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木内孝胤前衆議院議員(岩崎弥太郎の玄孫)に訊く! 今求められる穏健な保守という考え方

 

創光 オビ 

木内孝胤前衆議院議員(岩崎弥太郎の玄孫)に訊く!

今求められる穏健な保守という考え方

◆取材・文:加藤俊

木内孝胤氏 (7)

 木内孝胤前衆議院議員

 

富をなす根源は何かと言えば、仁義道徳。
正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができぬ。
渋沢栄一『論語と算盤』

 

筒井潔氏 塩入千春氏 西出氏 (2)

 聞き手:創光技術事務所の筒井潔所長、塩入千春シニア・アナリスト、西出孝二共同経営者

渋沢栄一『論語と算盤』を小学校から

木内孝胤氏 インタビュー

筒井:木内さんは政治的には「穏やかな保守」を唱えておられますね。この穏やかな保守とはどういったものなのでしょうか。

 

木内孝胤氏 インタビュー (5)

木内:私は資本主義に対して、ある部分では懐疑的というか、これで良いのだろうか、という一抹の不安を覚えています。「会社は株主のもの」に代表される資本主義の考え方は、ROEの向上など短期的な利潤追求が行き過ぎる面があります。近年、日本でも貧富の格差は広がる一方です。いまの考え方では、こうした多くの問題を解決できないのです。

私は、日本が、アメリカ流のコーポレートガバナンス理論をそのまま取り入れるのには、無理があると思っています。アメリカは資本主義国家ですが、一方で寄付の文化が非常に発達しています。これはキリスト教文化が根底にあるからであり、成功者は驚くような額の寄付を行うのが一般的です。(アメリカの貧富の格差は日本以上に深刻ですが)このように、自浄作用が働き、バランスをとれる仕組みがあります。

翻って日本では、忌まわしい戦争の記憶によって、「宗教」や「道徳」というものに対するアレルギーが未だ根強い。寄付文化のような資本主義一辺倒を自浄する作用がうまく発展・機能していません。だからこそ、ここで、行き過ぎた資本主義を是正するものを持ち出す必要があるのです。

木内孝胤氏 (4)

幸いなことに、日本には古くから他者を思いやる素晴らしい思想があり、また八百万の神様など、良い意味で「なんとなく」色々な文化や宗教を「いいとこどり」する土壌があります。堅苦しく批判するよりも、緩やかになんとなくバランスを保っていて良いじゃないかと。

しかし、敗戦という経緯でのアメリカ文化の流入、そこから先進国へと駆け上がる中で、そうした日本の伝統文化の良い面が失われて、今もってなお、取り戻されていない。明治維新から冷戦構造が終結した90年代初頭まで続いた「追いつき追い越せ」という国家目標があった時期はそれでよかったのでしょうが、国家目標を失い漂流しているのが今の日本です。多くの方が漠然とした閉塞感を覚えています。これら失われようとしている日本らしい伝統文化や思想を、資本主義が内包する危険性に対してうまくバランスを取る力として作用させることは、将来にとって非常に有効だと思うのです。

 

木内孝胤氏 (6)

西出:具体的にはどういった方法を考えているのですか。

 

木内:先ほど申し上げたように、大上段に「宗教」「道徳」ではアレルギーや反発がありますが、渋沢栄一先生の『論語と算盤』は取り入れ易い。初等教育の段階から学ぶべきだと考えています。教育現場の改革はより良い未来の日本にとってとても重要で、必要なことです。日本古来の伝統と文化を重んじ、日本人の強みである、「勤勉さ」、「礼儀正しさ」、「追求完美」、更には「他人の幸せを自分の幸せのように感じる日本の美質」をもう一度学び直すことで、いまの資本主義が解決できない問題を解消していけるはずです。

木内孝胤氏 (5)

政治家を志した理由は「日本のプレゼンスを再浮上させるために何かできないかと外資系の投資銀行にいたときから考えて、政治に問題があると思いました。やることなすこと無駄遣いで増税ばかり。企業は経営しにくく国民も生活しづらい場所になっていくことへの危機感を覚えて政治を志したのです。
実際に政治世界に入ると、色々なことが雁字搦めになって想うようには進まない難しさはあるのですが」

 

 

官民ファンドは間違っている 

木内孝胤氏 インタビュー (4)

西出:木内先生はご自身でも企業を経営されていますし、他の政治家に比べて中小企業経営者に近い立ち位置にいると思うのですが、日本でビジネスをする際の問題点をどうお考えですか。

 

木内孝胤氏 (1)

木内:私は、日本の環境自体は悪いとは思っていません。むしろ起業する上で、これほどビジネスのしやすい環境は他にはないと思っています。金融機能も保証協会の融資があるため、諸外国に比べて格段に緩い。簡単にお金を引っ張れる。不動産も自宅を兼ねれば、無理はない。

問題なのは、それだけビジネスをしやすい環境にありながら、優秀な人材が大企業での安定した生活を望み、起業する冒険をしたがらないことです。アメリカのように起業することを肯定的に捉える文化は熟成されていない。いちばん優秀な人間は大企業に就職せずに、起業する傾向が強いアメリカとの差は大きいです。ただ、日本も慶應のSFCなんかはそういう雰囲気が最近できつつあります。毎日忙しくてやる気満々で、みんなが事業を立ち上げることを目指す学校もできつつあるのは、喜ばしいことです。

環境で問題というと、事業規模を大きくする段階でお金を出すところが少ないことですね。非常に良い事業があっても、そこにリスクキャピタルが入る余地がないことが問題なのです。やはり、VC(ベンチャーキャピタル)やPE(プライベート・エクイティ)といったファンドが少なすぎます。昔は、日本の金融機関の懐が深く、数百万円規模の事業資金を捻出するなどVCに近い役目を果たしていました。いまの中堅の銀行員にはそれを期待できない。彼等は忙しすぎてそこまで頭も手も回りません。VCにしても、そこまでの機能を果たしているかというと、そうでもない。

 

塩入:こうした日本の環境を活かすには、具体的にどのような政策が良いのでしょうか。

木内孝胤氏 インタビュー (2)

木内:最近は日本も目利きできる人材が数百人単位で育ってきています。そして、日本の技術は良いものが多い。VCやPEに1兆円を投じれば、彼らが良い種を見つけて、未来のグーグルを育てることは不可能ではありません。そういった意味で、公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)などが〝独立系〟のVCやPEに一定の資金を投じるべきです。

GPIFというと、すぐ官民ファンドを作ってそこでの運用という話になりますが、これはある意味、官僚統制経済の最たるもので、私は最悪だと思っています。筋が悪いから本当にやめたほうが良い。第三セクターと一緒です。責任の所在が曖昧になりますから。

 

創栄共同事務所 西出考二氏

西出:GPIFというと、日本株式の運用比率が大幅に引き上げられるとのことですが、株式市場が活況になると期待されています。

 

木内:私は、積極運用という流れ自体は良いと思います。GPIFは120兆円超の運用資産を抱える「世界最大の年金基金」ですから。というよりも、今まで基本ポートフォリオを変えたことがないこと自体がおかしい。ただ、12%の株式比率を20%にあげるというのは、株価があがって勝手に比率もあがっているだけの話です。それで現在17%が日本株式で運用されていますが、あがっているときに増やすということは、当然損を出す可能性も増えるということ。

 

西出:5年ぐらい前に5兆円損して、更に9兆円損して、累計収益が殆ど消し飛びましたが、最近は調子が良いようですけど、怖いですよね。本当、あの運用委員会はなんとかならないものですかね。

 

木内孝胤氏 (9)

木内:あの運用委員会のメンバーは、学者や上場企業の元経営者という立派な見識をお持ちの方達ばかりです。あまりにも“先生”すぎる。果たして株の運用経験がどれだけあるのか。そんなメンバーで外国株とか外国債券を10兆円規模で買っているという……、物凄いリスクですよ、これは。そう遠くないうちに、また、「15兆円やられました」なんてニュースにならないことを祈るばかりです。やはり積極運用していくのならば、プロの優秀なファンドマネージャーを委員会に入れるべきです。例えば、カナダのカナダ年金制度投資委員会(CPPIB)は再建したので有名ですが、運用委員会の殆どのメンバーがカナダ人ではありませんでした。一人数億円の報酬をもらっているファンドマネージャーがずらりと並ぶ陣容です。

私は、日本でも委員会に運用のプロを入れるべきだと思います。一人に5億円の報酬で10人に50億円渡したっていい。莫大な委託手数料を懸念する声もありますが、受託財産という資産性格を考えるからこそ、プロ中のプロを世界から集めて、運用させるべきですよ。

 

 

対中国ビジネス

木内孝胤氏 インタビュー (6)

筒井:日中関係についてはどうお考えですか。ビジネスにおいても尖閣諸島をめぐる問題以降、冷え切っていると見るのが一般的です。政治家転身以前から投資銀行家、実業家であった木内さんはどう見ておられますか。

 

木内孝胤氏 (8)

木内:言うほど冷え込んではいないと思います。もちろん、尖閣問題の直後はそういった時期もありましたし、上海や香港、北京などの地域によって温度差はあります。でも、現場では意外と、政治は政治、ビジネスはビジネスと割り切った両国関係が再構築されていますよ。もちろん難しさはあります。お金を投じて収益が上がった時にきちんと回収できるのか。さらには、政治リスクも念頭に置く必要もやはりある。

ただ、この10数年の中で多くの方が進出して、痛い目を見た方がいる一方で、多くの成功事例もでてきています。例えば、熊本県を中心に「味千ラーメン」を展開する重光産業は、中国では約千店舗を展開するまでに成長しています。焼き鳥や枝豆なども出すなど、現地で受け入られるラーメン居酒屋という形態に形を変えて受け入れられたのです。

何より、中国にとっても、やはり企業は誘致したいのです。実際、色々な失敗例がでてきて、撤退も続き、投資は先細ってきている。そこは反省していて、もう少し許認可を早く出すなど、やりやすい環境を整備しているとは聞きます。

 

塩入:日中のビジネスがやり難いというのは、世界全体の中で中国の影響力が増し、日本は相対的に低下していることも関係しているのでしょうか。

 

木内:そうですね。今はまさに権力移行期です。2000年の頃は、日本は中国の3倍のGDPがあったのが、2020年には逆に日本の2・5倍ぐらいになりそうな勢いです。世界の中で中国のプレゼンスがここまで急速に上がるということは、まさに歴史的な権力移行期で、そういうときというのは、やはり混乱をきたすものです。そういった政治リスクや両国の国民感情を考えると、内陸でいきなりビジネスを始めるよりは香港の方が始めやすい。(ただ、坪単価10万円するところで、レストランをはじめて、儲けることができるかを考えると、ハードルは相当高いのですが。目抜き通りのレストランや事務所では、日本と比較して家賃が3倍するケースもあります。)

木内孝胤氏 インタビュー (3)

前述した味千ラーメンの場合は、中国に出していると言いながら、上場しているのは香港ですからね。実際のオペレーションは味千ラーメンがやっていますが、実務は現地の中国人が行っています。やはりビジネスを自前でやるのは難易度が高い。現地のパートナーと組むにしても、支配権を取られる危険もある。例えば、お寿司屋さんを出して人気店になっても、家賃を毎年15%ずつ挙げられて、契約更新時にはいきなり家賃を倍にすると通告されて、半ば無理やり出て行かされる。それで、出ていった瞬間、居抜きで似たような名前の現地のお寿司屋さんが入って、店長も同じなんて乱暴なやり方もあったと聞きますし。

 

筒井:何故日本人にとって、中国という国は、こんなに難しくなってしまったのでしょうか。まだ日本人のビジネスメンタリティがグローバルスタンダードに達していないと捉えるべきなのでしょうか。

 

 

木内:日中が国交回復した時、お互いが譲歩しあった面があります。中国はその時点で賠償を放棄していますが、中国にはあのとき譲歩してやったのに、という思いが垣間見える。一方日本にしてみれば、ODAなどはもう今さらストップしてくれと、私自身一国民として強く思いますが、当時のそうした貸し借りがあるなかで両国関係は微妙な緊張を保ちながら進んできた。

それが尖閣問題で一気に不安定化してしまった。領土の絡む話は、どこの国も一ミリたりとも譲れないのですから、このさきも実質棚上げ状態に戻すのが精一杯なのでしょう。それさえ、解決の糸口があるのかどうか。

そういった意味で、実質棚上げ状態にあった尖閣諸島を日本が国有化した判断と、その前に東京都で購入しようとした動きなども、大きく国益を損ねたのではないかと私は思います。実効支配が長く続き、日本に有利な状況が形成されていたのに、中国側の度重なる挑発に反応し、こちらから悪い形で一石を投じてしまったのですから。

日本政府は、東京都が買うよりは国が勝った方が中国もまだマシに理解するだろうと国有化に踏み切ったのでしょうが、その数日前に胡錦濤さんと野田さんで、絶対にやめてくれよという話があったという間の悪さもあり、この縺れを解くのは容易ではありません。 (続く。次号「ベーシックインカム」について)

 筒井・塩入・木内・西出

写真右から2人目:木内 孝胤(きうち たかたね)

1966年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、東京三菱銀行(ロンドン支店、営業本部等)、メリルリンチ日本証券(投資銀行部マネージング・ディレクター)勤務を経て、2009年、衆議院議員選挙に当選。衆議院外務委員会理事、衆議院財務金融委員会、衆議院沖縄・北方問題特別委員会、民主党企業団体対策副委員長、民主党政調会長補佐を歴任。2012年、衆議院議員選挙に落選。同年、政策フォーラム「日本の選択」を設立。三菱財閥の創業者で初代総帥である岩崎弥太郎の玄孫にあたる。

木内孝胤 オフィシャルサイト:

http://takatane.com/

政策フォーラム「日本の選択」:

http://j-sentaku.net/

創光技術事務所インタビュアー

写真左:筒井 潔(つつい きよし)

経営&公共政策コンサルタント。1966年神奈川県生まれ。慶應義塾大学理工学部電気工学科博士課程修了後、外資系テスターメーカー、ベンチャー企業、財団法人等勤務を経て、合同会社創光技術事務所所長。

写真左から二人目:塩入 千春(しおいり ちはる)

合同会社創光技術事務所シニア・アナリスト。理学博士。京都大学理学部卒。総合研究大学院大学博士課程修了。理化学研究所研究員等を歴任。2013年9月より現職。

写真右:西出 孝二(にしで こうじ)

ビジネスプロデューサ・公認会計士・税理士。慶應義塾大学理工学部電気工学科卒。カリフォルニア大学バークレイ校留学。1983年に創栄共同事務所を設立、代表に就任。2010年4月より、合同会社創光技術事務所共同経営者を兼務。

 

2014年9月号の記事より
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