅力を話してくれた。

 

海外へ向かう日本企業に“本当に意味のあるサービス”を

玉川大学経営学部講演 (12)

続いて登場した近藤社長は、世界的調査会社である米国ダン・アンド・ブラッドストリート社(D&B)の日本総代理店の企業アナリストとして、そのキャリアをスタート。2000年に代表取締役に就任し、就任当時約40名だった社員を10年間で100人まで増員するほどに業績拡大の後、2010年に独立。現在は東南アジアを中心に、世界各地での日本企業の海外進出支援サービス行っている。

経営者になった原動力は、よいモノやサービスを持ち、それを必要とする海外市場もあるのに、うまくリンクできずに苦戦する日本企業のサービスや技術、製品にもっと世界で成功してもらいたいとの情熱だ。そんな近藤社長にとって経営者としてのやりがいとは、「自分自身の判断で、お客様のために本当に意味のある正しいサービスを実行することができる」ことだという。パートナー探しから契約交渉、契約の履行の監督・指導まで行う徹底した質の高いサービスも、こうした経営者の信念の結晶。熱い経営者の思いが垣間見えた。

 

 

パネルディスカッション キーワードは「海外」、これからの中小企業と学生に必要なこととは? 玉川大学経営学部講演 (16)

 

これからの中小企業はどのように海外と付き合っていくべきでしょうか?

近藤:人口の減少もあり、国内需要に応えるだけでビジネスを完結させるのは徐々に難しくなるでしょうね。一方、海外市場には日本製品への大きなニーズがあり、そこをうまくつなげば果てしない可能性があると思います。

齋藤:また、たとえ国内にいたとしても、日本を訪れる外国人観光客数や日本で就労する日本国籍以外の人もどんどん増えている。海外の人々とビジネスをすることは避けて通れなくなっています。

小玉:僕も、改めて海外進出というよりは、最初から海外を含めたビジネスを行うのがスタンダードになってくると思います。学生の頃から海外に目を向けていれば、自然にその感覚が身につきそうですね。

 

海外の利害関係者と良好な関係を築くための秘訣はありますか?

近藤:信用できる相手を見極め、厳選し、誠実に付き合うことに尽きます。一番重要なのは見極めですが、そこは紹介のプロをうまく活用していいと思います。

齋藤:世界は日本に比べて格段の階級社会であることを知っておいた方がいいですね。その上で、どの階層の人と付き合うのか、その中で誰と知り合うのかの2つが重要です。自分が信頼できる人が「信頼できる」と紹介してくれる人が一番信頼できます。

 

英語力はどこまで必要でしょうか?ほかの言語も身につけたほうがいいでしょうか?

近藤:海外と何らかの形で関わりたいなら英語は必須です。それ以外の言語はあればプラスにはなるでしょうが、それを身に着けるのに時間を割くなら英語を極めた方がいいかと。どこの国でも英語でビジネスはできます。

齋藤:英語ができないと日本にいてすら、仕事ができる機会は減ってしまいます。まずコミュニケーションができること、更に可能であれば一歩進んで、なぜそういう言い回しやフレーズが生まれたのか感じ取れる力をつけると、そのほかの語学の勉強にも役立つと思います。

小玉:近藤さんもおっしゃっていますが、ビジネスの世界はどこへ行っても英語。外国語というより、第二母国語ぐらいのイメージで臨んだ方がいいでしょうね。加えて現地の言葉でのプレゼン能力もあれば、コミュニケーション能力の1つとしてすごく役立つと思います。

 

学生ベンチャーを起こしたいのですが、実力のないうちから公言していいのか不安です

齋藤:「公言しないんなら意味無いじゃん!」と言いたいですね。学内外に自分のやっていることを表明すれば、ダイレクトで反応が来ます。学生でありながら、1人の人間として社会に出た状態になれるのです。そんなお得なことは絶対にやるべきです。

 

経営自体に興味はあるのですが、自分のミッションをどう見つければいいのか分かりません。

齋藤:若いうちはこうなりたいという人に出会ったら、どうやってそうなったのかを聞きにいけばいいんです。そういう人たちもかつては皆何も知らない学生でした。直接話を聞きにいけば、意外と多くの人が喜んで教えてくれますよ。

 

オビ インタビュー

株式会社スモールビジネス研究会 代表取締役 齋藤真織(さいとう・まおり)…1966年生まれ。上智大学法学部国際関係法学科卒業後、日本長期信用銀行(現新生銀行)入行。ニューヨーク大学経営大学院へ留学、1997年経営学修士(MBA)取得。メリルリンチ証券東京支店(現メリルリンチ日本証券)勤務を経て、2000年、ITベンチャー(株)テレウェイヴ(のち(株)SBR、現(株)アイフラッグ)取締役経営企画室長就任。2003年同社上場をはさんで9年間で8業界40以上の新規事業を立ち上げ。代表取締役として2009年7月同社退任、同年9月に(株)スモールビジネス研究会設立。受託事業としてのコンサルテーションと自社事業立ち上げを行いながら現在に至る。

株式会社スモールビジネス研究会 〒150-0002東京都渋谷区渋谷2-19-20

http://www.3sb.jp/

http://business-department.com/

 

株式会社グローブリンク 代表取締役 近藤恵理子(こんどう・えりこ)…日本女子大学英文科卒。世界最大の企業調査会社である、米国ダンアンドブラッドストリート(D&B)に入社後、地道に調査分析業務畑を歩むが、図らずも2000年から10年間D&Bの日本法人の社長として毎年二桁の成長を遂げた。外資系企業でお茶くみから社長になった日本で唯一の女性。日本の中小企業を救いたいという一心で2011年に独立起業し、現在中小企業の海外進出支援サービスを展開している。福岡県大牟田市出身。

株式会社グローブリンク 〒107-0052東京都港区赤坂1-7-19キャピタル赤坂ビル2階

電話番号:03-6441-0438

http://www.globelink.co.jp/

info@globelink.co.jp

 

株式会社アイテクノコーポレーション 代表取締役 小玉智仁(こだま・ともひと)…神奈川県横浜市生まれ。私立桐光学園中学高等学校卒。私立慶應義塾大学 文学部史学科東洋史学専攻卒業。大学卒業後、中華人民共和国広東省広州市に3年間留学し、帰国後、株式会社アイテクノコーポレーションを設立。主に中国自動車メーカーに対して設計開発のコンサルティング業務を行う。その後、業務の多角化に伴い大手民放でマーケティングリサーチシステムの営業戦略コンサルティング、テレビ番組の制作業務に携わり、さらに産業界の著名人が集まるビジネス交流会の総合プロデューサーなど多方面で活躍。現在は、メディアを活用した新たなマーケティングやプロモーション、広告を提案。

 

2015年1月号の記事より
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