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木内孝胤前衆議院議員(岩崎弥太郎の玄孫)に訊く! 世界の中で存在感のある日本を目指して

 

創光 オビ 

木内孝胤前衆議院議員(岩崎弥太郎の玄孫)に訊く!

世界の中で存在感のある日本を目指して

◆取材・文:加藤俊木内孝胤氏 (10) 木内孝胤前衆議院議員

<これまでのあらすじ>前号では、木内孝胤氏に、これからの政治に求められる「穏健な保守」という考え方について語って頂いた。今号は3連載の最終回として、これからの日本を考えた際に大きなテーマとなってくる「再分配」についてお聞きしている。

筒井潔氏 塩入千春氏 西出氏 (2)

 聞き手:創光技術事務所の筒井潔所長、塩入千春シニア・アナリスト、西出孝二共同経営者

日本は再分配が小さな社会

塩入千春氏 (2)塩入:これからの日本の政治を考えたとき、木内先生はどういったテーマが重要になってくるとお考えでしょうか。

 

木内孝胤氏 (9)木内:政府による税、社会保障の再分配は非常に大きなテーマでしょう。日本は再分配がものすごく小さな社会です。再分配がきちんと行われているようでいて、そうでない。訳のわからない非効率なことが多い。農協や医師会、建設業界などの特定の団体にお金が集中して流れています。かつてはそれで経済がまわったのかもしれませんが、そうした特定の団体からのトリクルダウンを期待するという理論は今日では成り立ちません。

 

木内孝胤氏 インタビュー (6)筒井:しかし、特定の既得権益層の壁は高くはないでしょうか? 自民党の平沢勝栄先生など、「農協や医師会などの既得権益を壊すには国内の政治では難しい。きっかけとして外圧に頼るしかない。そういった意味で TPP に期待する」と仰ってますし(小誌2013年9月号『自民党・平沢勝栄議員 TPP 政府がイエスでも、国会はノーを突きつけられる!』参照)。

 

木内:それはどうでしょう。外圧任せにしてどうにかなる問題でしょうか。結局、TPP は TPPで、新しい既得権益層を作ることに他なりません。それに、農協だけでなく、日本の農業そのものが破壊されかねません。農業は国の大切な資源エネルギーの一部です。これは絶対に守らないといけません。それこそ徹底した保護主義で良い。

問題なのは農協や大手化学肥料メーカーなどに支払われている税金が、あまりにも過剰な点です。農協の施設を見てください。莫大なお金が注ぎ込まれたことが一目でわかる立派な建物が、至る所に建てられています。

これはもう、社会保障も含め、国のグランドデザインをもう一度引き直す段階に来ています。そして一から再分配を考えないと。

 

塩入:広く国民のためであるはずの政策が、どこかで歪められて末端まで行き届かず、国民が望んでいないような人達の利益になってしまうとは非常に残念ですね。それでは、もっと有効な再分配とは具体的にどのような方法が考えられるのでしょうか。

 

 

ベーシックインカム

木内孝胤氏 インタビュー (2)
木内:例えば、ベーシックインカムを取り入れる可能性などを考えないといけないでしょう。これはある種の最低保証制度です。毎月全国民に数万円の一定額を一律支払うという仕組みです。そもそも今の社会保障制度には穴があります。正規雇用と非正規雇用との間に介在した距離を縮めることができていません。それどころか、少し乱暴な言い方になりますが、社会保障があるがゆえに、人が働きづらくなる社会、生活保護があるがゆえに自立しにくくなる社会、といった穿った見方さえできなくもない。

こういう話をすると、必ず財源の話になりますが、今の社会保障は110兆円ぐらいで、35兆円の医療費を除くと75兆円ぐらいになります。その75兆円を今の人口で割ると国民一人につき毎月5万円は払える試算になるのです。5万円で足りないのであれば、7万円で考えてもいい。その場合は、控除を無くせば増税なしに支払える。もちろん、障害のある方や本当に困っている方に対しては別枠できちんとした保障を設けます。身体的なハンディキャップを持っていようが持っていまいが全員同じスタートラインに立たされ弱者が困るという極論をご指摘する方もいますが、そんな乱暴な制度設計にはなりません。

そうすると、例えば4人家族であれば、毎月28万円支給されることになります。これは一人暮らしの生活保護の人からみたら逆に少なくなるケースもあるでしょうけれども、再分配の恩恵を年代の差なく、きちんと一人ひとりの国民が受けられるようになるので、現在の不公平感は無くせます。多くの既得権益層に大鉈を振るう大改革になりますが、今の社会保障では自由に職業を選べない、職業の選択の幅を広げるという観点で、現在勉強会を定期的に行い、導入の可能性を探っています。

木内孝胤氏 (2)

「ベーシックインカムを導入すると、既存の公共サービスの多くは無くなるという指摘がありますが、これは経済の成り行きからいって、それを補填するサービスを始める事業者が出てくるものでしょう。いままで当たり前に無料だったものにお金を払うことへの抵抗感が強いのだと思います」

塩入:メリットとしては、年齢や性別に関係なく一人当たり同額が継続的に支給されるとしたら、少子化や世代間格差の問題も改善されていく可能性がありますね。また、社会や組織から対価を得られない仕事、すなわち利益を上げていない企業や部署において無益で無意味な労働に消耗する必要もなく、空いた時間をもっと人間らしい活動に充てることもできそうです。

問題は、やはり財源の確保と、現行の社会保障制度を失うことに対する不安でしょうか。新たな制度設計が自分にとって不利益なものにならないかという個々の懸念もありますし、広く慎重な議論が必要かもしれません。その勉強会ではどういったことが行なわれているのでしょうか。

 

木内:勉強会自体は多くの有識者をお呼びするのですが、ただ一般論で研究会をやってもあまり意味がないので、思想的、哲学的、宗教的、経済学的、経営学的にベーシックインカムを個別の企業に当てはめることができないかを検討しています。実際に、日本最大級のファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営する株式会社スタートトゥデイでは、前段階として様々な実験を行っています。

例えば、同社では8時間労働制ではなく、6時間労働制を取り入れています。これは同社の前澤友作社長曰く、「働く意味って何なのかを各個人に向き合ってもらう」というところからスタートさせたそうですが、2時間労働時間は減っても、生産性は落ちていないとのことです。6時間労働制の他にも幕張にある会社なので、幕張に住んでいる人に5万円の住宅手当を支払う幕張手当を設けていたりもします。

 

筒井:ベーシックインカムは経済学者だとパーレスが提唱者の一人で、ノーベル経済学賞受賞学者のフリードマンなんかも近いことを言っているようですね。私はベーシックインカムについて、賛成とも反対とも言えません。しかし、現在の市場主義的資本主義が格差拡大等の理由で終焉すると言われている今、日本で実際に社会実験が、しかも一企業によって、なされている事実は重要だと思います。

 

 

経営者という職業

西出氏 (2)西出:でもそうした取り組みを一般の中小企業が取り入れるのは難しいですよね。私は、最近の社会を見ていて、普通の人たちが一生懸命やっても生きていけなくなっている社会って本当にいいのかなと思うのです。企業でいえば、スタートトゥディのように革新的なことができているベンチャーなんてほんの一握りです。

多くの企業は、新しいことに挑戦する余力なんかない。それでも、しっかりと仕事をして継続してきています。問題なのは、そういった新技術とか革新とは無関係に生存してきた世の中の大半の企業が、いい加減息切れをしてきていることです。政治はそれをほっておいていいのかなと思うのです。

 

木内:確かに、一生懸命作った製品が、適正な値段で取引されないという問題はありますね。

 

西出:日本は、発注の流動性があまりにも低すぎる。大企業は下請けに対してコストダウンを要求してくるだけ。下請けの努力はお金に結びつきません。品質改良したことに対する評価が実利にならない構造を変えていかないと、この先多くの下請けは持ちません。例えばこういった話がよくある。「下請けが一個100円の製品を作っていて、改良を重ね品質を良くする企業努力をする。それを親会社は、110円で買うのではなく、75円で買い叩く」。こういった屈折した構図が至るところで見られますよね。

 

木内孝胤氏 インタビュー (1)

木内:一生懸命いいものを作ろうとしているところに対して、きちんとお金で返ってこないような取引を強要される。これは確かに、価値を認めようとする習慣がないと言えるのかもしれません。

ただ、私も政治家であると同時に経営者です。そういった企業は、本当に知恵を絞る努力をしているのでしょうか、とは聞いてみたい。儲けようという意識の低い企業になっていませんか、と。親会社の無理を飲まされる中小企業という構図には、昔から何も変わらず惰性で経営を行い続けている節があります。経営をしていない経営者。企業の活路を切り開けるのは、突き詰めれば、自社の努力しかないのですから。

 

筒井:実際に、不平等取引契約は多いですね。私のところにも相談は結構あります。「経営をしていない」というより、日々の資金繰りに追われて経営をする余裕がなくなっている企業が少なくないのかもしれません。

 

木内:ええ。そういった意味でも、これからは経営者の教育、「経営者という職業」を作ることが求められるのだと思います。日本が世界の中で存在感を出していくためにも、先述した「論語と算盤」や「ベーシックインカム」「公的年金基金(GPIF)」などの分野で、新しい国創りをデザインしていきたいと思います。

 

筒井・塩入・西出:今日はどうもありがとうございました。

 

筒井・塩入・木内・西出

写真右から2人目:木内 孝胤(きうち たかたね)

1966年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、東京三菱銀行(ロンドン支店、営業本部等)、メリルリンチ日本証券(投資銀行部マネージング・ディレクター)勤務を経て、2009年、衆議院議員選挙に当選。衆議院外務委員会理事、衆議院財務金融委員会、衆議院沖縄・北方問題特別委員会、民主党企業団体対策副委員長、民主党政調会長補佐を歴任。2012年、衆議院議員選挙に落選。同年、政策フォーラム「日本の選択」を設立。三菱財閥の創業者で初代総帥である岩崎弥太郎の玄孫にあたる。

木内孝胤 オフィシャルサイト:

http://takatane.com/

政策フォーラム「日本の選択」:

http://j-sentaku.net/

創光技術事務所インタビュアー

写真左:筒井 潔(つつい きよし)

経営&公共政策コンサルタント。1966年神奈川県生まれ。慶應義塾大学理工学部電気工学科博士課程修了後、外資系テスターメーカー、ベンチャー企業、財団法人等勤務を経て、合同会社創光技術事務所所長。

写真左から二人目:塩入 千春(しおいり ちはる)

合同会社創光技術事務所シニア・アナリスト。理学博士。京都大学理学部卒。総合研究大学院大学博士課程修了。理化学研究所研究員等を歴任。2013年9月より現職。

写真右:西出 孝二(にしで こうじ)

ビジネスプロデューサ・公認会計士・税理士。慶應義塾大学理工学部電気工学科卒。カリフォルニア大学バークレイ校留学。1983年に創栄共同事務所を設立、代表に就任。2010年4月より、合同会社創光技術事務所共同経営者を兼務。

 

2014年10月号の記事より
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new_frontier01

日本の伝統工芸、折り紙。いまや英語の辞書にも「ORIGAMI」として項目が立つほど、世界的認知度は高い。匠として知られる世界的作家も多数いる。しかしその優れた技術が、モノづくり産業に活かされているとは言いがたい。

明治大学研究・知財戦略機構 萩原一郎特任教授 日本の伝統技術オリガミを最先端工学に変えよ!

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