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◆取材:加藤俊 /文:渡辺友樹

スタディスト 豆田裕亮 (1)

株式会社スタディスト Teachmeエバンジェリスト 豆田裕亮氏

 

スマートフォンを使って、簡単に「マニュアル」を作成・投稿できるアプリがある。東京都千代田区の株式会社スタディストが運営するクラウドサービスTeachmeがそれだ。アプリをダウンロードして立ち上げてみると、「みかんのむき方」「うまいコーヒーのいれ方」などなど、ちょっと笑えるものから日常で役立つアイデア、ネイルやヘアスタイル、観光ガイド、レシピまでバラエティ豊かな投稿を眺めているだけでも楽しい。実は、このTeachmeを町工場や伝統工芸の技の記録に活用しようという声がでてきている。その可能性を探った。↓ 面倒なマニュアル作成をスマホでサクサク。TeachmeHP↓TEACHME HP

 

拍子抜けするほど簡単に

TEACHME マニュアル化の手順の実演 (2)

「スマートフォン1台あれば、誰でも場所や時間を選ばずその場で撮影した写真にテキストを添え、スライドショー形式のマニュアルを作成できます」と語る同社の豆田裕亮氏に、実際に目の前でマニュアル作成してもらうと、拍子抜けするほど簡単なことに驚く。もちろんPCからも作成可能だ。

TEACHME マニュアル化の手順の実演 (1)豆田氏はものの数分もしないうちに、ひとつのマニュアルを作成してみせた。確かに他のマニュアル作成サービスに比べて、桁違いのユーザビリティである。

このTeachme、法人向けに、『Teachme Biz』がリリースされており、こちらも、業務マニュアルからカスタマーサポート、取扱説明書など、業種業態を問わず活用法は幅広い。簡単、手軽なTeachmeの特性はそのままに、作成、公開、閲覧管理すべてをカバーする機能が追加されている。メンバーは5人まで10個のマニュアルを無料で作れるので、導入のハードルも低い。物は試しに、と始める企業が多いそうだ。

スタディスト 豆田裕亮 (2)

 

埼玉県三郷市の大鉄精工株式会社もそのうちの一社。同社は、極めて高い精度が求められる潜水艦や医療機器の部品を手がける切削加工専門の金属加工メーカーだ。2012年に設立されたばかりの同社では、「他社が面倒くさがってやらない仕事」を積極的に請けることで技術力や競争力を高めている。

大鉄精工 写真 スタディスト提供

これまで、社員それぞれが磨いた技術やノウハウを手書きのノートによって共有していたが、ノートでは紛失や破損のリスク、また手書きによる可読性の低さなどの問題があった。しかし、作業と蓄積が同時にできるTeachme Bizの導入によって、技術のスムーズな伝承や共有が可能になり、さらなる競争力のアップを図れるようになったという。

大鉄精工 マニュアル

神奈川県横浜市の株式会社協和製作所の場合は、Teachme Bizの導入によって、自社の課題の解決に繋がった。協和製作所は、車や家電などの製造工程の屋台骨となる「コイル加工ライン」の設計・製作を行っている。工程の自動化や熟練者の減少が進んだことで、即時に対応できないトラブルの増加という悩みを抱えていたが、Teachme Biz導入によってトラブル対応のノウハウを集約できた。

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株式会社協和製作所 代表取締役 天明佳幸氏(写真提供スタディスト)

また、写真のスライドショーによって言語の壁を越え、海外工場でのトラブルにも迅速に対応できるようになったメリットは大きい。同社では、対応事例をTeachme Biz上に蓄積することでデータベースを構築していくビジネスアイデアも生まれているという。

 

このように、Teachme Bizはありとあらゆる業種の業務効率化を図れる。複雑な業務プロセスをもつ企業であっても、それは同じだと豆田氏は自信をもって言う。

 

「一般的に、どんな企業でも作業のうち6割はマニュアル化できるもの、と言われています。更にマニュアル化できない残り4割のうち3割はマニュアルに加えて必要に応じたフォローがあれば再現できる領域ともいわれています。

 

Teachme Bizは、業務のその6割の部分を若手や新人でもできるようにしっかりマニュアル化するのに最適です。残りの3割も、分からない部分のフォローがあれば再現できるレベルのマニュアル化をしておくことで、熟練の技術者や設計者が最後の1割クリエイティブな領域に時間を使い、新技術や新商品の開発に注力できる。うまくマニュアル化できていないと、はじめの6割の部分に彼らのリソースを割かねばならず、大きな無駄が生じてしまいます」(豆田氏)

 

 

マニュアル作成は面倒な業務?

スタディスト 豆田裕亮 (1)

「Teachme Bizは試しに無料で使って、それで自社に合わなければ、気軽に止めてしまえます。導入の際の心理的ハードルがそれでだいぶ下がるためか、サービスのローンチ後、多くの方にご利用頂けるようになりました」(豆田氏)

それでも、マニュアル作成というと、手間のかかる一日仕事というイメージは強く、まだまだ分厚いファイルを用いて紙ベースで運用している企業が多い。また、データ化されていたとしても管理が不十分なケースが少なくない。

 

「マニュアルを改訂したいが、肝心のデータの在り処が分からない。そういえば退職した社員のパソコンに…」とか、「担当業務においては優れた社員でも、オフィス文書を1から作成するとなると初心者レベルの見辛いものになってしまう」など、どんな企業でも程度の差はあれ、抱える問題だったりする。

ただ、Teachme Bizは、他の同種のサービスと違い、工数少なく、手間もかからず、誰でも簡単にマニュアルを作れる点が評価されているサービス。「マニュアル作成時間を1/5、運用負荷を1/2に」という謳い文句には一定の説得力がある。ネックなのは、スマホを使えることで初めて利便性を体感できるサービスという点か。

いずれにしろ、適正なマニュアルづくりは、決して優先順位の低い業務ではなく、商品やサービスの開発に深く関わる、言ってしまえばその企業の未来を左右する重要なものだと認識を改める必要がありそうだ。

 

 

絶滅危惧職人の技術を記録

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Teachmeの有用性として特筆したいのは、技術の承継に関する点。伝統工芸や小さな町工場などでは、跡継ぎがいないために、長年受け継がれてきた技術が途絶えている。残った職人が一人しかいない、という絶滅危惧職も散見される。

熟練の職人技は一朝一夕で体得できるものではないが、写真付きのマニュアルを残しておけば、後世のいつの時代か、担い手が出てきた際に役に立つ。文化保護の観点からも意義は大きい。ここはひとつTeachmeの力を借りて、国レベルでこの課題に取り組むべきである。

スタディスト 豆太裕亮

実際に、「ありとあらゆる職人さんの技術を記録することで、国の大切な資産を守っていきたい」と熱く語る豆田氏は、こうした伝統工芸や後継者のいない職人の元を自ら取材に訪れ、Teachmeでマニュアル化しているという。

 

長野県木曽郡の小林ヘギ板店は、木の板を1ミリ以下の薄さまで手で剥ぐ「へぎ板」を製作している。年月の経過とともに艶が増していくこのへぎ板は、主に家屋の天井裏などに用いられるが、現在、技術を持つのは国内に2名を残すのみ。同店ではTeachmeを導入し、その技術をマニュアル化している。

↓ヘギ板職人の技:Teachme Bizのマニュアル(小林ヘギ板店より)↓

同店のHPにアクセスすれば、一般に向けたへぎ板の紹介から商品例、工房での製作現場の様子、工務店に向けた施工の案内といった専門的なものまで、6点の分かりやすいスライドショーを見ることができる。「職人のおっちゃん達の話を聞くのが好きなんです」とはにかむ豆田氏が、スマホで撮影したマニュアルを見れば、技術を記録化するTeachmeの意義とその可能性を理解できるだろう。

小林へぎ板店

ちなみに、6点のスライドのうち数点は、小林ヘギ板店が豆田氏に習って自主的に制作したもの。手間が少なく直感的な操作で専門知識のない誰でもマニュアルを作れることの証左。「スマホなんかいじれない」と嘆いてばかりではいられない。

へぎ板職人2 へぎ板職人 へぎ板 1

スタディスト 豆田裕亮 (3)

 

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