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東京都立北豊島工業高等学校 – その成長ぶりに誰もが瞠目!実習プラス独自の報告会が生徒の成長をさらに加速させる

オビ 特集

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学校と企業を行き来しながら、座学と実務訓練を長期に行う、ドイツ生まれの「デュアルシステム」が日本の専門高校に導入されてから12年。

もともと高卒者の就職率向上と、中小企業の人材不足を解消する目的で始まったが、いまやその効果も活用法も多様化し、地域全体を巻き込んだまちおこしにも活用されている。

そこで各地で定着しはじめた、デュアルシステムの活用の実際とポイントについて実例を挙げながら紹介していく。

 

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その成長ぶりに誰もが瞠目!実習プラス独自の報告会が生徒の成長をさらに加速させる

東京都立北豊島工業高等学校/校長 杉浦文俊氏

 

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デュアルシステム活用企業の想いや狙いを理解することも大切

今年で創立96年を迎える東京都立北豊島工業高等学校。同校がデュアルシステムを取り入れたのは2014年度からと割と新しい。

同校校長・杉浦文俊氏は「日本のものづくり人材育成に貢献するためには、生徒たちを受け入れていただける企業の想いや狙いをしっかり理解することも大切」と学校側の姿勢を指摘した。

同校の教育方針、デュアルシステムの実施状況や今後の課題について、杉浦氏に伺った。

創立96年目。自治の精神に則り、自律した生徒の育成を図る伝統校

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─まずは、御校の概要や教育方針について伺いたい。

 

当校は、全日制と定時制に分かれています。全日制の在校生は現在445名で、クラス数は1学年5クラス、3学年合わせて計15クラスです。定時制については、在校生は現在59名で、4年制になっています。クラス数は1学年1クラス、4学年合わせて計4クラスです。

また当校は今年で創立96年目と、その歴史は大正時代にまで遡ります。教育方針は、二代目校長が定めた校訓「自治」の精神を代々、受け継いでいます。

自治とは、文字通り「自ら治める」という意味です。また、その校訓を実践するための基本方針として、「実力主義・努力主義・反省主義」を掲げています。

 

─御校のデュアルシステムの仕組みや実施状況について伺いたい。

 

 

当校のデュアルシステムでは、全日制で学ぶ3年生の希望者が企業で実習を行います。実習スケジュールについては、夏休み、および冬休みの期間を除く、4月から翌年1月にかけて週1日、木曜日に実習を行います。

1日の実習時間については、実習先企業が定めている1日の始業および終業時刻に合わせます。 実施状況については、現在10名の生徒が9社で実習中で、各社、生徒1名、または2名を受け入れています。

昨年(2015年)度では、5名の生徒が1名ずつ5社で実習し、うち3名が実習先企業に就職しました。デュアルシステムの実施初年度にあたる一昨年(2014年)度では、9名の生徒が1名ずつ9社で実習し、うち7名が実習先企業に就職しています。

 

─実習先企業に就職しなかったデュアルシステム参加生徒の卒業後の進路は?

 

進学のほか、実家の家業を継いだ生徒もいました。また、生徒が実習先企業に就職する意思があっても、その企業が経営上の理由で新卒採用自体を中止したため就職できなかったというケースもあります。

 

 

実習後の「デュアルシステム報告会」に向け、素晴らしい成長を遂げる生徒が続々

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─どのような企業が、実習生を受け入れているのか?

 

当校と同じ板橋区内の中小ものづくり企業が中心ですが、他区の企業にも当校のデュアルシステムにご参加いただいています。中には、本社は板橋区で、実習先は埼玉県の工場という企業もあります。

参加企業の多くは、東京都産業労働局からご紹介いただいたり、当校に求人票をご送付されたのをきっかけにお声がけさせていただいた企業です。企業にお声がけさせていただくと、概ね好意的な反応があります。

また、デュアルシステムの実施初年度から実習生を受け入れ続けていただいている企業もあります。その企業には、一昨年度から2年連続で、生徒が1名ずつ就職しています。毎年、実習生をかわいがっていただいているようで、実習期間外の夏休み中も、実習生が自主的にその企業に通い続けたり、社内行事のバーベキューにも声をかけて頂いて参加しています。

 

─デュアルシステム参加生徒の実習先企業は、どのように決まるのか?

 

当校のデュアルシステム担当教員が、生徒本人の希望と適性を考え、企業との綿密なマッチングをしています。事前に生徒たちをデュアルシステム参加企業に連れて行くこともあります。

 

─実習生について、実習開始前と実習終了後の様子を比べると、何か変化を感じるか?

 

実習を通して、周囲が驚くような成長を遂げた生徒がいました。

毎年2月に実習期間終了後に成果を発表する「デュアルシステム報告会」を行います。実習生たちは実習期間終了後から準備を始め、当日は、パワーポイントで作成したスライドやビデオ映像などを駆使し、その成果を発表します。

また報告会には、実習先企業の経営者の方々もお招きし、生徒の発表に対する質疑応答も行われます。こうした報告会を開催するのは、実習生本人たちの振り返りの意味もありますが、2年生にデュアルシステムのことを知ってもらう意味もあります。

この報告会は自分を客観視する場でもあり、生徒たちの成長を後押しする場でもあります。件の生徒は非常におとなしく、実習開始前は、普段の学校とは異なる環境の中できちんとできるのか心配していたのですが、この報告会で堂々たる素晴らしい発表をしたのです。

 

やはり企業の中に入り、実際に社会経験を積んだことがよかったのでしょう。その成長ぶりには私たちだけでなく、実習先企業の経営者の方や保護者の方も大変驚いていました。その生徒は卒業後、実習先企業に就職しています。

 

 

産業界の意向を適切に反映できる仕組みが必要

─企業側は、どのような目的で実習生を受け入れているのか?

 

企業側の目的は各社異なりますが、大きく2種類に分かれます。1つは、人材確保が目的の企業です。つまり、実習生が当校卒業後に自社に就職してくれることを期待する企業。もう1つは、社会貢献が目的の企業です。

つまり、若者に実習の場を提供し、それがものづくり業界全体の活性化につながることを期待しています。当校のデュアルシステム参加企業に関しては、どちらかというと社会貢献が目的の企業が多いようです。

 

デュアルシステムで成果を上げるには、学校と企業がしっかり連携する必要があります。それには、私たちが、実習生を受け入れていただける企業の想いや狙いをしっかり理解できるように、努力すべきだと思います。逆に、そうしないと企業との連携は深まらず、当校のデュアルシステムは長続きしないと思います。

 

─デュアルシステムについて、今後、改善に取り組むべきことがあるとすれば、どのようなことか?

 

デュアルシステムで日本のものづくり産業を活性化させるには、教育界と産業界がしっかり連携する必要があります。しかし、現状の仕組みでは、その産業界の意向が適切に反映されているとは言い難い。

高等学校では、学習指導要領に基づき学習が進められますが、その改訂は、約10年に1度行われます。要するに、10年間は大きく変わらない。一方、産業界を取り巻く状況は刻々と変化し続け、それに応じて、産業界がデュアルシステムに期待する成果も変わってきます。つまり、現状の10年単位で生徒の学習内容が見直される仕組みでは、変化し続ける産業界の意向を十分に反映することはできないと考えられます。

ですから、今後、私たちを含めた関係各所が一体となり、産業界の意向を適切に反映できる仕組みづくりに取り組むべきだと思います。

 

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◉プロフィール

杉浦文俊(すぎうら・ふみとし)氏

1965年生まれ。東京都出身。都立工業高校を卒業後、大手電線メーカーにて研究職補助として勤務しつつ、大学の夜間学部に進学。その後、教員として都立工業高校2校にて計13年間、ものづくり教育の現場に携わり、東京都教育委員会指導主事、東京都立北園高等学校副校長などを経て、2015年4月、東京都立北豊島工業高等学校校長に就任。

 

東京都立北豊島工業高等学校

〒174-0062 東京都板橋区富士見町28-1

TEL 03-3963-4331

http://www.kitatoshimakogyo-h.metro.tokyo.jp

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