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自民党・城内実衆議院議員|元外交官だから見えてくる「この先の日本の在り方」 後編:循環型社会、モノづくり立国のために

創光 オビ 

城内実衆議院議員に訊く 元外交官だから見えてくる「この先の日本の在り方」

◆取材:加藤俊・佐藤さとる

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後編「循環型社会、モノづくり立国のために」

前号に引き続き、郵政民営化では政治家としての信念を貫いた気骨の政治家、元外交官の城内実衆議院議員に20年後の日本の在り方について伺った。前回城内議員は、日本という国家が、古事記の時代より古代民主主義というべき文化をもった稀有な国であることを説き、そこからTPPの問題点を指摘していた。

今号では、20年後の日本がどのような国家社会になるのか、現在抱える課題に触れながら、語っていただいた。

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 聞き手:写真左 創光技術事務所/筒井潔・ 写真右 塩入千春

前編:「日本のルーツに立ち返れ」

経済至上主義から
本格的循環型社会へ

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筒井:2020年に東京オリンピックが開催されることになりました。しかし、その頃には日本が財政破綻するという予測もあります。

 

城内:私は、財政面における破綻はないと思います。確かに、国債残高等のいわゆる「国の借金」が1000兆円を超えましたが、ギリシャなどと異なり、債権者の大半は日本国民です。それに日本は、22年連続で世界一の債権国の地位を維持しています。ただ、どのタイミングかは明言できませんが、これまでのような、経済的価値を最重視する経済至上主義から脱却する時代が来るとは思っています。

 

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今日のお話である20年後という長期スパンで見れば、社会の在り方として、「循環型社会」の傾向が強まっていくでしょう。例えば、家庭用電気の7~8割は自宅に設置した太陽光パネル等再生可能エネルギーで賄い、足りない分を多様な選択肢がある中で「お得な」電力会社から購入する。あるいは電力が余った場合に電力会社へ売電する。自分の家で食べる食料は、地方の休耕地などを活用して賄っていく。自治体や共同体で、共同耕作して農作物をつくる。社会全体の在り方として、こうした傾向は強まっていくと思います。

 

塩入:日本の古来の風土に立脚した循環型社会とでも呼べそうですね。ただ、そうした社会では一人あたりのGDPは下がるかもしれませんね。

 

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城内:そうかもしれません。しかし日本も、ブータンがGDPよりもGNH(Gross National Happiness・国民総幸福量)を重視するように、経済的価値を最重視する現在の価値観が変化していくのではないでしょうか。年収500万円の人が、3000万円の人より人生を謳歌できないかというと、必ずしもそうではありません。人生の捉え方、価値観は時代ごとに変わっていくと思いますね。GDPで国力を推し量り、その数値に一喜一憂するような社会ではなくなっていると思います。

 

特に我が国は、第一に神武天皇以来2600年を超えて皇室を戴くという世界に例を見ない国史・国柄を有し、第二に日本語という素晴らしい国語を持ち、第三に北は北方領土を含め北海道から南は尖閣諸島を含め沖縄に至るまで、もちろん竹島も忘れてはなりませんが、豊かな自然に恵まれた多数の島々から成る大八洲であるといった点などで、経済力以外にも世界に誇るべきものが沢山ありますから。

 

 

農業の価値を
きちんと評価する社会に

筒井:循環型社会にシフトするためには、GDPとは違うものさしが必要になってくると思います。いまの経済比較は生産で生み出した価値しかカウントしてないので、里山の価値などは計算されていない。農業と工業は同じ土俵で比較できない。

 

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城内:確かに新しいものさしは必要でしょう。とくに農業は水源涵養などの機能があり、環境を守っている。多面的な機能があります。他方、TPPに関連して工業に言及すると、米国の自動車関税はいま2・5%くらいですから、ほとんどゼロに近い。むしろ為替変動のほうが、輸出への影響が大きい。このような自動車関税のために農業を犠牲にしていいのかということも、しっかりと議論をしないといけない。

 

攻めの農業として高付加価値の農産物をつくれというのは、言うのは簡単ですけれども、行うのはとても難しい。機械的にオーストラリアで肉牛を飼育することと、手塩にかけて近江牛や宮崎牛を育てることは全く違います。みんながみんな付加価値をつけられるわけではありませんから、日本の農家全員が価格面以外での勝負をできるわけではない。TPPの落としどころいかんによっては、大打撃を受ける人達が続出してしまう。

 

筒井:政治家がしっかりと戦略を描いていく必要がありますね。同じ政治家の仕事ということでは、20年後の政治家の仕事はどういったものになっているのでしょうか。

 

城内3城内:おそらく、国政における外交と国防の比重は増えていることでしょう。これらは車の両輪です。外交力を強化するとともに、防衛力を整備することは、戦争を回避して国家国民を守るためにも、「積極的平和主義」を推し進めて世界の平和と安定に貢献するためにも不可欠ですから、きちんと両輪を走らせる必要があります。

外交について、分かりやすく日本を「ドラえもん」(漫画)の「のび太」にたとえると、どこの国とは言いませんが、「ジャイアン」みたいなでっかいいじめっこがいる。そこに「スネ夫」という、ジャイアンに擦り寄ろうとする人間がいるのですが、のび太としては、そうさせないように立ち回らなければならない。あるいは中立でいてもらうようにする。そういう外交努力が、求められます。

 

筒井:現在の安倍政権は、その点どうですか?

 

城内:安倍政権の「地球儀を俯瞰する外交」は非常に戦略的な外交だと思います。安倍総理はほとんど毎月のように、ASEAN各国やモンゴル、ミャンマー、カンボジアなどアジア各国、アフリカ各国、ロシア等を、まさに地球儀を俯瞰するように訪問していますが、これによって日本の「味方」となってくれる国が世界中で着実に増えています。私はさらに、2014年は、カザフスタンなど中央アジア、また、私が外務政務官時代に訪問したパプアニューギニアなどにも行っていただきたいと思っています。

 

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肝心なのは、これまでのように「日米同盟があるから大丈夫だ」という思考に留まるのではなく、日米同盟が「張り子の虎」になる可能性があると考えなければならないことです。そうならないように日米同盟関係を強化しながら、多角的な外交を展開し、様々な国との信頼関係を築いていかないといけません。そのためにも日本は、発信力を高めていかないといけません。

 

この点は、中国を見習うべきです。テレビ放送ひとつとっても考えさせられます。CCTVという中国の海外向けテレビ放送があるのですが、この番組は数多い海外チャンネルの中で、前の方にセットされてリモコンを押せばすぐに見られる。しかも、CNNのような世界中の誰でも受け入れやすい放送を放映している。他方で、NHKワールドの内容は、日本の商社の人しか見ないような番組が目立ちます。日本も外交力強化の一環として発信力を高め、日本の外交方針や領土問題などを発信していくツールとしてテレビやインターネットなどを活用していかなければなりません。

 

 

日本に滞在したい移民は
日本国籍取得を

筒井:なるほど。中国は、本当にメディア戦略に長けていますね。少し話を変えて、「移民受け入れ」に関して、お聞きしたいのですが。グローバル化が進めば人の流れは流動的になるもの。少子化対策も含めて日本でも移民受け入れの議論が起こっていますが。

 

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城内:私は目先の単純労働者が足りないからと移民に頼るのは良くないと思う。安易な移民政策は中長期的には社会不安を惹起しかねません。ヨーロッパなどを見ていると、コストが高くついて失敗しているところが多い。私はドイツにいましたが、ドイツではトルコからの移民が2世、3世となってもドイツ社会にうまく適応できない人が一部存在する。これは、深刻な社会問題です。メルケル独首相は「多文化主義社会は失敗した」と述べ、移民の社会適応に苦慮していますが、この病巣は根深く、もはや一朝一夕で解決できる問題ではない。

 

こうしたことを踏まえれば、日本で、もし移民を受け入れるのであれば、高度な技能を有する方に限るべきですし、その方々を恒久的に滞在させるならば、日本国籍取得を必須にしなければならないと思います。

 

 

モノづくりマイスターが
活躍できる社会に

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筒井:いま地方の経済状況はがたがたです。20年後、地方はどうなっているのだろうかと危惧しています。

 

城内:昔は高度経済成長期で全国に道路やダムをつくったりして、地方にもお金と仕事がまわっていましたが、状況も変わってきました。私は社会資本整備をもっとやるべきだと思っています。お金がない、バラマキを危惧する声もありますが、老朽化している橋梁を直すなど、やるべきことは非常に多い。もちろん無駄遣いは許されませんが、必要な資本投下はきちんと行わなければいけません。

 

塩入:地方の活性化には中小企業支援が必要になると思います。

 

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城内:日本企業の99%は中小・零細企業なわけですが、ここの土台がしっかりしてないと、いくら大企業が海外進出して儲かったとしても、日本が続かない。日本の中小企業は今もって相当の技術力を持っている。技術を持った職人の方をどう国が支えていくかは重要な課題ですね。中小企業に国が手厚く助成し、次の人材や技術を育てていかないと。

 

塩入:中小企業は、後継者不足が深刻です。若い人が来ないと深刻に悩んでいる。いま工業高校や工業専門学校などは地域の企業と組んで、産学連携の中で、人材を育てようとしていますが、いざ卒業となると、研修した企業に人材を直接は送れない問題があります。工業高校や高専からは、必ずハローワークを介さないとならないルールがある。家内工業規模の町工場や伝統工芸の職人の方は、ハローワークの求める就労環境の基準を満たすことが難しい。結果として、若い人材が来ない。技術の承継が求められる世界であるのに、です。

 

城内:それはまずい。国会議員として考える必要があります。製造業だけではなくて、伝統工芸もそうですね。つくることの大切さを教育で教え、且つそういうことに向く人をどう増やすかは課題ですね。

 

筒井:モノづくり教育ということで言えば、ドライバーの回し方も知らない不器用な人が、大学の工学部に入ってくるようになったなんてことを聞いたりもします。背景にあるものが、非常に皮肉なのですが、日本は利便性を求めて服のボタンをジッパーにしたり、靴紐をマジックテープにしたりとモノづくりをしてきました。ところが、そうやって利便性を求めたがゆえに、若い人が手先を使わず、不器用になったと警鐘を鳴らす職人がいるんです。モノづくり大国を謳いながら、この状況では、確かにお話になりませんよね。一方で1000分の1ミリが求められる世界となっているのに、最初から向かない子が製造業の技術者として入る。それでは、来ても定着しないと嘆く経営者がいるのも頷けます。

 

城内:なるほど。たとえばドイツにはマイスター制度という職人の資格制度があって、一旦取得すると高い社会的評価を得られる。日本版マイスター制度などをしっかりつくって人を育てる必要があるでしょう。いま食の世界でもソムリエなど実力さえあればいろいろなところで働けるようになっていますね。そういう技術者、目利きの方を支え伸ばす仕組みを社会全体でつくる必要があると思います。20年後の社会では、モノづくり大国としてしっかりと職人の方を守れるようにしていたいですね。

 

筒井塩入:ありがとうございました。

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取材後、SPレコード蒐集が趣味だという城内議員の部屋にて。 「蓄音機から零れてくる音に耳を傾けるうちに、疲れがとれるんです」(城内議員)

 

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城内 実氏(きうち・みのる)…1965年生まれ(本籍静岡県浜松市)。71年より西ドイツの小学校へ。75年帰国。横浜市立戸塚中学校、私立開成高校、東京大学教養学部を経て、89年外務省入省。2002年退官後、03年衆議院に初当選。05年いわゆる郵政国会で民営化反対票を投じ、解散選挙で惜敗。09年衆議院総選挙において無所属で立ち、自民党候補に約7万5000票、民主党候補に約6万5000票の大差を付け返り咲く。12年衆議院選挙で、再び圧勝。第二次安倍内閣で外務大臣政務官に就任、現在は自民党外交部会長として活躍。

http://www.m-kiuchi.com/

 

筒井潔氏(つつい・きよし)

1966年神奈川県生まれ。慶應義塾大学理工学部電気工学科博士課程修了後、外資系テスターメーカー、ベンチャー企業、財団法人等勤務を経て、経営コンサル業界と知財業界に入る。合同会社創光技術事務所所長。共訳書にA.Isihara「電子液体:強相関系の物理とその応用」(シュプリンガー東京)がある。

 

塩入千春氏(しおいり・ちはる)

合同会社創光技術事務所シニア・アナリスト・理学博士。京都大学理学部卒。総合研究大学院大学博士課程修了。理化学研究所研究員等を歴任。2013年9月より現職。

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