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埼玉県立新座総合技術高等学校| 『人工衛星打ち上げプロジェクト』を実務面でリードする 日本屈指の複合型専門高校

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埼玉県立新座総合技術高等学校 人工衛星打ち上げプロジェクト』を実務面でリードする日本屈指の複合型専門高校

◆取材・文:小川心一

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03F_Niizasougou01情報技術科教諭/横田一弘氏

重ねてきた3年の取り組みがやがて大輪の花を咲かせる!

全国初の複合型専門高校として、時代の先端を走る埼玉県立新座総合技術高等学校。より高度な専門知識や技術を身に付けた生徒を多数輩出し、OB・OGは各界で活躍を見せている。今回は全国工業高等学校長協会(全工協)の記念プロジェクトで活躍する同校の横田一弘教諭を訪ね、その意義を伺った。

※この記事は、『人工衛星打ち上げプロジェクト 夢を飛ばせ!工業高校生手造り人工衛星!』で取り上げた工業高校生の手造り人工衛星づくりを追った記事になります。

『人工衛星打ち上げプロジェクト』に本格参加中

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全工協が推進する、同協会100周年記念『人工衛星打ち上げプロジェクト』。全国の工業高校を横断する一大企画なだけに、まだまだ解決すべき問題も山積している。しかし、参加を希望している各校も決して手をこまねいているわけではない。それぞれ協会のミッションに参加したり、あるいは独自の取り組みでこのプロジェクト成功のために準備を続けている。

そんな学校の中で、目覚ましい活動を行っているのが新座総合技術高校だ。工業高校が一致団結して行う、この『人工衛星打ち上げプロジェクト』について、横田教諭はその意義をこう語る。

 

「小型の人工衛星・キューブサットの打ち上げに東大をはじめとして日本の大学は成功しています(キューブサット:大学の研究室などが製作する小型人工衛星の規格)。また、高専でもすでに成功を収めている。それなら我々工業高校もやろうじゃないかと、全工協が全国の工業高校に参加を呼び掛けたわけですが、埼玉県からは私が参加しているんです。JAXA(独立行政法人宇宙航空研究開発機構)としても、大学など、すでに実現してしまった団体が新たに人工衛星を上げるよりも、高校生が上げるという方がそれだけでインパクトがあって宇宙開発への関心を持ってもらえるメリットがあるはずです」

何とも壮大な企画だが、実務的な部分については組織作りと同時に一から学んでいく必要があったという。

 

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「最初は人工衛星をどうやって作っていいかも皆目見当がつきませんから、高専や大学に直接聞きに行きました。そんな中、東大の中須賀教授(小型人工衛星研究の権威)にお話を伺う機会を得ました。そこで教授から『缶サットから始めなさい』との助言を得ました。東大でもこの『缶サット』が人工衛星の第一歩だったそうです」

空き缶サイズの模擬人工衛星を作る『缶サット』。理工系高校生の技能向上を目指す規格であり、その性能を競う全国大会『缶サット甲子園』が毎年開催されている。自作した缶サットおよびキャリア(缶サットを搭載する機構)を打上げ、上空での放出・降下・着地の過程を通じて、技術力・創造力を競う競技会だ。

 

「缶サットの機構設計や、実際の組み立て等、高校生自身が考え、解決していくことが彼らの将来の夢実現につながっているわけです」

新座総合では、この大会に照準を合わせて3年前から有志によるチームを発足。昨年、今年と2年続けて参加している。

 

「本校として取り組み始めて3年。年を追うごとに学校としての蓄積も出来ていくので、だんだんと難易度の高いことに挑戦出来るようになっていきます。そして、その進化の行きつく先が『人工衛星打ち上げプロジェクト』で実際搭載してもらえるような技術になるのかなと思いますね。そういう形こそ、生徒主体で実現するプロジェクトの姿なのでしょう」

メンバーは缶サットを作り上げるために多くのエネルギーを傾けてきた。授業でもなく、部活でもないこの活動を通じて得たものは大きいはずだ。

 

 

目標は平成31年の打ち上げだが…

人工衛星_躯体試作2号機

新座総合を含め、全国の工業高校でそれぞれの取り組みが成されているが、プロジェクト自体にはまだ問題点もある。

「学校独自の取り組みを、プロジェクトに還元していかないといけないのですが、現在のところ、まだ具体的な動きがないのは少し気になりますね。100周年は平成31年なので、5年以上残っていますから、まだ余裕があるようにも見えます。しかし、実際にロケットに載せる2年前には搭載ロケットが確定して、その1年後には検査にパスしないといけない。そう考えるとそれほど時間はないんじゃないかと思っています。教員の側で基礎研究を進めておかないと、生徒に何を作ろうと言えない。私は、私の受け持ちをいわば独断で進めているところです」

横田教諭は人工衛星からの通信について、独自に研究を進めている。また、打ち上げる人工衛星が担うミッションについても思いを馳せているところだ。

 

「工業高校は北海道から九州まであります。これは広域で電波を拾えるというメリットがあるわけです。それを活かした高校生らしいミッションを人工衛星に与えたい。それこそ高校生が打ち上げる意義でしょうからね」

数年の後、工業高校生の夢を載せた人工衛星の話題が、メディアをにぎわしているに違いない。

 

 

新座総合技術高校、『缶サット甲子園』参加メンバー集結!

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  『缶サミット甲子園』プロジェクトメンバー。写真左から高沢くん、吉田くん、杉田くん、清水くん

 

──皆さんの役割を教えてください。

 

杉田「プロジェクトリーダーを務めました。本校が製作した缶サットの、シャボン玉機構のタービンやモーターの担当です。2年前の先輩方が作って上手くいかなかったミッションを成功させようと頑張ってきました」

吉田「サブリーダーです。基盤とプログラムを担当しました。基盤は自分一人で作り上げました。出来は歴代一だと思っています」

清水「キャリア作製を担当しました。衛星を上空に運ぶ入れ物がキャリアです。試行錯誤の連続で大変でしたが、無事に成功しました」

高沢「この缶サットのプレゼンテーションを担当しました。大会で我々の作った缶サットの特長や性能をアピールするのが役割です。実演(実際に衛星を打ち上げる)前後でプレゼンを行い、好評を得ました」

──缶サット作りに参加するきっかけは?

杉田「先輩たちの上げている缶サットを見て、自分もやってみたいと。今年は関東大会で4位でした。2位までが全国大会で出られるのですが、点差はわずか。先輩たちの分まで頑張ったのですが、残念です」

清水「この学校に入った時から缶サットの取り組みを知っていましたが、1、2年時は部活(硬式テニス部)が忙しくて参加できませんでした。3年生になって杉田君に勧誘されてやっと参加できました」

吉田「2年生の時に横田先生の勧誘で入りました。とても有意義な活動を続けてきてよかったと思います」

高沢「僕は他のメンバーと違って一人だけ国際ビジネス科なので、彼らからプレゼンをして欲しいと頼まれての参加でした。授業でもやっていることなので、それを活かす機会を得られたことは自分自身のためにもよかったと思っています」

杉田「実際、高沢君に頼んだおかげで、大会の採点でも我々が行うより間違いなく高い点数が得られたと思っています。実験にも参加してもらって、プレゼンに活かされたと思います」

──今後の進路は?

杉田「缶サットを頑張りすぎて、残念ながら公務員試験に落ちてしまいました(苦笑)。現在就活中です」

清水「AO入試で東京工科大学に受かりました。この高校で勉強してきたプログラムをもっと続けたいと思っています」

吉田「日本電子専門学校に進学します。ゲームを作るのが夢なんです」

高沢「進学します。国家公務員を目指して2年間勉強する予定です」

 

──皆さん、この貴重な体験をぜひ今後に活かして頑張ってください。

 

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埼玉県立新座総合技術高等学校

埼玉県新座市新塚1−3−1

TEL 048−478−2111

http://www.nsg-h.spec.ed.jp/

 

 

2014年1月号の記事より

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