自由民主党政務調査会審議役  田村重信氏・インタビュー【第3回】

『歴史から紐解く日本人の心理』

◆取材:加藤俊 /文:山田貴文

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2012年12月、憲政記念館で安全保障を基調テーマとする講演が行われた。憲政史上初という歴史的な講演に立ったのは、青年時代から政治に興味を抱き続け、それから長年、日本政治の内側を見てきた自由民主党政務調査会審議役の田村重信氏。2005年からは社会奉仕活動の一環として、日本論語研究会を主宰しており、論語の教えである「言行一致」を実践する学びの場を提供している。

昭和50年に拓殖大学政経学部卒業後、宏池会の門を叩いた知られざる秘話や日本が歩んできた歴史を深掘りしていきながら、全国各地で賛否両論を巻き起こしている安全保障関連法案について専門家、または与党の立場として考える視点に迫る。

※このインタビューは2015年8月に行われたものです。


(左から)田村重信氏/筒井潔氏(インタビュアー

 

前号続き

 

筒井:先ほどの、やっぱり政治という部分で、政権を取るための手法というのと政策は別だというお話。戦後日本の高度成長期に民主主義というのは機能していたかというと、なかなか難しい部分もあると思うのですけれど、ただ歴代総理というのがしっかりしていたから回ってきた部分っていうのがあるのか、それとも自民党がしっかりしていたのか……。

 

田村:やっぱり時代だよね。時代。だって、これはデービッド・アトキンソンさんの本を読んだら分かるけど、日本がうまくいったのは人口問題。戦後、人口が増えたから。それによって、応じて経済も増える。そこが非常に大きい。人がいなきゃ経済は発展しないわけだよ。だから、戦後の人口から増えたわけだよ。それに応じて色んな事をしなきゃいけないでしょ? そうすると、経済が大きくなる。それだけの話だよ。

それと、だから世の中が平和になった。それと日本のビジネスをするうえでは、自由にものを買って、ものを売ることができた。朝鮮戦争、あるいはベトナム戦争があった。人が困っているときに、日本は一生懸命お札の勘定ができたとか、そういうラッキーもあったけど、基本的には、やっぱりそういう人の話っていうのは大きい。経済の大きさなんてみんなそれに比例しているでしょ? それは大きいわけだよ。

特に、アメリカなんかも人口が多いわけだし。中国なんかも大きいけどだめだって言うけど、でも、だんだん大きくなってくるよね。それはもうそういうものなの。だから、GDPの大きさなんて、先進国のGDPって、だいたい人口じゃない?

 

筒井:まあ、一人あたり。

 

田村重信氏インタビュー02田村重信氏

田村:一人あたりが。先進国が。ヨーロッパだってそうじゃない? だって、よく、僕は講演で話をするのは「日本は大国かどうか」って。政治学者の中には、ミドルの国がいいとか、小さくてもきらりと光る国がいいなんていう政治家がいるんだけど、間違っている。日本は大国だから。大国としてやるしかないの、それは。

なぜかって言ったら、様々あるよ。人口問題、人口の数からいってどうだ?と。経済規模からいってどうだ?と。そしたら、よく言うのは、人口7千万人以上、一人あたりのGDPが1万ドルを超える国はどこだ?って。どこだ? 日本、アメリカと。

 

筒井:ドイツは?

 

田村:ドイツもそうだよ。あとは?

 

筒井: ロシアは?

 

田村:ロシアも正解。ロシア、ドイツは入っている。あとはトルコ。あとメキシコ、ブラジル。それで、中国でいえば、江蘇省かな。例の揚子江の沿岸の、南京だとか、江沢民が生まれたとこ、あの辺の地域だけは、それは一つの省でOK。だから、それを見たって、大国なの。どこかの大学教授は、ミドルの国に移行とか、おかしなことを言って。だから、ちゃんと分析して、リアルに考えていく必要がある。学者はいつも、本当にもう、妄想の世界に生きている。

 

筒井:日本は世界規模で考えても大国であって、大国としての意識がなければいけないと。

 

田村:いけないのじゃない。大国なの。だって吉田松陰がなんであれやられたかって言ったら、イギリスみたいなちっぽけな国がアヘン戦争で中国と争った、そういう感覚があるんだよ。だから、俺は力がないよと。まだ子供だよと思ったほうが、モラトリアムで余計なことしなくていいじゃない? 違うの。日本は、もう大人なのだよ。体長も。れっきとした。大人なら大人の仕事をしろと言っているの。

 

筒井:日本は国際社会において、きちんと大人の仕事をしなきゃいけないと。

 

田村:あたりまえだよ。だから、湾岸戦争のときに金だけいっぱい出していて、ちっとも評価されないわけだよ。それはそうだよ。

 

筒井:それは経済力プラス軍事力。

 

田村:それはそうだよ。みんなが協力して嫌な仕事をしているのに、町内会長が来て、金やるから、あと終わったら酒でも飲んでよ、じゃあねって言ったら、軽蔑されるだろ?

 

筒井:そうですよね。

 

田村:同じだよ。

 

筒井:金だけ置いていっても村八分に。一緒にやってなんぼですもんね。

 

田村:分かんないのかって。だから、今回の平和安全法制だって、反対する人は、日本が戦争を仕掛けたから、また戦争仕掛けるぞって言って、自分に自信がない連中だけなの。だから、憲法9条改正すると、また犯罪を犯すという悪い人たちの集まりだよ。僕たち、昔は悪かったけど、もうちゃんと、そういうのは脱皮したから、早く憲法9条という牢屋から出してくれって僕は思うわけだよ。

ところがそうでない悪い人がいて、また犯罪を犯しちゃうと。だから、その牢屋から放さないでくれと言う。ところが、そういう人は、それを言うとみっともないから、憲法9条は素晴らしいことだとか、別なことを言ってごまかしている。自分に自信がないのだよ、僕に言わせりゃ。朝日新聞なんかも、すべて。

 

筒井:集団的自衛権の問題というと戦争と直結して捉えられてしまいますね。

 

田村:それはもう、ずっと昔から、60年代安保の時代から、戦争に巻き込まれるとかなんとかってみんな言っているわけだよ。だから、チャンネル桜の「闘論!倒論!討論!」という番組で、僕は討論会をやった時に、60年代安保のおじさんが出てきたけど、結局はよく分かったよ。国家は、国民を守ってくれない。自衛隊は国民を守ってくれない。そういう意識。

 

筒井:なるほどですね。

 

田村:共産主義なの。ね?

 

筒井:集団的自衛権のない時に。

 

田村:じゃないのだよ。もう。そういう話じゃない。もう悪なの。悪、悪。自衛隊は悪。国家は悪。そういうのがベース。それを、露骨に出さないで、それで共産党は今うまくやっているのだよ。

今、共産党は、たとえば沖縄県知事選でも、自分のとこで候補を出さないで相乗りしたりだとか、山形市長選だってそういうふうに相乗りしたりして、そういう戦術できているのだよ。それで、デモだって、できるだけ自分たちの色を出さないで、学生とか無党派がやっているだとか。

 

筒井:高校生に対してそういう話になるわけですね。

 

田村:そうそう。そういういやらしい戦法。でも、基本はそういうことなの。だって、世界中見たって、いま日本がやろうとしている平和安全法制に対して、反対している国がどこにあるんだよ。中国は反対しているが、韓国は反対してないでしょ? あと反対は北朝鮮ぐらい。

あと他の多くの世界の国は、賛成している。誰が圧倒的に反対する? 日本のマスコミ、学者、文化人でしょ。

 

筒井:あと、僕自身が思うのは、集団的自衛権を有していない国って、例えばスイスとか、結局そこって、逆に徴兵制だったりするのですけど、そういった意識っていうのが、あんまり日本の人ってないのかなと思うのですが。

 

田村:いや、そこまでいかないよ。議論は。もう軍は悪。日本が力をつけると、また悪いことするって。そういうことだよ。

 

筒井:たぶん国家っていう概念だと思うのですが。

 

田村:基本的には、そういうこと。それをわざと表に出さないで、批判している。戦争法だとか。だから、同じなの。60年安保、PKOも、有事法制も同じことしか言っていない。基本的には、憲法違反の自衛隊だと思っているわけ。だから、55年体制の時は、憲法違反の自衛隊、税金泥棒の自衛隊とか。それで、日米安保があると戦争に巻き込まれると。変わってないのだよ。

だから、面白いことを、最近読んだ本でなるほどと思ったのだけど、ドイツ人が、ドイツは物理的に国家が二分されたけど、日本は心で二分されて、それが残ったまんまだから、日本のほうが大変だよねって。まさにそうだよな。

だって、日の丸を尊敬しないとか、君が代歌わないって言うこと自体、想像を絶するわけだよ。それを学校の先生が主張するというからビックリするわけ。

 

筒井:そうですね。今たぶん、国家っていうものに対する信頼っていうのですかね。

 

田村:だから、日本が嫌いなのだよ。日本という国が許せないと。嫌いだというのが、日本は悪い国だと。

 

筒井:健全なナショナリズムって育ってないですもんね。

 

田村:そういうこと。例えば愛国心みたいな。それが憲法にあろうとなかろうと、別にやらないといけない。そういう話なの。言葉尻捉えてどうのこうのとか言っているわけでしょ? だから、そういうのがちょっとありすぎるよね。まだ、結構……。

僕は講演するときは、平和安全法制の話なんていうのは、国内にいる反対する人たちと、僕は一生懸命戦っているんですよ。だから、みなさんよく理解してくださいって言って。僕がしゃべれば、南日本新聞の記事じゃないけど、転換するから。鹿児島県の出水市というところが反対決議だったけど、僕の話を聞いて、賛成決議になったからね。当時は、2014年の7月1日、勉強不足だったって言って。僕がしゃべれば、分かったって言って。

今やろうとしているのは、抑止力を高めるとか、総理がこういうふうに言っているとか、その話だよ。当たり前の話が、メディアに当たり前に報道されないから。特に、地方新聞なんていうのは、共同通信の配信だから。朝日新聞と一緒だから。そういうのを一生懸命、それだけ読んでいる人は、頭おかしくなるのだよ。

 

インタビュアー筒井潔氏

筒井:確かに、先生がおっしゃった、大人になろうっていう概念って私はよく分かります。つまり、結局、そういうのに安保法制やその他に反対している人って、それはそれなりに本人たちの信条もあるのかもしれないですけど、どちらかというと、例えば大企業のなかで入社何年目かで、会社に対して文句を言っている人たちと重なる部分も私は感じるわけですよね。

それで、何をお聞きしたいかというと、大人のなり方っていうのが今、日本全体でよく分かっていない部分があると思うのです。

 

田村:あまやかしだよ。あまやかし。あまやかしだけだよ。親が子供を……。ニートでも、いいよ、いいよとか。だから、親がちゃんと働いてくれよって、突き飛ばさなきゃいかんよ。ライオンが子供を育てるためじゃないけど、それがなさすぎるの。

 

筒井:政治レベルでも、やっぱり国民に媚びる政治みたいなのっていうのに流れがちだっていうのが。

 

田村:政治はそういうもの。票を取るから。だから、あとは個人個人が、やっぱりひとりの人間それぞれがきちっとしていかないとだめだよ。それは親だよ。自分自身だよ。だって、うまくいっているところとうまくいってないところを見れば分かるけど、親が違うもん。

 

筒井:そうですね。もうそれは、それに尽きるとは思います。

 

田村:だから、そこはしなきゃだめ。みんな、人のせいにするから。うちの子供は悪くない、お前の子供が悪いからだとか言ってさ。それで、学校のせいにしたり。また、先生もかわいそうだよな。なんとかペアレントとか、そういうのが多いからな。

 

筒井:そうですね。確かに、大人の国になるっていうのは、容易ではないですよね。それはもう大人の国民を持つとか、そういうことになってくるとは思います。そうすると、国のリーダーのレベルというものも必然的に見えてくる。

 

田村:リーダーは、だからはっきりとしているわけだよ。国民のレベルに応じたのがリーダーになる。熱狂したら鳩山になるわけ。菅直人になるわけだよ。それは別に、鳩山由紀夫が悪いわけでも菅直人が悪いわけでもない、国民のレベルがそうなの。

だから、それは今はもう、当時、民主党に投票した人っていうのは、本当に間違っていたって。逆にネット右翼に近くなっているけど。だから、そんなもんだよ。

 

筒井:それは勉強不足ですよね。もしかしたら何を勉強していいのか分からなかったりするのではないですか?

 

田村:そんなことはないよ。それは自分が悪いだけだよ。順々に勉強していけば分かるよ。自分で探して。田村塾に来ればいい。そういうのは。本当だよ。はっきりしているのだよ。僕のところへ来れば分かるって言っている。学ぶって、やっぱり人の話を聞くってことだよ。それから本を読むのだよ。

 

筒井:そうですね。

 

田村:ところが、大学行っても、なかなかいい先生がいない。だから学生が困っている。だって憲法と自衛隊の話、きちんと教えている大学の先生ってほとんどいない。憲法9条の上から、自衛隊は軍隊?

 

筒井:軍隊じゃないですね。

 

田村:国際法上は?

 

筒井:国際法上は、おそらく軍隊と思われると思います。

 

田村:そうそう。だからそこで差が出るわけ。だから、外国に行って、ほかの軍隊と同じような武器使用だって、そこは違うから。それで、武力行使と一体化するしないみたいな話の、ややこしい法律になるわけ。こんな法律は日本しかないという話だ。正解。(次号に続く

 

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プロフィール

田村重信(たむら・しげのぶ)…1953年新潟県長岡市(旧栃尾市)生まれ。拓殖大学政経学部卒業後、宏池会(大平正芳事務所)勤務を経て、自由民主党本部勤務。党本部では、全国組織委員会で党員の研修活動、支部組織の活性化を担当。その後、政務調査会で農林・水産、憲法、沖縄、安全保障政策等を担当し、橋本龍太郎政務調査会長の下で政調会長室長、橋本龍太郎総裁の下では総裁担当、事務副部長を歴任。現在は自由民主党政務調査会審議役、日本論語研究会代表幹事などを務める。

 

●インタビュアー/筒井潔(つつい・きよし)

慶應義塾大学理工学部電気工学科博士課程修了。合同会社創光技術事務所所長。株式会社海野世界戦略研究所代表取締役会長。「南山会」会長。アジアパシフィックコーポレーション株式会社代表取締役社長。共訳書にIsihara「電子液体:強相関電子系の物理とその応用」(シュプリンガー東京)、共著書に「消滅してたまるか!-品格ある革新的持続へ」(文藝春秋)がある。

◆2016年5月号の記事より◆

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