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東京理科大学 科学技術交流センター|産学連携には大学や区の垣根を取り払うことが不可欠、今こそ城東地区での広域ネットワーク形成を!

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特集葛飾〜城東地区の活性化

 

櫻日本全国で動きを見せている地域活性化。自治体や企業、教育機関が、それぞれの取り組みを見せている。今回ご紹介するのは、東京葛飾区の事例だ。

2013年に葛飾区に新キャンパスを構えたばかりの東京理科大学と、葛飾区で生まれ育った映画監督、神田裕司

それぞれモノの見方やアプローチの仕方は異なるが、「葛飾区を活性化させたい」という想いを起点に、城東地区の活性化を見据えている点で、波長は軌を一にしている。城東(葛飾区、荒川区、台東区、墨田区、足立区、江東区、江戸川区)をどのように変えていくのかという話を通して、地域活性化の在り方を探ってみたい。

◆取材・文:加藤 俊 渡辺 友樹

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東京理科大学 科学技術交流センター 産学連携には大学や区の垣根を取り払うことが不可欠、今こそ城東地区での広域ネットワーク形成を!

DSC_1292藤本隆(ふじもと たかし)東京理科大学 科学技術交流センター長。三菱化学株式会社にて、主として研究開発、事業開発・企画、事業経営、会社経営に従事。平成15年以降、東京理科大学において、産学連携部門の立ち上げ、運営業務に従事し、現職に至る。主に企業との共同・受託研究をはじめ、技術移転に関する契約交渉、事業化プロジェクトを多数手がける。

大学が地域活性化を語るに、産学連携が重要なカギになっていることは、今さら言うまでもない。東京理科大学の科学技術交流センターの藤本隆氏に、「学」サイドから見た産学連携とその現状、それらを踏まえた「広域ネットワーク構想」を語ってもらった。

産学連携、10数年を経た現状とは

もともと、産学連携とは大学が持つ特許や知的財産を積極的に世に出し、企業に活用を促すことで産業を活性化させようという趣旨で始まったものだ。しかし、大学や研究者はそもそも商品化や事業化を目的として日々研究に勤しんでいるワケではない。そのため、企業と連携を進めるにあたって、お互いの足並みを揃えるのが、「思いのほか難しい」という声が、多く漏れ聞こえる。「それぞれの思惑にズレがある」のだから、難しくて当たり前なのだが、実際に企業を取材する過程で、「多くの大学が、産学連携に関しても、良い研究をしたら、後のことは企業任せの姿勢が目立つ」(企業経営者)とはよく聞く話である。

この点を東京理科大学の科学技術交流センター長の藤本隆氏にぶつけたところ、「〝確かに〟特許や知的財産がすぐさま産業の活性化に結びつくという成果は、目覚ましいものとしてはあがっていない面がある」と答えてくれた。

 

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「予想していたことではありますが、本学でもまる10年以上経ち、難しいというのが結果として分かってきました。これは、本学に限ったことではありませんが、産学連携を国策として10年以上行ってきて、現在までの結果を総括し、では今後もこのままで良いのかと考える傾向が、近年見られます。これまでとは異なるアプローチや方法があるのではないかという議論がいま、国を挙げて行われるようになっています」(藤本氏)

 

 

「産」と「学」それぞれの立場、視点の違い

「産学連携が抱える問題点」にはこんな側面もある。氏が語ってくれたのは、産学連携について国から大学に求めるものと、大学自身の捉え方とのズレの問題だ。

 

「国としては、産業の活性化のために大学の知的財産をどんどん活用すべく、外部への発信を積極的に行って欲しいという考えがあります。一方で、大学という組織にとっては、国が期待するほどには、積極的になりにくいところがあります。知的財産や特許を抱えているからといって、すぐさま成果には繋がりません。そうしている間にも研究費や維持費などのコストは嵩むのです。そうなると、どうしても自分たちの教育研究を活性化させるための〝手段〟としての産学連携という捉え方になりがちです」

 

具体的には、企業と共同研究を行って研究費を外部から導入することや、学生が社会や企業の内部に入る形で研究に携わることなどが挙げられる。こうした側面に関しては、大学にとっても大きな魅力であり、自ずとウェイトが置かれていく。結果、組める相手はお金に余裕のある企業(パートナー)になる。

こうした構造が産学連携の捉え方の屋台骨を成していること自体に異を唱えはしない。大学とて、金策に走らなければならない、これは当たり前だ。ただ、こうした構造でコトが運ぶ限り、お金に余裕のない中小企業はいつまでたっても「蚊帳の外」に置かれてしまうのである。

 

 

地元の中小企業に仕事を。それこそが至上命題

これまではどうしても資本を持っている大手企業に目が行きがちだったが、「重視すべきは中小企業である」と氏は捉えている。大手企業は自らでも情報収集に余念がなく、有用な研究があれば、自ら連携や活用に向けてアクションを起こせる体力がある。

しかし、中小企業、特に零細企業は情報を集める余力を持たないところが多い。そういった中小企業に目を向け、彼らのニーズを吸い上げ、応えていくことこそ、〝地域に根ざした産学連携〟を成す上では重要であると氏は語る。

 

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「産学連携と言って、協議会や委員会を作って、研究会やセミナー、シンポジウムを開催して……。それも良いのですが、それだけで終わってしまうケースも多い。中小企業が求めているのは、言わば〝今日明日の仕事〟です。しかし、研究者は5年後10年後の自分の研究が重要。そこのギャップを埋めていかなくてはなりません。そのためには、大学側が考えを改める必要があります。

中小企業の場合、必ずしも大学の持つ最先端の技術や特許に関心があるワケではありません。むしろ、たとえば研究者が長年培ってきたノウハウなどに魅力を感じるというケースの方が多いのです。我々は、ともすれば最先端の研究や知的財産こそが何よりも大学の売り物だと考えがちです。

しかし、実際はそうでない場合もある。地域の小さな企業から丁寧に話を聞いて、こうしたことに気付いていく努力が、大学には必要なのです。そうして地域の課題を抽出して、産学連携のトリガーとなって旗を振れるのは誰かと考えると、それは中小企業の社長さんたち個々人ではなく、大学や行政の役目だろうと思っています」

 

 

城東地区の広域ネットワーク形成を目指して

さらに、産学連携を推し進めるには、もうひとつ重要なことがあるとのこと。「取り組みを局所的な地域に限定すべきではない」という点だ。他県では、ある程度大きな範囲で産学連携を行っているところはあるが、東京における産学連携は、東京という地域柄ゆえに、局所的な取り組みに終始している嫌いがあると言う。

 

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「葛飾区と本学や、また周りを見渡せば、たとえば足立区と東京電機大学、江東区と芝浦工業大学など、地域とそこにある大学という個々では繋がっています。しかし、産学連携をもう一段高いところに推し進めるには、区や大学という垣根を取り払わなければいけない。

具体的には、葛飾区という垣根を越えて〝城東地区〟という大きな括りで、連携に取り組んでいきたいと考えています。企業からすれば、活用できさえすれば大学名や区の線引きは関係ないことですから」

その区に住む住民の税金が使われているなど、現実的に困難の多い部分もあるとはいえ、自分たちの区にない大学は支援できないなど、大学にしても地域にしても、よそのことは関係ないという姿勢ではうまくいかないままだと氏は訴える。

 

「可能な限り垣根を取り払いたい。城東地区の広域ネットワークづくりにおける私の構想は、産学官に金融機関を加えた『産・学・官・金』の連携です」

産学官に「金」を加える真意はどこにあるのだろうか。

 

 

「これからは大学としても待っているだけではなく、積極的に営業活動をしていくことが必要ですが、我々専任スタッフ十数人の人員だけで、研究を活用できそうな地元企業すべてに足を運べるわけではない。ではどうするか。結局、地元の金融機関がいちばん、その地域の企業の情報を持っているんです。ですから、金融機関を介して連携していくのがいちばん効率的ではないかと考えているわけです」

 

同学が葛飾区に移転したのは昨年4月。同学と葛飾区との関係は、当然のことだが、積み重ねのないゼロからのスタートで構築されているだけに、いまだ手探りの難しさはある。

実際に地域の企業に話を聞くと、同学に寄せる期待値は異常に高い。中には、「大学が来てくれたからには、何かしらのおこぼれに与れるのでは」なんて期待が明瞭に覗ける経営者や、一年経って、それがヌカ喜びだったと声を落としている企業もいる始末。

せっかく大学側で胸襟を開いて、組もうとしているのだから、中小企業側も、良い意味で大学に積極的に働きかけるべき段階なのではないだろうか。口を開けた鯉さながらに、ただエサを待つなんて姿勢では、これから先も何も生まれないだろう。

そうした意味では、城東地区の広域ネットワーク、中小企業を重視する産学連携に成果が現れ始めたとき、初めて同学が地元に根を張ったと言えるのではないだろうか。同学の取り組みが地域に根を張り花を咲かせ、城東地区の活性化という実が成る日を楽しみに、本誌としても引き続き注目していきたい。

 

▼葛飾〜城東地区の活性化の記事▼

●映画『TOKYOてやんでぃ』 神田 裕司監督 「映画で葛飾の町興しを!みんなが夢をみられる社会へ、そのための下町エンタメインフラ構想 」

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東京理科大学 科学技術交流センター

東京都葛飾区新宿6-3-1

TEL 03-5876-1534

http://www.tus.ac.jp

◆2014年4月号の記事より◆

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